【PTOT国試対策】遺伝性疾患・染色体異常

遺伝性疾患

遺伝性疾患とは

遺伝性疾患とは、個人の遺伝子に存在する変異(DNAの構造上の異常)によって引き起こされる疾患です。人間の特性(形質)は遺伝子によって決定されますが、これらの遺伝子に生じる変異が病気を引き起こすことがあります。このような疾患は、一般に以下のように分類されます:

  1. 単一遺伝子疾患:一つの遺伝子の変異によって引き起こされます。例えば、シクル細胞性貧血やハンチントン病などがこれに該当します。これらは通常、親から子へと直接遺伝する特徴があります。

  2. 多因子遺伝疾患:複数の遺伝子と環境要因の相互作用によって引き起こされる疾患です。例えば、心臓病、高血圧、多くのがんの種類などがこれに当たります。

  3. 染色体異常:染色体の構造または数の異常によって引き起こされる疾患です。例としては、ダウン症候群(21番染色体の余分なコピーによる)やターナー症候群(X染色体の欠損による)などがあります。

遺伝子とは

遺伝子は、生物の特性や機能を決定する基本的な遺伝情報の単位です。この情報は、DNA(デオキシリボ核酸)という分子の中にコードされています。DNAは、細胞の核に存在する染色体の形で配置されており、生物の成長、発達、機能、そして遺伝的特性を決定する役割を果たします。

遺伝子の構造と機能について簡単に説明すると:

  1. DNAの構造:DNAは二重らせん構造を持ち、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類の核酸塩基から成ります。これらの塩基は特定のパターンで配列しており、この配列が遺伝情報をコードします。

  2. 遺伝子の役割:遺伝子はタンパク質の合成を指示します。タンパク質は細胞の構造や機能を決定し、生体のさまざまな化学反応を制御します。遺伝子がコードする情報によって、どのタンパク質がいつ、どの細胞で作られるかが決定されます。

  3. 遺伝子発現:遺伝子がタンパク質を作る過程は「遺伝子発現」と呼ばれます。この過程は、トランスクリプション(遺伝子のDNA配列がRNAに転写される過程)と、トランスレーション(RNAがタンパク質に翻訳される過程)の二段階から成ります。

優性(顕性)遺伝と劣性(潜性

劣性遺伝と優性遺伝は、遺伝のパターンを説明するために使用される用語です。これらは、特定の遺伝的特徴がどのように親から子へと伝わるかを説明する際に重要です。

  1. 優性遺伝(Dominant Inheritance)

    • 概念:優性遺伝では、ある特定の特徴を示す遺伝子の一方のコピー(アレル)が、その特徴を支配します。つまり、たとえもう一方のアレルが異なる特徴を持っていても、優性の特徴が現れます。

    • :茶色の目が優性で、青い目が劣性だとすると、一方の親から茶色の目を示すアレルを、もう一方の親から青い目を示すアレルを受け継いだ場合、子どもの目は茶色になります。

  2. 劣性遺伝(Recessive Inheritance)

    • 概念:劣性遺伝では、特定の特徴が現れるためには、両親から受け継いだ遺伝子の両方のアレルがその特徴を示している必要があります。劣性の特徴は、対応する優性の特徴が存在しない場合にのみ現れます。

    • :再び目の色を例に取ると、もし青い目が劣性であれば、子どもが青い目を持つためには、両親の両方から青い目のアレルを受け継ぐ必要があります。

  3. 顕性(dominance)と潜性(recessiveness)

「優性」が「顕性」に、「劣性」が「潜性」という言葉に変わった経緯は一方が他方よりも優れている、劣っているという誤解を生むためです。あくまでも、形質(特徴)として表現されやすいものを優性といい、表現されにくいものを劣性と言っていたにすぎません。いい方が変わってから数年たっているので、国試においても、こちらの方で出題される可能性があります。

