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パーキンソン病に基づいた詳細な理学療法ケーススタディ


  1. 患者情報

    • 72歳、男性

    • 診断名:パーキンソン病(Hoehn-Yahr重症度分類 Stage III)

    • 手術:なし(薬物療法中)

  2. 現病歴
    5年前に右手の振戦で発症。徐々に歩行困難、姿勢反射障害が進行。最近、すくみ足と転倒リスクの増加を認め、理学療法の依頼となった。

  3. 既往歴
    高血圧症(内服加療中)、腰部脊柱管狭窄症(保存療法中)

  4. 社会背景
    元会社員、現在は妻と二人暮らし。趣味は読書と散歩。自宅は2階建て、階段あり。

  5. 理学療法評価(初期評価時)

    • 疼痛評価:安静時痛なし、腰部に動作時痛あり(NRS 2/10)

    • 関節可動域検査:体幹回旋(右/左)30°/35°、股関節外転(右/左)30°/35°

    • 徒手筋力検査(MMT):体幹回旋3、股関節外転4、膝伸展4

    • Unified Parkinson's Disease Rating Scale (UPDRS) Part III:運動症状 35/108点

    • Berg Balance Scale (BBS):40/56点

    • Timed Up and Go Test (TUG):16.5秒

    • 10m歩行テスト:17.2秒(平均歩行速度 0.58 m/s)

    • 日常生活動作(FIM):運動項目 65/91点、認知項目 33/35点

    • 詳細な動作分析:
      歩行時、右立脚期の短縮と左遊脚期の延長を認める。右立脚中期で体幹の左側屈が見られ、左遊脚期では足クリアランスの低下がある。すくみ足が方向転換時に顕著。

  6. 問題点
    インペアメントレベル:

  • 姿勢反射障害

  • 体幹・下肢の筋力低下

  • 静的・動的バランス能力の低下

  • すくみ足

ディスアビリティレベル:

  • 歩行速度の低下

  • 転倒リスクの増加

  • ADL動作の困難さ(特に入浴、更衣)

ハンディキャップレベル:

  • 社会参加の制限(散歩や外出頻度の減少)

  1. 目標設定
    長期目標(8週後):

  • 屋外歩行を30分以上継続し、週3回の散歩を再開する

  • FIM運動項目を75点以上に改善する

短期目標(4週後):

  • TUGを14秒以内に改善する

  • BBSを45点以上に改善する

  • 10m歩行テストを15秒以内(平均歩行速度 0.67 m/s以上)に改善する

  1. 理学療法プログラム

  • バランストレーニング:静的・動的練習、不安定面での練習

  • 筋力強化:体幹・下肢の筋力トレーニング(特に抗重力筋)

  • 歩行練習:リズム聴覚刺激を用いた歩行、方向転換練習

  • すくみ足対策:視覚的手がかりを用いた歩行練習、認知運動課題

  • ADL練習:起居動作、移乗動作、更衣動作の練習

  • 自主トレーニング指導と家族教育

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