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THA再脱臼後再手術の理学療法ケーススタディ

1.患者情報

  • 年齢:68歳

  • 性別:女性

  • 診断名:右人工股関節全置換術(THA)後脱臼、再手術

  • 手術:

    1. 初回手術:右THA(後側方侵入)

    2. 再手術:脱臼整復術、ライナー交換

2. 現病歴

患者は2ヶ月前に右変形性股関節症に対してTHA(後側方侵入)を受けた。術後3週間で自宅にて転倒し、人工関節が脱臼。整復術を行ったが、その2週間後に再度脱臼。再手術(脱臼整復術、ライナー交換)を実施し、現在術後7日目。

3. 既往歴

  • 高血圧(内服加療中)

  • 骨粗鬆症

4. 社会背景

  • 職業:専業主婦(夫と二人暮らし)

  • 趣味:ガーデニング、週1回の社交ダンス

  • 自宅:2階建て一戸建て(寝室は2階)

5. 理学療法評価(術後7日目)

疼痛評価

  • 安静時:NRS 1/10

  • 動作時:NRS 4/10(特に股関節外転時)

関節可動域検査(右/左)

  • 股関節屈曲:70°/120°

  • 股関節伸展:0°/10°

  • 股関節外転:15°/30°

  • 股関節内転:制限あり/20°

  • 股関節外旋:15°/35°

  • 股関節内旋:制限あり/30°

徒手筋力検査(右/左)

  • 股関節屈曲:3/5

  • 股関節伸展:2+/4

  • 股関節外転:2/4

  • 股関節内転:2/4

  • 股関節外旋:2+/4

  • 股関節内旋:2/4

その他の関連する評価

  • 浮腫:右大腿周径(膝蓋骨上縁10cm)左右差 +3cm

  • 歩行能力:歩行器使用にて10m可能

  • バランス:Berg Balance Scale 28/56点

日常生活動作(FIM)

  • 運動項目:50/91点

  • 認知項目:35/35点

  • 総合計:85/126点

詳細な動作分析

歩行分析(歩行器使用):

  • 立脚期:右立脚期の短縮、骨盤の右側方への傾斜

  • 遊脚期:右股関節の屈曲不足、代償的な骨盤の挙上

6. 問題点

インペアメントレベル

  1. 右股関節周囲筋の筋力低下

  2. 右股関節可動域制限

  3. 右下肢の浮腫

  4. 疼痛(動作時)

ディスアビリティレベル

  1. 歩行能力の低下

  2. バランス能力の低下

  3. 基本動作(立ち上がり、移乗)の困難

ハンディキャップレベル

  1. 屋外活動の制限

  2. 趣味活動(ガーデニング、社交ダンス)の中断

7. 目標設定

長期目標(8週後)

  1. T字杖歩行で屋外30分以上の連続歩行が可能となる

  2. 階段の昇降が手すり使用で自立する

  3. ADLが自立し、FIM運動項目が85点以上となる

短期目標(4週後)

  1. 右股関節周囲筋のMMTが4レベルに向上する

  2. T字杖歩行で屋内移動が自立する

  3. 立位バランスが向上し、Berg Balance Scaleが40点以上となる

8. 理学療法プログラム

  1. 関節可動域練習:

    • 股関節の愛護的なROM練習(特に屈曱、外転、外旋)

    • ストレッチング(腸腰筋、大腿筋膜張筋)

  2. 筋力増強練習:

    • 等尺性収縮(大殿筋、中殿筋、大腿四頭筋)

    • クローズドキネティックチェーン運動(ブリッジ、スクワット)

    • オープンキネティックチェーン運動(股関節外転、伸展)

  3. バランス練習:

    • 静的バランス(片脚立位、タンデム立位)

    • 動的バランス(重心移動、ステッピング)

  4. 歩行練習:

    • 部分荷重歩行(歩行器→杖へ段階的に移行)

    • 歩行パターンの修正(骨盤の安定性、立脚期の延長)

  5. ADL練習:

    • 移乗動作、階段昇降

    • 日常生活での脱臼予防指導

  6. 物理療法:

    • 浮腫管理(圧迫療法、挙上)

    • 疼痛管理(アイシング、TENS)

9. 経過

2週目

  • 疼痛:動作時NRS 3/10に軽減

  • ROM:股関節屈曲80°、外転20°に改善

  • 歩行:歩行器→T字杖に移行開始

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