リハビリの定番アイテム「ペグボード」で上肢機能をトレーニング
上肢のリハビリにおける定番アイテムの一つが「ペグボード」です。
●ペグボードとは?
ペグボードとは、色や形、大きさが異なるペグ(木釘)を穴のあいた板に差し込んでいく用具の名称です。
手で握る(またはつまむ)ペグの形状は円柱形が代表的ですが、直方体や細いピン状になったものなど、さまざまなタイプがあります。
●ペグボードの使用目的は幅広い
ペグボードでは、ペグを手で持って板の穴に入れる・取り出す動作が要求されるため、上肢機能の訓練に使われることが一般的です。
しかし、「物を持って穴に入れる」という一見単純そうに思える動作の中にも、穴の位置を認識し、そこに向かって手を伸ばす「目と手の協調運動」の要素が含まれます。
また、色分けを行うことで視空間認知機能の訓練になりますし、細かなペグを使って作業を続けることで集中力の訓練としても活用できます。
●ペグボードを使ったリハビリの対象となる方は?
手で握る、指でつまむ、物品を運ぶなど、上肢機能の訓練を目的とする場合には、脳卒中や脳性まひなどの方を対象に使用します。
また、視空間認知の機能を維持するために認知症の方が用いたり、注意機能の訓練のために半側空間無視を認める方が使ったりすることも可能です。
手指や認知機能の発達を促す目的で、発達障害の子どもを対象に用いることもあるなど、ペグボードは幅広い分野で活用することができます。
大・中・小のペグボードでリハビリの難易度を調整しよう
ペグボードにはさまざまな種類がありますが、ペグのサイズは大・中・小というバリエーションで用意しておくことをおすすめします。
基本的にはペグが小さくなるほど巧緻動作や協調運動のレベルが上がり、必要な集中力も増すと認識しておいて良いでしょう。
ペグの大きさ特徴
大(直径3〜4cm程度まで)
●3指つまみ・側腹つまみの訓練ができる。
中(直径2〜3cm程度まで)
●指腹つまみの訓練ができる。
●指先でペグを反転させる訓練ができる。
小(直径5mm程度まで)
●指腹つまみ・指先つまみの訓練ができる。
●細かなペグで集中力を鍛えることができる。
手指のつまみ動作にはいくつかの種類がありますが、大きなペグでは母指・示指・中指を使った3指でのつまみを促すことができます。
中程度の大きさのペグでは指腹つまみの訓練ができ、さらに手の中でペグを反転させる動作を行いやすいため、物品操作の能力を高めることが可能となります。
ペグが小さくなれば指先を使った指突つまみのパターンを用いる必要があり、集中力を鍛えるための訓練という側面も強まります。
大・中・小のペグボードがあれば、リハビリの難易度を容易に段階付けできるようになり、利用者さんのレベルに合わせて訓練を進めていくことが可能になります。
なお、一つのペグボードに3種類の太さのペグが含まれる製品もあり、ペグや穴の大きさを認識しなければならない点では難易度が上がりますが、さまざまなつまみのパターンを訓練できるというメリットはあります。
単調なリハビリを回避!ペグボードの使い方には工夫をプラス
単純にペグを板に出し入れするだけでは、非常に単調なリハビリになってしまいます。
ペグボードの使用にあたり、単調な訓練になることを回避するためのアイデアをご紹介します。
●自作の図案も!ペグで模様を作るアクティビティに
あらかじめ用意しておいた「模様」や「図案」をペグで再現する活動とすれば、退屈なプログラムになることを回避できます。
ペグボードの図案集も販売されていますが、ペグを使って作成した模様を写真に撮って印刷しておくことも可能です。
レベルに応じて使用する色の種類や模様の複雑さなどを調整できるというメリットがあるため、模様を手作りしてみてはいかがでしょうか?
印刷した模様はラミネート加工しておくと長持ちするので、リハビリに活用できます。
●所用時間を測って成果をフィードバック
ペグボードを使った活動にかかった時間を測定し、フィードバックに活用することもおすすめです。
「前回は◯分◯秒でしたが、今日はそれよりも速かったですね」などと成果を共有することにより、リハビリに対するモチベーションとなるケースもあります。
上記のように、少しの工夫をプラスすることによって、ペグボードを使ったリハビリに楽しさを付加できるものです。
使い道が広がるペグボード、上手に活用していこう
ペグボードは「上肢のリハビリに使うもの」という漠然としたイメージを持たれがちですが、ペグの大きさが異なると求められる機能も変化します。
また、使い方によっては集中力や視空間認知機能の訓練に応用することもできるなど、意外と奥深いリハビリ道具です。
ニーズに応じて使い方を工夫し、ペグボードを上手に活用していきましょう。