人工股関節全置換術（THA）のケーススタディ

1. 患者情報

• 年齢：68歳

• 性別：女性

• 診断名：左変形性股関節症

• 手術：左人工股関節全置換術（THA）

2. 現病歴

患者は5年前から左股関節痛を自覚していた。最初は長距離歩行時のみ痛みを感じていたが、徐々に痛みが増強し、日常生活動作にも支障をきたすようになった。保存療法（投薬、理学療法）を行ったが症状の改善が見られず、X線所見で関節裂隙の狭小化と骨棘形成が顕著であったため、THAの適応と判断された。

3. 既往歴

• 高血圧症（内服にてコントロール良好）

• 骨粗鬆症（5年前に診断され、内服治療中）

4. 社会背景

• 夫と2人暮らし（夫は健康）

• 2階建て一戸建て住宅（1階に寝室、浴室あり）

• 趣味：ガーデニング、週1回の社交ダンス（術前6ヶ月は中止）

5. 理学療法評価（術後7日目）

疼痛評価

• 安静時：NRS 1/10

• 動作時：NRS 4/10（特に股関節外転時）

関節可動域検査（左/右）

• 股関節屈曲：75°/120°

• 股関節伸展：0°/10°

• 股関節外転：20°/30°

• 股関節内転：制限あり/20°（術後制限のため測定せず）

• 股関節外旋：20°/35°

• 股関節内旋：15°/30°

徒手筋力検査（左/右）

• 股関節屈曲：3/5

• 股関節伸展：2+/4

• 股関節外転：2+/4

• 股関節内転：2+/4

• 股関節外旋：3-/4

• 股関節内旋：3-/4

その他の関連する評価

• 浮腫：左大腿周径（膝蓋骨上縁10cm）右側と比較して+2cm

• 歩行能力：歩行器使用にて15m歩行可能

• バランス：Berg Balance Scale 32/56点

日常生活動作（FIM）

• 運動項目：58/91点

• 認知項目：35/35点

• 合計：93/126点

詳細な動作分析

歩行分析（歩行器使用時）：

• 立脚期：左立脚期の短縮、左股関節伸展不足、骨盤の左側方への傾斜

• 遊脚期：左股関節屈曲不足、骨盤の挙上（トレンデレンブルグ徴候）

6. 問題点