変形性膝関節症【国試対策】
はじめに
変形性膝関節症は理学療法士としては避けられない疾患であり、国試においても必出となっています。年度によっては問1-20の間でケースの画像問題、治療などで出され、それだけで6点分となっています。疫学、病態ではリウマチと比較して出されることが多いので、よく理解しておきましょう。
疫学
変形性膝関節症の発生は年齢とともに増加します。日本では、60歳以上の人口の80%以上で、膝関節・肘関節・股関節・背骨に変形性関節症の所見が見られることが報告されています。
日本において、変形性膝関節症の患者数は65歳以上で55%に上り、国民病と言われています。
原因となる疾患のない一次性でることが多いです。
女性に多く、特に体重に対する筋出力が足りない肥満者に多いです
症状
初期には運動時痛が問題になりますが、進行すると安静時痛を訴えることもあります。
内反膝
関節水腫
筋力低下(特に内側広筋)
原因
変形性膝関節症の主な原因は関節軟骨の摩耗で、肥満や遺伝的素因も関与する多因子疾患です。また、骨折、靭帯損傷、半月板損傷などの外傷や感染の後遺症として発症することもあります。
検査と評価
診断には問診や診察、触診を行い、膝内側の圧痛、関節の動きの範囲、腫れや内反変形の有無を確認します。X線(レントゲン)検査や必要に応じてMRI検査が行われます。病期の分類にはkellgren-Lawrence分類(K-L分類)が用いられます。
歩行の特徴としては、床反力の前後成分は小さくなり、左右成分が大きくなります。股関節伸展角度や骨盤の回旋は減少し、上肢は股関節の運動に連動しているので、上肢の振りも小さくなります。toe-outし、歩幅の減少と歩行速度の低下が起こります。変形によって増加した外部膝関節内反モーメントを減少させようとして、体幹は立脚側へ傾斜します。
女性では下肢静脈瘤をしばしば認め、夜間痛の原因になると言われている
画像診断では、内側裂隙の狭小化、骨硬化像、象牙化、関節面の不整、Quad-angleの減少、下肢荷重軸(下肢機能戦、下肢荷重線、Mikulicz線)の内側偏位や、大腿脛骨角(FTA)増大を見ます。
股関節中心と足関節中心を結ぶミクリッツ線は通常、膝関節中心の近くを通ります。しかし変形が強くなると、関節中心から内側に偏位しモーメントアームが長くなることで、膝内反モーメント(KAM)が増大します。
変形が大きくなればなるほど、変形させる力が強くなってしまいます。
FTAの正常値は175°の生理的外反を示しますが、内反膝になるとこれが、180°以上になります。
エックス線写真での所見は常に臨床症状と一致するわけではなく、変形が大きくても痛みがない人も存在します。
膝蓋跳動(patella tap、ballottement of patella)が陽性になります。
関節液は混濁のない高粘稠(ねんちゅう)性で、リウマチの特徴である混濁した低粘稠性ではありません。
治療
軽い症状の場合は痛み止めの内服薬や外用薬、ステロイド注射、ヒアルロン酸の関節内注射、大腿四頭筋強化訓練、物理療法が行われます。足底板や膝装具の作成もあります。改善しない場合は関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などの手術治療が検討されます。
ステロイドの頻回の注射は骨壊死や関節破壊を起こす可能性があります
骨切り術、人工関節では、正常値のFTA175°を目指すのではなく、165°の外反位にし、ミクリッツ線を膝関節中央の外側にすることでKAMの減少をさせることが目的になります。
術後には深部静脈血栓症に注意し、Dダイマーや、ホーマンズ徴候、下腿把持テストなどを確認します。
理学療法
大腿四頭筋筋力トレーニング
内反OAには外側楔状足底版(外側ウェッジ)
体重コントロール
あくまで国家試験に出ているところだけです。
予後
手術療法以外で擦り減った関節軟骨や変形した骨が元に戻ることはありません。保存療法により、適切な姿勢・筋力をつけることで症状の進行を遅らせ、痛みを軽減することが大切です。
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