常染色体優性(顕性)遺伝の特徴

  1. 一方の親からの遺伝:親のどちらか一方が優性のアレルを持っている場合、子どもにその特徴が現れる確率が高くなります。

  2. 世代を超えた伝達:優性遺伝疾患は、患者が子供を持つ場合、その子供にも疾患が現れる可能性が50%あります。

  3. 男女の区別なし:常染色体優性遺伝は性別に依存しないため、男女のどちらにも等しく影響を及ぼす可能性があります。

常染色体優性(顕性)遺伝疾患の例

  • ハンチントン病:神経系の機能障害を引き起こす疾患で、運動制御の喪失、認知障害、精神症状などを引き起こします。

  • マルファン症候群:結合組織の異常によって引き起こされる疾患で、心臓、目、骨格などに影響を及ぼします。

  • 結節性硬化症

  • 神経性線維症

  • 筋強直性ジストロフィー

  • 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

常染色体劣性(潜性)遺伝の特徴

  1. 両親からの遺伝:両親の両方から劣性のアレルを受け継ぐことによって、劣性遺伝的特徴が現れます。

  2. キャリアの存在:劣性のアレルを一つ持つ個体(キャリア)は、通常、疾患の症状を示しませんが、このアレルを自分の子供に伝える可能性があります。

  3. 男女の区別なし:常染色体劣性遺伝は性別に依存しないため、男女どちらにも影響します。

常染色体劣性(潜性)遺伝疾患の例

  • シスト線維症:肺や消化器系の機能障害を引き起こす遺伝病で、粘液の過剰分泌が特徴です。

  • 鎌状赤血球病:赤血球が正常な円盤形ではなく、鎌の形をしていることによる血液の障害です。

  • フリードライヒ失調症

  • フェニルケトン尿症

  • 脊髄進行性筋萎縮症

  • 肢体型筋ジストロフィー

  • 福山型筋ジストロフィー

伴性(性染色体)劣性(潜性)遺伝の特徴

  1. 男性における高い発症率:男性はX染色体を一つしか持たないため、劣性アレルがあれば疾患が現れます。女性の場合、X染色体をもう一つもつため代償されます。

  2. 女性のキャリア状態:女性は通常、伴性劣性疾患のキャリアとなりますが、症状を示さないことが多いです。キャリアの女性は、そのアレルを子どもに伝える可能性があります。

  3. 世代を超えた伝達:女性がキャリアである場合、彼女の息子に疾患が現れる確率は50%です。

伴性劣性遺伝疾患の例

  • 血友病:血液が正常に凝固しない状態を引き起こす疾患です。主に男性に発症します。

  • デュシェンヌ型筋ジストロフィー:進行性の筋肉の弱化と喪失を引き起こす疾患です。これも主に男性に影響します。

  • ベッカー型筋ジストロフィー

染色体異常の概念

  1. 数的異常:通常、人間は23対の染色体を持ちますが、数的異常では染色体の数が増加するか減少するかします。例えば、余分な染色体が存在するか、染色体が不足している場合です。

  2. 構造的異常:染色体の形や構造が変化している状態。これには、染色体の断片が失われる欠失、位置が変わる転座、逆転する反転などがあります。

染色体異常疾患の例

  • ダウン症候群:最も一般的な染色体異常疾患で、21番染色体のトリソミー(余分な染色体)が原因です。知的障害や特有の身体的特徴を伴います。

  • ターナー症候群:女性において、X染色体が一つしか存在しない、または不完全な場合に生じます。成長の遅れ、生殖器の未発達などが特徴です。

  • クラインフェルター症候群:男性において、余分なX染色体(XXY,XXXY)を持つ状態。生殖器の発達障害や低いテストステロンレベルが特徴です。

  • ウィリアムズ症候群:7番異常

  • ネコ鳴き症候群:5番モノソミー

ダウン症候群

  • 特異顔貌(つりあがった眼瞼裂・内眼角贅皮ないがんかくぜいひ・鼻根部扁平・巨舌)

  • 低身長

  • 筋緊張低下

  • 精神発達遅滞

  • 消化管疾患

  • 先天性心疾患(心室中隔欠損症など)

  • 白血病

クラインフェルター症候群

  • 高身長

  • 四肢細長

  • 軽度発達遅滞

  • 女性化乳房

  • 精巣萎縮、無精子症

ターナー症候群

  • 低身長

  • 先天性心疾患

  • 性腺機能低下症

  • 翼状頸

  • 外反肘

遺伝が因子の一つとなる疾患

  • 骨形成不全症

  • 双極性障害

  • 統合失調症

  • てんかん

  • 変形性関節症

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