見出し画像

【研究者といっしょにダイトウコノハズクをさがしにいこう!!】ビジターセンター社会実験vol.1

PUBLIC+チームが、沖縄県、南大東島で進めている「島まるごとミュージアムプロジェクト」。

公共施設の再生プロジェクトとして、20年前にオープンしたビジターセンター文化センターという南大東島の教育委員会が所管している施設をコンセプトから再設計して、リニューアルを2026年目標に進めています。

ビジターセンターは、2016年ごろから活用が進まず、コロナ以降休館状態になっていました。運営もままならない状況であったことから、20年前にコンセプトとして決めた「島」全体をミュージアムに見立て、子どもたちが島の宝を探す教育の視点を入れた施設として再度、復活させよう!ということで昨年12月からスタートしたプロジェクトです。
詳しい経緯はこちらから。

 この施設の再生のプロセスにおいて、新たな運営を担うコアチームが立ち上がってきました。それが、島まるごとミュージアムデザイン会議。施設の再生に向けて検討委員会(南大東島に関わりのある専門家の方々)との協議の中で、行政だけでなく「島の人たちが中心になり、使う施設にできないか?」「子供たちが身近に島のことを学べる要素を取り入れられないか?」といったハコモノだけでなく、ソフトの面からアプローチして、施設の再生を進めていこうという声を多くいただく中で、今年からこのデザイン会議が立ち上がりました。
 島の人たちや研究者や行政の方々などコアメンバーの方々と一緒に少しずつ島の人たちを巻き込みながら再生を進めていっています。



 検討委員会での議論を踏まえ、遂に始まった施設活用社会実験。「宝さがし教育」の第1弾は、長きにわたり島の固有種を調査研究されている「ダイトウコノハズク保全研究グループ」とのタイアップ企画「研究者といっしょにダイトウコノハズクをさがしにいこう!!」です!当日の様子をお届けします🫡

パンフレット

ダイトウコノハズクってどんないきもの?

 ダイトウコノハズクとは、リュウキュウコノハズクという動物の亜種(暮らす場所や気候により、元の個体と明確な区別が生まれた種)で、大東諸島に約500羽しかいない絶滅危惧種です。小柄で目がくりくりした、とても可愛らしい姿をしています。

ダイトウコノハズク保全研究グループより提供

 鳴き声は性別によって異なり、オスは「こっぽろ~」メスは「にゃっ・こっぽろ~」、そして子どもは「じぇっ」と鳴くとのこと。筆者も島を歩いていると、姿は見えなくても「オスのコノハズクの声だ!!」と聞き分けられるようになりました。笑

南大東島で活動する最前線の研究者チーム「ダイトウコノハズク保全研究グループ」!

 そんなかわいいコノハズクについて20年超、調査を続けられているのが、「ダイトウコノハズク保全研究グループ」の皆さんです。創設者で現在も代表を務める高木先生を中心に、2002年ごろから調査を始められたとのこと。現在も毎年、春先の3か月程度、島に滞在して繁殖の様子や定期的な調査を実施されています。

↑現在も毎年来島されている、澤田さんのWebページ。研究概要や島での滞在について、大変分かりやすくまとめられています。

↑2015年の記事。ダイトウコノハズクの暮らしの様子や研究概要をインタビュー形式で閲覧できます。

↑台風をコノハズクがどう乗り切るのか?の調査紹介です。研究がどういう観点で行われているかなど、分かりやすくまとめられています。
【リンク】https://www.bird-research.jp/1_event/aid/plan/BR-aid2020003.pdf

 コノハズク研究グループは「調査地の南大東島に還元する活動」を精力的にされています。毎年島の方々に向けた講演などを行っており、2023年度はコノハズク営巣用の巣箱に、島の小学生が絵をかき、それを設置してくれました。また生体を示したポスターの作製など、まさにプロボノ。大変尊敬できるポイントの一つです。

「プロボノ」とは、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉で、【社会的・公共的な目的のために、職業上の経験やスキルを活かして取り組む社会貢献活動】を意味します。

「プロボノとは?」/サービスグラント https://www.servicegrant.or.jp/probono/
https://www.servicegrant.or.jp/probono/助成金を活用し、作成くださったポスター

休館中のビジターセンターをこどもたちと学ぶワークショップ会場として使ってみる!

