腓骨神経麻痺に対する低周波治療のタイミングと目安
腓骨神経麻痺に対する低周波治療のタイミングと目安について、メカニズムと治療法の関連性、および具体的な対応方法をご説明します。
低周波治療のメカニズムと治療タイミングの関連性:
低周波治療は、神経の再生促進、筋萎縮予防、疼痛緩和などの効果があります。腓骨神経麻痺の回復過程に合わせて適切なタイミングで開始することで、より効果的な治療が可能になります。急性期から慢性期まで、症状の変化に応じて低周波治療のパラメータを調整していくことが重要です。
具体的な対応方法と低周波治療の目安:
急性期(発症後0〜2週間):
目的: 疼痛緩和、浮腫軽減
周波数: 1〜4Hz(低周波)
強度: 痛みを感じない程度(通常、感覚閾値の1.2〜1.5倍)
時間: 15〜20分/日
注意点: 炎症が強い場合は、医師と相談の上で開始時期を決定
回復初期(2週間〜1ヶ月):
目的: 神経再生促進、筋萎縮予防
周波数: 4〜10Hz
強度: 筋収縮が見られる程度(MMTグレード1〜2程度)
時間: 20〜30分/日、週5回
注意点: 過度の筋疲労を避けるため、休息を挟む
回復中期(1〜3ヶ月):
目的: 筋力増強、運動機能改善
周波数: 10〜50Hz
強度: より強い筋収縮が得られる程度(MMTグレード2〜3程度)
時間: 30分/日、週3〜5回
注意点: アクティブなexerciseと組み合わせて実施
回復後期(3ヶ月以降):
目的: 機能的電気刺激(FES)による歩行改善
周波数: 20〜50Hz
強度: 足関節背屈が可能な程度
時間: 歩行訓練中15〜20分、週3回
注意点: 過用症候群に注意し、疲労感に応じて調整
電極配置:
陰極: 腓骨頭後方(神経走行部)
陽極: 前脛骨筋腱膨隆部
配置の確認: 刺激時に足関節背屈と足趾伸展が見られることを確認
パルス幅の設定:
急性期: 50〜100μs(短いパルス幅で痛みを避ける)
回復期: 200〜300μs(より深部の筋を刺激)
治療頻度の調整:
初期: 毎日実施(自宅でも使用可能な場合)
回復期: 週3〜5回
維持期: 週2〜3回
併用療法:
ストレッチング: 低周波治療前に実施し、筋の伸張性を高める
アイシング: 治療後に実施し、炎症反応を抑制
効果判定:
2週間ごとにMMTとROM(関節可動域)を評価
改善が見られない場合は、パラメータの再検討や他の治療法の追加を考慮
患者指導:
自宅での低周波治療機器の使用方法を指導
過剰使用のリスクとON/OFF時間の重要性を説明
低周波治療は、単独で用いるのではなく、他の理学療法技術と組み合わせて総合的に行うことが重要です。また、患者の回復状況に応じて、常にパラメータを最適化していく必要があります。
出典:
理学療法ガイド, 2022年版
Journal of Physiotherapy, Vol.65, Issue 2, 2019
臨床理学療法研究, Vol.37, No.1, 2020