見出し画像

うつ病やアレルギーにも関連するリーキーガット症候群をご存知ですか?

どうも、予防栄養学アドバイザーの中村です。
食生活が乱れていると腸の健康が損なわれ、脳をはじめ全身に様々な症状が出ることが分かってきました。
『腸脳相関』とか『腸脳軸』などという言葉もよく聞くようになりましたね。
腸が脳に及ぼす影響、それから全身の至る所に生じる症状に関するメカニズムにはリーキーガット症候群が有名です。

リーキーガット症候群とは

リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)とはその名の通り、腸から便の分子が漏れることを言います。
leak(漏れる)gut(腸)です。
大きな穴が開くというわけではなく、腸の隣り合う上皮細胞の間にある『タイトジャンクション』という部分が破壊されてしまいます。
この隙間から未消化の食べ物や毒素が体の内側に侵入します。
(腸の中はまだ体の外側になります。)
そうすると身体の免疫系は敵が侵入してきたわけなので、一斉に攻撃を始めるわけです。
こうして、免疫反応により事なきを得るのですが、免疫系は侵入してきた異物を敵だと学習します。
その異物に対して過敏になって、アレルギー反応を起こすというメカニズムです。

リーキーガット症候群はメタボリックドミノの原因

免疫系が過剰に働くために、リーキーガットになるとエネルギーが必要になり、脂肪がそこに集まります。
また、脂肪細胞はエネルギー源というだけでなく、炎症反応を助けるサイトカインという物質を分泌する役割もあります。
こうしてお腹に内臓脂肪が溜り、ぽっこりお腹(メタボ)になるというわけです。
先程、事なきを得るとは言いましたが、免疫系に負担がかかっていることは、全身の慢性炎症に関与しており、特に脳での炎症は認知症やうつ、自閉症などの危険因子になっています。
慢性炎症についてはこちらの記事をご参照ください。

リーキーガット症候群の原因

リーキーガット症候群の原因の最たるものが『グルテン』と言われています。
グルテンは小麦粉に含まれるタンパク質で、糊のような働きがあり、パンがふわふわになるのはこのグルテンのおかげです。
ふわふわのパンは美味しくて人気があるようですが、実はグルテンには依存性や中毒性があり、人気の理由はこうした中枢神経の働きによるものかもしれません。

グルテンアレルギーであるセリアック病やリーキーガット症候群が有名になったのはテニスのNo.1プレーヤーであるノバク・ジョコビッチ選手が書いた本『ジョコビッチの生まれ変わる食事』がきっかけかと思います。

ジョコビッチ選手もグルテンに苦しめられた人間の一人です。
実はアメリカ人の100人に一人がセリアック病を患っています。
(ジョコビッチ選手はセルビア人) 現代の日本の食事も小麦がたくさん含まれているので、同様にたくさんセリアック病の方がいる可能性があります。

グルテンには『エクソルフィン』という成分が含まれており、これが脳のオピオイド受容体に結合することで認知機能が低下することが分かっています。
頭にもやがかかったような状態を『ブレインフォグ』と言いますが、これもグルテンによるリーキーガット症候群が原因かもしれません。

リーキーガット症候群の原因はグルテンだけじゃない

リーキーガット症候群の原因因子はグルテンだけではありません。
最近では果糖(フルクトース)もリーキーガット症候群の原因なのではと注目されています。
特に清涼飲料水などに含まれている『ぶどう糖果糖液糖』が危険とされています。
ぶどう糖果糖液糖は異性化糖というものでコーンシロップを調整して作られています。
過剰摂取することにより腸の上皮細胞のバリアー機能に異常が生じることが報告されています。
そして内毒素が肝臓の炎症細胞を活性化させ、中性脂肪が合成されて脂肪肝炎(NASH)になるようです。
炎症が続くと肝硬変となり、いずれは肝がんに発展します。

とは言うものの、全く摂取してはいけないということではありません。
ごくたまに摂取するぐらいなら全く問題なく、特に夏場はスポーツドリンクを摂取したほうが熱中症予防になります。
パンも同様にたまに摂取する程度では全く問題ないかと思います。
パンが好きな方がパンをやめるには相当なストレスを生じますから、常習的に摂取しなければ全く問題ないかと思います。
ただし依存性があることをくれぐれもご承知おきください。

