臨床家向け 仙腸関節性腰痛
この記事は治療に役立つものを中心とした、
概論となっています。
治療技術に関しては、「椎間関節性腰痛」と
重複することが多いため、そちらをご覧下さい。
仙腸関節性腰痛に対し、
重要視しているのは以下の4点です。
後仙腸靱帯・骨間仙腸靱帯
多裂筋
腰椎椎間関節
隣接関節の可動域(脊椎・股関節)
解剖学と論文から説明します。
治療に役立つ話
1)解剖学
仙腸関節を取り巻く、複数の靱帯があります。
関節腔と連続しているのは、
前仙腸靱帯
後仙腸靱帯
骨間仙腸靱帯です。
1番右の画像から、特に後仙腸靱帯の付着幅が大きいことが分かります。
それには、何か理由があるはずです。
おさらいになりますが、、
ある一定の許容範囲を超えると、
その運動に対し制動にかかる役割があります。
臨床では、短縮(撓む)より、
過度に伸長されることが問題になります。
また、以下のような報告もあります。
後部靱帯の付着割合・侵害受容器の存在・
関節周囲ブロックの結果から、
後方の靱帯が治療対象になり易いと言えます。
2)疼痛自覚部位
下記の図は、
仙腸関節性疼痛100例の自覚疼痛域です。
仙腸関節列隙の外側縁が83例
次いで、大腿部外側>鼠径部>下肢痛となり、
下肢痛は疼痛部位が連続せず、分節的です。
この図だけ参照すると、仙腸関節に問題があると
「殿部と下腿に症状が出てもおかしくない」
ということになります。
しかし、殿部/下腿の痛みを拾っている
神経はそれぞれ違うはずです。
そこで、
関節の神経支配についての報告をご覧下さい。
3)神経支配
仙腸関節の神経支配は1つの関節といえど、
多重神経支配であることが報告されています。
仙腸関節を直接動かす筋は存在しませんから、
複数の神経支配であることは関節保護に役立つ
と言えます。
関節を取り巻く周囲靱帯が
多く存在していることも納得です。
しかし、その一方で過負荷な状態に陥ると、
様々な影響が出てもおかしくないということになります。
次は、
靱帯由来の疼痛を有する患者の評価について
4)後部靱帯由来の仙腸関節痛の特徴
殿部痛や下肢痛の原因として、
椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症が有名です。
仙腸関節性腰痛の患者さんも
下肢痛を含む可能性があるため、
どのような特徴を有するのか報告したものです。
多重ロジスティック回帰分析を用いた解析にて、
下記項目が仙腸関節スコアに採用されました。
3点 One- finger test
(疼痛部位を指1本で指す)
2点 鼠径部
1点 椅子座位時の疼痛増悪
1点 仙腸関節shearテスト
1点 PSISの圧痛
1点 仙結節靱帯の圧痛
カットオフ値:4点
感度 90.3% 特異度 86.4%
非常に感度が高いです。
また、ヘルニアと狭窄症の座位時における
疼痛頻度・領域についての報告もあります。
問診を注意深く行うことは、
病態予測に必須です。
椅子座位時の疼痛は、
「坐骨結節を介した仙腸関節への剪断ストレス」になります。
また、確定診断はDrが後方靱帯ブロックを行い、
疼痛が10→3以下へ改善されたものとしています。
当たり前ですが、
理学療法士に確定診断はできません。
尊敬する小野先生が講習会で仰ってました。
「こういう所見が揃ったから〇〇が問題だ!と
決めつけちゃダメですよ」
あくまでも「〇〇が問題かな」という
余白を残しておくことが大事です。
他の腰部機能障害との合併も十分有り得ます。
椎間関節は特に関りが強いです。
前提として、関連痛などの話もあるように
「病態に関する知識」も必要です。
文献を読んで積み重ねをするしかないですね。
次は、仙腸関節痛発生の機序・慢性化する
メカニズムについてです。
5)仙腸関節痛の慢性化メカニズム
外傷や1次性の関節炎を除き、
仙腸関節の不適合のよる機能障害が
問題になるようです。
治療の方向性がみえてきました。
しかし、どの症例でも治せるか
といったら別問題です。
PTでは対応できない「炎症」
というキーワードがあります。
どういう特徴があるのかみていきましょう。
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