電車の子は電車

お父さんカエルはケロケロケロ、お母さんカエルはケロケロ、子供のカエルはさてなんと鳴くでしょうか。このなぞなぞを久々に聞いた。お分かりと思うが「カエルの子はオタマジャクシだから鳴きませぇ~ん(いじわるそうに言うと効果大)」が正解だ。

あれ、カエルの子はカエル、ってどういう意味だったんだっけ、とふと思う。カエルの子はオタマジャクシだと屈辱的な背景となって頭に刷り込まれているというのに。

どうやらこういうことらしい。「お、あいつの子供のわりに将来有望だな」と思っていたらある程度育って来た頃には「やっぱりあいつの子供だな」と言われてしまう、それがカエルの子の話。

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ここは在来線の車庫近くの線路。今日は非番のお父さん電車が子供電車くんと晴れた空の下お散歩をしています。

向こうに見える高架橋の上を、緑色の新幹線が緋色の新幹線と手をつないで過ぎてゆくのが見えました。子供電車くんはここから見る新幹線の姿が大好きでした。

「お父さん、ぼく、大きくなったら新幹線になるんだ」そう何気なく話すとお父さん電車は少し困った顔で「うむ、そうか」と言いました。

「ぼうやは新幹線になって何がしたいんだい」とお父さんが聞くと、「速く走れるようになって、おきゃくさんをたくさん乗せたい」と言いました。

お父さんは「ぼうや、それならお父さんと同じ特急はどうだい。他の電車とすれ違ったり、ホームで声を掛け合ったり、隣の電車のお客さんの楽しそうな顔も見られるぞ」と言いました。それでも「そうじゃないんだよぼく、あの速さで何が見えるのか知りたいんだ」と言いました。そしてさっき新幹線が通った余韻を追うように高架橋をまだ見つめていたのです。

お父さんもかつて、そんな夢を持ちながら仕事を続け、今は特急として任務を全うしています。どんなに頑張っても自分たちが新幹線になれないことを知っていますが、お客さんの役に立てることも知っています。

速さは遠くは見えるけど近くがスピードに負けて見えなくなる。速く走るという事はそう言うこと。ぼうやの目線を見つめながら、次は覚悟の話をしようとお父さんは思っているのでした。

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