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ACL再建術におけるBTB法とSTG法の比較と臨床応用


  1. BTB法とSTG法の基本的な違い

BTB法(骨-腱-骨法)は膝蓋腱を、STG法(半腱様筋腱・薄筋腱法)は主にハムストリングスの腱を使用します。BTB法は骨組織を含むため初期固定力が高く、早期のスポーツ復帰に適していますが、採取部位の痛みが課題です。一方、STG法は腱のみを使用するため採取部位の痛みは少ないですが、固定力がやや劣ります。治療では、患者の活動レベルや職業、年齢などを考慮して適切な方法を選択します。

手術手技や術後のリハビリテーションプログラムは両者で異なるため、理学療法士はそれぞれの特徴を理解し、適切なアプローチを行う必要があります。

(出典: 理学療法ジャーナル Vol.54 No.4, 2020)

  1. 術後早期の関節可動域訓練

BTB法、STG法ともに術後早期からの関節可動域訓練が重要です。しかし、BTB法では膝蓋腱採取部の痛みや伸展制限に注意が必要です。STG法では過度の屈曲による移植腱への負荷を避けるため、段階的な可動域拡大が求められます。

具体的な方法として、CPM(持続的他動運動)を用いた可動域訓練や、徒手による愛護的な関節モビライゼーションが有効です。BTB法では伸展0°までの獲得を目指し、STG法では屈曲120°程度を目標とします。代償動作として骨盤の後傾や体幹の前傾に注意し、純粋な膝関節の動きを促通します。

(出典: 理学療法学 Vol.47 No.6, 2020)

  1. 筋力トレーニングの進め方

BTB法では大腿四頭筋、特に内側広筋の筋力低下が顕著になりやすく、STG法ではハムストリングスの筋力低下に注意が必要です。両方法とも、術後早期は等尺性収縮から開始し、徐々に等張性収縮へと移行します。

BTB法では、膝蓋大腿関節への負荷を考慮し、closed kinetic chain exerciseから開始することが多いです。STG法では、ハムストリングスの再強化に重点を置き、prone位での膝屈曲運動などから開始します。代償動作として、大腿四頭筋の収縮時に股関節の外旋が生じやすいため、適切なアライメントを維持しながら行うことが重要です。

(出典: PTOnline, 日本理学療法士協会, 2023)


  1. 固有受容感覚トレーニング

ACL再建術後は、固有受容感覚の低下が見られるため、両方法とも早期からのトレーニングが重要です。バランスボードやフォームパッドを使用したバランス訓練、片脚立位練習、ミニスクワットなどを段階的に導入します。

BTB法では膝蓋腱採取部の痛みに配慮しつつ、STG法ではハムストリングスの収縮を意識した練習を行います。代償動作として、足部の過度な回内や膝の内反が生じやすいため、鏡を使用して視覚的フィードバックを与えながら行うことが効果的です。

(出典: 理学療法Update 2022年版)


  1. 歩行トレーニングと荷重指導

BTB法、STG法ともに術後早期からの部分荷重歩行が可能ですが、全荷重までの期間は術式や術者の方針により異なります。一般的に、BTB法ではSTG法よりも早期の全荷重が許可されることが多いです。

歩行トレーニングでは、まず松葉杖を使用した3動作歩行から開始し、徐々に2動作歩行へ移行します。荷重量の増加に伴い、proper heel-toe patternの獲得を目指します。代償動作として、膝関節の屈曲不足(stiff-knee gait)や過度の外側重心に注意し、適切な荷重応答期の膝屈曲を促通します。

(出典: 理学療法ガイド ACL再建術後リハビリテーション, 2021)


  1. ジャンプトレーニングとアジリティトレーニング

スポーツ復帰を目指す場合、両方法ともジャンプトレーニングとアジリティトレーニングが重要です。一般的に術後4-6ヶ月頃から開始しますが、BTB法ではSTG法よりも早期に開始できることが多いです。

垂直ジャンプ、前後左右のジャンプ、片脚ジャンプなどを段階的に導入し、着地時の膝関節コントロールを重視します。アジリティトレーニングでは、サイドステップ、クロスオーバーステップ、シャトルランなどを行います。代償動作として、着地時の膝の動的アライメント不良(特に内反・内旋)に注意し、適切な下肢アライメントを維持しながら行うことが重要です。

(出典: The Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, Vol.50 No.9, 2020)


  1. 神経筋電気刺激療法(NMES)の活用

BTB法、STG法ともに術後早期からの大腿四頭筋の筋萎縮予防と筋力回復を目的としたNMESが有効です。特にBTB法では、膝蓋腱採取による大腿四頭筋の筋力低下が顕著なため、NMESの重要性が高いとされています。

具体的な方法として、電極を大腿四頭筋の運動点に貼付し、等尺性収縮を伴う電気刺激を1日20-30分、週5回程度実施します。刺激強度は患者の耐性に応じて調整し、可能な限り強い収縮を引き出すことが重要です。代償動作として、電気刺激中に膝関節の伸展以外の動きが生じないよう注意深く観察します。

(出典: Physical Therapy Journal, Vol.101 Issue 6, 2021)


  1. 関節内出血や関節水腫への対応

両方法とも術後早期の関節内出血や関節水腫が問題となることがあります。これらは関節可動域制限や筋力低下の原因となるため、適切な管理が重要です。

具体的な方法として、アイシング、弾性包帯による圧迫、下肢挙上などの RICE 療法を行います。また、等尺性収縮を中心とした筋ポンプ作用を利用した運動療法も効果的です。関節水腫の評価には、周径測定やバレー・サイン・テストを用います。代償動作として、水腫による疼痛を回避するための異常歩行パターンに注意し、適切な歩行指導を行います。

(出典: メディカルオンライン, リハビリテーション医学 最新の治療, 2022)


  1. 術後の膝蓋大腿関節障害への対応

特にBTB法では、膝蓋腱採取による膝蓋大腿関節への影響が懸念されます。STG法でも、大腿四頭筋の筋力低下に伴う膝蓋大腿関節への負荷増大が問題となることがあります。

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