ある土曜日

最寄り駅まで片道15分の道程を、小脇に図書館の本を抱え、30分ほどかけてトボトボと歩く。返却ポストの前まで来て、名残惜しむかのように本を開く。強風でページがぱたぱたと勝手にめくれてしまうが、それくらいがちょうどいい。
やっぱりこの本は買った方がいいだろうか。買った方がいい気がするけれど、よくわからない。
ここへ来るまでも、ずっとよくわからないでいた。どこへ行けばいいのか。どこにも行かなくていいのか。どこへでも行けるように、クレジットカードと交通ICカードと現金千円は持ってきた。だけどどうやら、電車には乗りたくない。
意を決して本を返却ポストに入れた。改札の前を通り過ぎて、やっぱり電車には乗りたくないのだと確認する。再びトボトボ歩いた先で吸い込まれるように行きつけのスーパーに入って、スッと手に取れたものをかごに入れていった。餃子にもやしにとんかつソース、メンマ、ケチャップ、炭酸。今日の晩御飯は餃子とラーメン本当にこれで良いのかわからない、わからない、と頭によぎる、がレジを通る。もういいでしょう、これで。スーパーを一緒に出ていく人を眺めながら、この人たちはどういう心境で買い物をしたのだろうかと考える。毎日家族のための夕飯を作る人はどうだろう。毎日わからないなんて言ってられないから、わからないことについて考えたりしないんだろうか。こんなこと考えていられるのは暇にめぐまれているからだろうか。そのことに感謝すべきだろうか。帰宅後さっそく返却した本をオンラインショップのカートに入れてみたけれど、中古の本とはいえ送料がかかるからまだ迷ってる。

いいなと思ったら応援しよう!