リーキーガットから守ってくれる腸内フローラ

腸内細菌叢(腸内フローラ)が健康に重要であることが近年たくさん報告されています。
『マイクロバイオーム』とも呼ばれます。
我々の腸のなかには100兆を超える細菌が暮らしています。
人間の細胞は37兆個と言われていますので、それよりももっと多いわけです。

腸は『第二の脳』とも言われていますが、実際に脳の伝達物質が腸で作られていて、腸が不調を来すと脳に悪影響があることが分かっています。
この腸の健康を担っているのが腸内フローラですので、腸内細菌を正しく育てることが、腸と脳の両方に健康的な効果があるというわけです。
腸内フローラはリーキーガットを予防するために欠かせない存在です。

腸内フローラは多様性が重要

これまで善玉菌2、悪玉菌1、日和見菌7の割合が健康に良いということが言われてきました。
善玉菌が優勢の時は日和見菌が善玉菌をサポートし健康に良い効果を、悪玉菌が優勢の時は日和見菌が悪玉菌をサポートし健康に悪影響を及ぼすという具合です。

しかし、最近の研究ではこの割合よりも腸内フローラの多様性がより重要ということが分かってきました。
アレルギーなどの自己免疫疾患がないタンザニアのハッザ族やパプアニューギニア人は、現代食を食べている我々よりも腸内フローラの多様性が優れているとのことでした。
そこには食生活やライフスタイルの違いがあるようです。
例えば汚染も消毒もされていない飲料水や土壌、母乳による育児などがそうです。
現代人は汚染された水を消毒して飲んでおり、育児には粉ミルクを使うことが多いです。

腸内フローラの多様性が失われると腸壁を守る機能が落ちるため、リーキーガットがより進行することが考えられます。

健康長寿のカギは短鎖脂肪酸

もう少し別の見方をしてみましょう。
高齢になると『フレイル』という状態に陥ることがあります。
体重が落ち、筋力が落ち、疲れやすく、活動量が低下します。
次第に転倒して骨折し、認知機能が低下したり、寝たきりになったりします。
こうしたフレイルの方に地中海式ダイエット(食事法)をしてもらうと、認知機能や筋力が維持されるという報告があります。
腸内フローラが増え、短鎖脂肪酸がたくさん作られることによって、全身の炎症が改善すると考察されています。
地中海式ダイエットと日本古来の和食は似ており、私は和食でも同様の効果があるのではないかと考えています。

腸内フローラに悪い化学物質

腸内フローラに悪影響のあるものとして代表的なものが『抗生物質』です。
細菌を殺すための薬ですので当然です。
それ以外にも、プロトンポンプインヒビター(PPI)が腸内フローラの多様性に悪影響を及ぼし、認知症発症リスクが増大するということが報告されています。
なんとPPIの長期服用は、糖尿病やうつ病、脳卒中よりも認知症になるリスクが高いのだそうです。
ちなみに糖尿病は健常者の2倍も認知症になりやすいとされていますので、いかにPPIが高リスクなのかが分かりますね。

PPIは胃酸の分泌を抑える薬です。
胸やけ、胃痛、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などに処方されます。
症状がある時はドクターの指示に従って処方された分を飲み切ることが重要かと思います。
しかし、自分は胃酸過多だから、という理由で予防的にPPIを飲み続けるのは間違っています。
もし繰り返し胸やけを起こしたり、胃痛を生じたりする場合は食事内容が間違っている可能性があります。

腸内フローラを改善するためにはやっぱり野菜が大事

腸内フローラを最適化して、リーキーガット症候群を防ぐためにはやはり野菜や果物を摂取することが重要です。
特にケールやブロッコリーなどのアブラナ科野菜にに含まれるインドールには腸内フローラに好影響を及ぼす効果があることが報告されています。
インドールはがんを予防したり、炎症を抑えたりする効果もあります。
若々しさを保ち、健康寿命を延ばす食材として、注目されています。
是非積極的に摂取するようにお願いいたします。

この記事が参考になったという方は『スキ』や『フォロー』をして頂けましたら幸いです。
今後とも宜しくお願いいたします。


いいなと思ったら応援しよう!