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ふわりと置く。

なぜか印象に残る人がいる。

昨日行った、神楽坂にある喫茶店の店主がそうだった。

60代くらいだろうか、その方は眼鏡をかけていて、肩くらいまであるふわふわした髪の毛、柔らかそうなくたっとしたグレーのトレーナーを着ていた。トレーナーがよく体に馴染んでるなぁと思った。
言葉数は少なく、表情もあまり変わらない。
淡々とカウンターの中でコーヒーを淹れている。
と思えば、お客さんと笑いながら話していたりする。照れくさそうに笑う人だ。

カウンター内でにこにこしながらケーキや飲み物を用意している女性は、きっと奥さんなのだろう。

カップにしずかに注いだコーヒーとケーキをゆっくりふわりとトレーに置く。店主のその一連の所作に目が離せなかった。
生まれたての赤ちゃんの頭を撫でるときのようなやさしい扱いかただった。

目の前に置かれたチャイとチーズケーキが、気持ちよさそうにしていた。

 
 言うまでもなくおいしい。


旦那がトイレに行こうとしたときに、ふと顔を上げて「今、入ってるよ」と一言。

驚いた。周りを見渡している様子はないのに、よく見ているんだなぁ。

心がざわざわしたり、忙しさでついせかせかしてしまうときは、今日のことを思い出そう。

なぜか忘れならない人は、他にもいる。
たいていは、そのことに当人は全く気づかない。

もしかしたら、自分もどこかのだれかにとってなぜか忘れられない人なのかもしれない。

ネットでこのメニューを見て、その時点でもう惹かれていた。

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