便秘予防だけじゃない!食物繊維の重要性について
どうも、予防栄養学アドバイザーの中村直樹です。
食物繊維と言えば便秘を予防したり解消したりするのに重要な栄養素と考えられていましたが、実はもっとすごい機能があったことをご存知でしょうか?
今回はそんな食物繊維の知られざる潜在能力について解説いたします。
食物繊維のタイプ
まず、食物繊維には不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維があります。
不溶性食物繊維は主にセルロース、水溶性の食物繊維はイヌリンやペクチンなどがあります。
不溶性の食物繊維は便の嵩を増すのに、水溶性の食物繊維は便の通りを良くするのに有効だとされてきました。
しかし、それだけでは食物繊維を本当に理解したことにはなりません。
そもそも、便秘に苦しむ方が食物繊維を大量に摂取すると交通渋滞が起こり便秘が悪化する可能性もあります。
むしろ水分を摂って、腸管の運動を促してあげた方が排泄がスムーズになる可能性が高いのです。
では、なぜ食物繊維がこれほど重要だと声高に叫ばれるのでしょうか?
それには次のような非常に素晴らしい役割があるからです。
食物繊維はプレバイオティクスとして重要
何度も言いますが、食物繊維の最も重要な役割は排泄の改善ではありません。
もちろんそれも大事なのですが、おそらく『プレバイオティクス』の働きの方がより重要です。
プレバイオティクスとは腸内フローラ(腸内細菌叢)にエサを与えることです。
一方、似た言葉に『プロバイオティクス』というのがあります。
こちらは直接細菌を摂取することを言います。
プロバイオティクスは胃酸によって腸まで届かない可能性があるため、確実に腸内細菌叢を育てるためにはプレバイオティクスの方が重要と言えます。
(プロバイオティクスの研究でもちゃんと効果は証明されています。)
ヒトは食物繊維の消化酵素を持っておらず、消化吸収することができません。
そのため、食物繊維は胃や小腸を過ぎて未消化のまま大腸まで届きます。
すると、そこには腸内細菌が100兆個以上存在しているのです。
食物繊維はそんな大量の腸内細菌のエサとして重要です。
食物繊維を食べなければ、100兆個以上もの腸内細菌叢が飢饉により暴動を起こすに違いありません。
食物繊維は短鎖脂肪酸に変わる
腸内細菌叢が食物繊維を消化すると酪酸や酢酸といった短鎖脂肪酸に変わります。
ヒトは食物繊維を吸収することはできませんが、短鎖脂肪酸は吸収できるのです。
短鎖脂肪酸には炎症を抑えるという働きがあります。
生活習慣病の多くは慢性化した微小な炎症が原因となっています。
そのため、抗炎症作用のある短鎖脂肪酸はまさに救世主なのです。
特に脳の慢性炎症はアルツハイマー病の原因となっています。
短鎖脂肪酸は脳の炎症を抑えアルツハイマー病や自閉症、うつ病を予防してくれる可能性があります。
最近は『腸脳相関』という言葉も定着してきました。
腸の健康がまさに脳の健康につながっているのです。
腸が乱れると気分が悪くなり、一方でストレスを溜め込むと腸に炎症が生じます。
これには脳の伝達物質の多くが腸で作られていることなども関係していますが、短鎖脂肪酸の働きも見逃せません。
食物繊維を摂ってプレバイオティクスにより腸内細菌叢を育てると、短鎖脂肪酸にして恩返ししてもらうことができるというわけです。
まさにwin-winの関係です。
この関係を築くことができれば、いつまでも健康を保つことができるでしょう。