まずはベッド➡車イスへ!寝たきりだと筋力が1週間で20%ダウン!?
人は寝たまま過ごしていると、どんどん体が硬くなり筋力が落ちていきます。人間は、1日ベッドにて寝ていると約3%低下、1週間で20%も低下すると言われています。
さらに寝たきりは筋肉や骨だけではなく心肺機能や精神面にも影響を与えます。可能であれば少しでも早く体を起こして車イスに乗り運動を行うように心がけることが大切。
まずは、寝たきり状態が引き起こすさまざま弊害を知ってきましょう。
・全身の筋力低下
・関節拘縮
・心肺機能の低下
・起立性低血圧
・認知機能の低下
・床ずれ(褥瘡)
・骨粗しょう症
など、いわゆる廃用症候群と呼ばれるものです。あげればキリがないほど寝たきりは体にマイナスをもたらします。
これは専門家らしからぬ言葉かもしれませんが…廃用症候群の最大の予防は「活発に心身を働かせること」。これに尽きる!
まずはベッドという環境から抜け出して「座る」→「車イスで移動する」という流れを増やすことが大切です。外の景色を見たり、庭を散歩してみたり…脳への刺激を増やしましょう。
最終的なゴールは「車イス」➡「立ちあがる」数を増やす!
車イスに乗る目的は「ただ座る」ことではなく「動く」「立つ」頻度を増やす移動手段。車イスに乗ることで自然と「動く」「立つ」頻度が増えます。
・ベッドから車イスに移る時
・車イスからトイレに移る時
・壁に捕まって立つ時
立つ頻度が増えるほど下半身に体重がかかり筋肉に刺激を加えてくれます。立ったり座ったりを繰り返し日常で行うだけで立派なスクワットトレーニングです。
お尻が痛くならない正しいイスの座り方
車イスに座っているけれども…体がずれ落ちてしまっている人をよく見かけませんか?
ずれ落ちたまま座っていると臀部に圧が集中して痛みが伴いやすくなります。まずは正しく車イスに座ることから始めましょう。実はよくある「背筋を伸ばしましょう!」だけで正しく座ることは意外と難しいものです。
正確には…
1.背もたれにお尻がつくまで深く座る
2.骨盤を立てる
3.背筋を伸ばす
この3ステップです。
骨盤が体の土台になるため、骨盤が寝ている猫背のような姿勢では背筋を伸ばすことができません。正しく座るだけでも背骨の負担が減り、頭の位置も変わるため誤嚥もしづらくなります。
<立つ時のポジション>
次に立つ時の体のポジションについてです。立つ時は深く腰掛けていると立ちにくくなります。
ポイントは…
・車イスに浅く腰掛ける
・体を十分にお辞儀する
・少し勢いをつけて立つ
以上の3つになります。介助者もこの3点を意識してもらうと体に負担がかかりにくくなります。
長時間の車イスも危険!
車イスに乗る時間を増やすことで生活が活発化するのも確かですが、車イスに長時間乗ることには弊害があります。
・床ずれができやすい
・姿勢が崩れてしまう
・お尻周りに痛みが出てしまう
実は寝ている時よりも臀部や仙骨部にかかる負担は大きくなります。そのため、床ずれ(褥瘡)も仙骨部にできやすくなってしまいます。
あくまでも車イスは移動手段であり、座位を保持するための手段ではありません。乗る時間、タイミングも相手の状態を判断して決めましょう。可能であれば15分に1回体を動かすことが大切です。(15分ごとが難しくても、2時間に1回は体位を変えたり、立つようにしましょう。)
車イスに乗ったままでもできるリハビリ
では実際に、車イスに乗ったままでもできるリハビリトレーニングをお伝えします。
たくさんの種類を多く行うよりも、少ない種類で複数の効果が得られる運動を行いましょう。継続しやすいトレーニングは「簡単・すぐにできる・楽になる」運動です。何よりも運動は「継続」が大切。1日だけでは意味がありません。運動を日課にしましょう。
1日の中で運動を組み込む時間としては、朝・昼・夕方の食後と夜を除いた時間に行ってください。
<運動のワンポイントアドバイス>
上半身と背骨を大きく動かす
呼吸を意識的に深く行いながら運動
この2点です。
体の中心である背骨を動かすことで間接的に全身の運動につながります。さらに呼吸を意識的に深く行わせることで心肺機能の向上にも影響を与えてくれます。
※痛みや違和感、背骨や上半身に既往歴がある人は無理をしないようにしましょう。
Lesson1.背骨屈伸
・イスに深く腰掛けたまま両手を万歳して背骨を反ります。
・反った状態のまま深呼吸
・次に床に手をつくように前屈
・体を丸めてそのまま深呼吸
Lesson2.背骨ねじり
・イスに浅く腰掛けて姿勢を正しましょう
・両手を頭の後ろに組んだまま息を吐きながら体を回しましょう
・体を回す最中に猫背にならないように注意
・最大限ねじったらもう一度大きく深呼吸しましょう
・同様に反対側も行いましょう
Lesson3.背骨側屈
・イスに浅く腰掛けて
・右手を大きく上げて左側に大きく側屈
・伸ばしたら深呼吸
・次に左手を大きく上げて右側に側屈し同様に呼吸をする
いずれも体調に合わせて3~5セット行いましょう。
米国スポーツ医学会のガイドラインでは高齢者も若者と同様に筋力トレーニングは効果的とされています。負荷が多いほどトレーニングの効果が高いので、複数回に分けて運動を行い慣れてきたらセット数を増やしていきましょう。
多くの人の協力が廃用症候群を予防する
「寝たきりを予防し車イスへ乗せる」。言うのは簡単ですが実際に行動に起こすのが難しいのが現状だと思います。
人手不足、施設や自宅における環境、本人の意欲・状態など、さまざまな要素が絡んで「寝たきり」が完成してしまいます。
だからこそ家族や介護スタッフ、看護師、リハビリスタッフが協力してほしいと思います。環境整えてあげることも重要なので、たくさんの人の力で1人1人の廃用症候群を予防することが大切です。