炎症の生理学的プロセス
炎症とは
炎症とは体が傷ついたり感染したりした際に発生する自然な防御反応であり、発赤、腫脹、発熱、疼痛、機能障害といった徴候を示します。これらの症状は、様々なケミカルメディエーターによって引き起こされる生体の応答で、血管の拡張や血管の透過性の増加によるものです。これにより、血漿タンパク質が漏出し、白血球が侵入した組織へと移動してきます。
急性炎症
急性炎症は数時間から数日の間に見られる現象で、その特徴は
①体液や血漿タンパク質の滲出、②白血球(主に好中球)の遊走と貪食作用、そして③膿(リゾチーム)の形成です。さらに、炎症部位の充血やフィブリンの析出も見られます。これらはすべて、炎症を起こした部位の修復と保護を目的としています。
ケミカルメディエーター
ケミカルメディエーターとは細胞間の情報伝達のための仲介役となる化学物質のこと
ケミカルメディエーターとしては、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ブラジキニン、セロトニンなどがあり、これらはそれぞれ血管拡張、血管透過性の増加、疼痛の誘発など特有の役割を持っています。例えば、ヒスタミンは血管を拡張させることで、感染部位への白血球の到達を容易にします。プロスタグランジンは疼痛の感覚を生じさせることで、体に損傷部位があることを警告します。
ケミカルメディエーターそれぞれの役割
ヒスタミンは肥満細胞から放出され、血管の拡張や透過性を高めることで炎症の発赤や腫れを引き起こします1。これにより、感染部位への白血球の移動が促され、防御メカニズムが働きやすくなります。
ロイコトリエンは、好中球の遊走を促進し、血管収縮や気管支の収縮(攣縮)を引き起こすことにより、血管透過性を増加させます2。これによって、炎症部位への白血球の集まりやすさが高まり、炎症反応が強化されます。
プロスタグランジンは、発熱や疼痛の誘発、血管の拡張や透過性を増加させることに関与しています3。これにより、炎症部位の感覚が敏感になり、身体が損傷を認識しやすくなります。
ブラジキニンは疼痛や血管の透過性を高め、血管を拡張する効果があります4。これによって炎症部位の不快感が増し、炎症反応が促進されることになります。
セロトニンは血小板から放出され、血管の収縮や透過性の増加、疼痛の誘発に関与します。これによって炎症反応が強化され、損傷部位の保護が図られます。
インターロイキンとインターフェロンは、T細胞から放出されるサイトカインの一種で、マクロファージの活性化や発熱などの全身性急性期反応を促す役割を担います。これらのサイトカインは、炎症の局所的な反応だけでなく、全身に影響を及ぼすこともあります。
腫瘍壊死因子(TNFα)はマクロファージから産生され、白血球の遊走促進に寄与します。これにより、損傷部位への免疫細胞の移動が促され、炎症反応が活性化されます。
これらのメディエーターは、炎症反応において重要な役割を果たし、それぞれが特有の方法で体の防御システムを活性化させます。炎症治療においては、これらの化学物質の作用を抑えることで、症状の軽減や治癒過程の支援を目指します。
慢性炎症は、急性炎症が解消されない場合に進行する状態であり、マクロファージやリンパ球、形質細胞などの単核球による浸潤、組織破壊と再構築の変化、新生血管の増生、線維芽細胞の増殖による線維化が特徴です。これは、炎症が長期間にわたり持続することで生じる組織の慢性的な変化を表しています。
炎症反応においては、**C反応性タンパク質(CRP)**も重要なマーカーです。CRPは肝臓で生成され、体内の炎症を示す指標として用いられます。
炎症の転帰は多岐にわたり、治癒に至ることもあれば、膿瘍化、潰瘍化、瘢痕化を引き起こすこともあります。これらはすべて、炎症が持続する期間、強度、体の反応によって異なります。
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