医療従事者のための胸部大動脈瘤の基礎知識:症状・診断・治療法
胸部大動脈瘤について知っておこう!
胸部大動脈瘤とは?
胸部大動脈瘤は、人体で最も太い血管である大動脈が部分的に膨らんでいる状態を指します。大動脈は心臓から出て上に向かい、弓状に曲がって背中側に回りながら脳や腕に栄養を運ぶ3本の血管が枝分かれし、下に向かいます。胸部大動脈はこの範囲を指し、横隔膜を貫通して腹部大動脈に名前が変わり、腹部の内臓へと枝分かれした後、左右に分岐して下肢に向かいます。
胸部大動脈瘤の特徴と種類
胸部大動脈瘤は、通常は20~30mm程度の大動脈が、30~40mm以上に膨らんだ状態を指します。胸部大動脈瘤の位置によって、以下のような種類があります。
大動脈基部拡張症
上行大動脈瘤
弓部大動脈瘤
下行大動脈瘤
また、胸部から腹部にかけて連続して大動脈瘤がある場合には胸腹部大動脈瘤と呼ばれます。
大動脈瘤と大動脈解離の違い
大動脈瘤と大動脈解離は、どちらも大動脈が大きくなる病気ですが、病気としては異なります。大動脈瘤は大動脈の内膜、中膜、外膜の3つの層がそのまま膨らむ状態を指し、大動脈解離は内膜にできた傷から中膜の中に血液が流れ込んで裂けてしまい、大動脈の壁の中に血液が流れ込むことで真腔と偽腔という二つの血液の流れる道ができる状態を指します。
胸部大動脈瘤の治療方法
胸部大動脈瘤が拡大すると破裂の危険性が高まります。通常、症状がなくても定期的な検査や経過観察が重要です。治療方法は以下の通りです。
定期的な経過観察:胸部大動脈瘤の状態を定期的に検査し、経過を観察します。
手術:胸部大動脈瘤の破裂を防ぐために手術が必要な場合があります。瘤の大きさ、位置、形状、拡大の速さ、遺伝的要素などによって手術が選択されます。
薬物治療:胸部大動脈瘤の拡大を遅らせるためには、高血圧の薬物治療が行われることもあります。ただし、完全な治療はできません。
胸部大動脈瘤の治療は、破裂を予防するために行われる重要な処置です。瘤の状態や患者の個別の要素によって適切な治療方法が決定されます。定期的な検査と医師との相談を通じて最適な治療方法を選択しましょう。
参考文献: