大きな変化がそこまできている 神経理学療法学会学術大会2020
先日オンラインで日本神経理学療法学会学術大会2020が開催されました。
毎年参加している学会ですが、今回は私が一方的にファンである京都大学の大畑光司先生が学会長という事もあり、何があっても参加しようと意気込んでおりました。
この先生はホントにかっこいいんです。言葉に知性と力が溢れていて、先生の話を聞くといつも勇気が出てきます。
話がそれましたが、
いちおう脳卒中認定理学療法士のはしくれである私が、気になったポイントをご紹介したいと思います。
アンチテーゼ
アンチテーゼとは「ある理論・主張を否定するための反対の理論・主張」という意味です。
今学会では、従来の中枢神経系の理学療法における理論を見直すという意味で、その治療法を疑問視するような刺激的なシンポジウムがありました。
本邦で2000年ぐらいまで中枢神経系理学療法の主流であった神経生理学的アプローチの「ボバース法」は、セラピストの技量によって治療効果の差が大きく、客観的なデータに基づくエビデンスが弱いとされ、治療法として確立しているかどうか疑問視されているのが現状です。
これについては脳卒中理学療法ガイドラインでは指摘されていますが、学会のシンポジウムで討議しているのは初めて見ました。
個人的な見解ですが、もちろんボバース法にエビデンスの弱さがあるのは明らかですが、その全てを否定するまでのエビデンスがないのも確かです。
その人の感性に頼る部分もある治療法なので馴染めない人もいますが、業界全体を考えると、患者さんを理解する1つの方法として必要だと思っています。
また、こうした特定の治療法を排斥するような風潮は分断を生み、学会のアカデミックな力を弱めるのにつながらないか危惧しています。
ちょっと批判の仕方が気になるんですよね、アサーティブでないというか…
学会法人化も進めるところなのに大丈夫かなと心配しています。
教育講演の質の高さ
いきなりネガティブな内容を書きましたが、今学会にはすばらしい面も多くありました。
特に教育講演は、質が高く、下手に他のものに手をだすよりこの教育講演を理解するだけで必要最低限の知識を得られるぐらいの情報量でした。
毎年やってもらいたいですね。
しかし自分が新人だった時の環境と比べ、スゴイ情報量だなと思いました。
羨ましいですが、今の新人はある意味大変だな…
ロボットリハ × AI
ロボットを使ったリハビリの報告はここ数年よく目にするようになりましたが、そこにAIを利用してデータ分析をしている研究がちらほら出てきました。
例えば、裸足歩行と装具歩行を比較した膨大なデータの中から、装具を選ぶ時に着目するべき視点をAI技術を使って抽出する研究などが紹介されていました。
「ここまできたか」と驚きをもって見ていました。
数年後には、AIの使い方も統計手法と同じように必須になってくるかもしれないですね。
逆にデータだけ取って、AIにリサーチ・クエスチョンだけ入力すれば、あとは勝手にやってくれるようにならないかな~
記事としてはネガティブな内容が多くなってしまいましたが、全体的には良い刺激を受けて「またがんばろう」と思えるすばらしい学会でした。