 忙しい調査・研究の傍らにも関わらず、ダイトウコノハズク保全研究グループの金杉さん・堀内さんに快くご協力をいただき、企画を練りこんでいきます。今回のターゲットは村営塾に通う子ども達。当日は何人が来てくれるのか、どんな期待値なのか、天気は大丈夫か、。気を揉みながら、運営スタッフで会場設営を進めていきます。

会場設営中・・・

コノハズクを探すナイトツアー開催

 そしてついに開始時刻の19:00を迎え、なんと想定を上回る20名弱の参加!!子ども達の間でのコノハズク人気がうかがえました。
 まずは今回のプロジェクト「島まるごとミュージアム」についてちょっとだけ説明。「いっしょにおもしろいことをしよう!!」というメッセージを伝えました。

 続いては堀内さんからコノハズクガイダンス。たくさんの写真や住み家、食べ物、鳴き声など、クイズ形式でたくさん教えてもらいました。「聞いたことある!」は多い一方、「それが何なのか?」についてはまだ知らない子が多く、たくさんの発見があったようです。

今の鳴き声はオス?メス?こども?

「ダイトウオオコウモリの森」を探検!!!

 島で観光ガイドを営む東さんから借りた赤いライトを手に、まずはビジターセンター周りにある「ダイトウオオコウモリの森」へ。この森は空港の滑走路跡地を活用して作った人工林で、コウモリやコノハズクの住み処となる木々がたくさん植えられています。
 木々をかき分けて進んでいく姿はまさに探検隊。列を作って、森へワクワクドキドキの突入。そこにはコノハズクがたくさん家族を作れるようにと願いを込め、今年の3月に設置したコノハズクの巣箱が。保全研究グループでも定期調査をすることが予定されており、今回の参加メンバーは最初の調査団として現場確認をしてきました!

満月とビジターセンターをバックに、装備を確認・・・
巣箱のあるエリアへ突入!!

一番の住み処、大東神社へ!

 そのあとはみんなでバスに乗って移動。夜の遠足みたいでソワソワ。鳥居を横目に神社を取り巻く森へ歩みを進めていきます。天気雨が直前にあったことから、コノハズク達も木陰で休んでいる可能性が高いとのこと。

闇夜に浮かぶ鳥居。雰囲気があります。

 捜索前に、改めて金杉さんと堀内さんから探すコツを聞いていた矢先、「こっぽろ~」と鳴き声が聞こえてきました!!みんなで耳を澄ませるもその姿を確認できず。ライトで森を照らしながら、慎重に進んでいきます。

コノハズクの負担にならないよう、刺激を抑えた赤いライトをもって探検

 声は聞こえるも、姿がなかなか見つかりません。捜索が難航していたその時、背後から「こっぽろ~」という声が!!振り返ると金杉さんの肩から下がったスピーカーが目に入りました。
 詳しく聞くと、別のコノハズクの鳴き声を流すことで、大東神社に縄張りを持つコノハズクが、家族を守るために声を上げるとのこと。そのやりとりを手がかりに進んでいきます。

 もうだめかと思った矢先。ライトが照らす先をよ~~く目を凝らしてみると、、。

どこにいるかわかるかな?
やっと会えた!!!コノハズク!!!

 遂にコノハズクに会うことができました!!どうやら家族で近くにいたようで、参加した子どもたちは、「いまのはこども!!これはお父さん!!」と、ガイダンスで学んだ成果を存分に発揮していました。
 その後も2~3羽ほど姿を確認でき、「研究者といっしょにコノハズクを探しに行こう!!」は無事に成功を収めました。

観察会を終えて

 興奮も冷めやらぬままビジターセンターに戻ると、嬉しい声がたくさん。
「初めて見たし、鳴き声がわかったし、楽しかった!!!」
「つぎはいつやるの??毎月やりたい!」
「コノハズクもっと見たい!!ほかの動物も見たい!」

 小さなきっかけさえあれば、子ども達は自ら新しい関心や興味を手繰り寄せる強い力があること。周りの大人も、子ども達を導きながら、一緒に学んでいく。このような活動がまさに「宝さがし教育」の基礎だと感じました。

 残る課題としては、やはり案内できる人が限られていること。保全研究グループの方々が常にいられるわけではなく、また東さんをはじめとした島の方々も幅広く活動されています。「宝さがし教育」を進めていくには、周りの大人がしっかり学び続け、伝えられる力を身に着ける事が不可欠であると改めて感じた一日でした。

むすびに

ガイダンスや現地での説明、案内をしてくれた、コノハズク保全研究グループの金杉さん、堀内さん。企画の周知や当日の引率もご協力いただいた、村営塾の仲田さん、村岡さん。バスでの送迎や企画全体の相談に乗っていただいた村役場の沖山さん。急な依頼にもかかわらず、ライトを貸与いただいた東さん。そして参加いただいた村営塾の生徒さん、送迎にご協力いただいた保護者の皆様。今回、企画にご協力いただいたみなさまに感謝申し上げます。


ライター:新垣(しんがき)


いいなと思ったら応援しよう!