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あなたの恋人は?「回避型」「恐れ・回避型」「回避依存症」の特徴と違い

「違い」を知ることがあなたにとって大切な理由

本題に入る前に、なぜ私がこの記事を書いたのかを説明させてください。

近頃、「回避依存症」や「愛着スタイル」について情報発信をしている方が増えた結果、これらの言葉を「回避」という言葉でひとまとめにして解説する方が増えています。

「回避型」「恐れ・回避型」「回避依存症」が人間関係や、時に恋愛の特徴を説明する言葉として使われていること自体は間違いではありません。

ですが、それぞれの性質は似ている部分もあれど、基本的には別の概念。

これらの言葉に、性格や性質、行動の違いがある以上、それぞれ適切なコミュニケーションの取り方も当然異なります。

私がこの記事であなたに伝えたいのは、「回避」という言葉で一括りに情報収集してしまうと、あなたの大切な人との関係を壊してしまう可能性がある、ということ。

そうならないために、少し長くなりますが、この記事を最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

注:この記事では「大人の愛着障害」、その中でも”恋愛面”を軸に解説を行うことをご承知下さい。

 「回避型」「恐れ・回避型」「回避依存症」とは

まず、「回避型」や「恐れ・回避型」という言葉は、心理学の「愛着理論」という考え方から来ています。

愛着理論を簡単に説明すると、子どもの頃の親との関係が影響して、大人になったときの人間関係の築き方や距離の取り方に影響を与えるという考え方ですね。

一方、「回避依存症」は恋愛の中でよく見られる特徴を表した言葉になります。学問的な理論に基づいた言葉ではなく、その実態はあくまで「恋愛用語」。

ただし、「回避型」や「恐れ・回避型」などの愛着理論と全く関係がないかと言うとそうではありません。回避依存症になる原因として、幼少期の親との関わり合いが深く関係しているからです。

「甘え」「依存」「自立」の視点から見る明確な違い

ここからは、「甘え」「依存」「自立」という3つの視点から、回避型、恐れ・回避型、回避依存症の違いを出来るだけ分かりやすく説明します。

それぞれが何を大切にしているのか、どんな行動を取りやすいのかを掘り下げて解説しますね。


回避型:甘えるのを避けて、自分で頑張ろうとするタイプ

回避型の人は、「何事も人に頼らず自分でやるのが一番安心」という考えを持っています。

他人に頼るのは不安だし、自分のことは自分で解決したい。そんな気持ちから、自然と他人との距離を取る傾向があります。

「自立」を大切にする心
回避型の人にとって、自立は自分を守るための大事な手段です。これは誰かに甘えたり頼ったりすると

「期待を裏切られるんじゃないか」

という不安が出てくるからです。

それよりも、自分で頑張って安心感を得るほうがラクなんですね。

恋愛でも、恋人にベタベタ甘えるよりは、一人で過ごす時間を大事にすることが多いでしょう。

「自由でいたい」
「干渉されたくない」

という気持ちが強いので、相手から見ると少し冷たく感じることもあるかもしれませんね。

回避型を理解するうえで大切なのは、回避型の人には、「甘え」や「依存」の傾向はほとんど見られない、ということ。

あくまで他人に頼ることを避け、自分一人で頑張る姿勢が特徴です。

自立を重んじるあまり、他者との距離が広がることもありますが、それが彼らにとっての自然なスタイルなのです。


恐れ・回避型:内面で静かに葛藤する人

恐れ・回避型の人は、「人と近づきたい」という気持ちと「近づくと傷つくかもしれない」という恐怖心の間で、内面に深い葛藤を抱えます。

親密になりたいのに、どこかで不安や警戒心が強く働いてしまうため、心がいつも揺れ動くのが特徴です。

この部分だけに着目して、回避依存症と混同される方が非常に多い印象です。

内面的な葛藤が主体
恐れ・回避型の本質は、他者との親密な関係を求める欲求と、それによって傷つく恐怖がぶつかり合う「内面的な葛藤」にあります。

そして、この葛藤は必ずしも行動として現れるわけではありません。

相手との距離感に迷ったり、接近しようとしたけど不安でやめてしまったりする形で、自分の中に留まることも少なくないのです。

人を「信頼」することの難しさ
恐れ・回避型の人にとっては、恋人に限らず「他人を信じるという行為」がそもそも非常に困難です。

「裏切られるかもしれない」
「拒絶されるかもしれない」

という不安が常に頭をよぎり、信頼関係を築くことが難しくなります。
このため、友人や恋人など親密な関係を築きたいのに、心の中ではその関係を拒絶してしまうことも。

つまり、恐れ・回避型の人は、「甘えたい」「近づきたい」と思う一方で、「傷つくかもしれない」という恐怖との間で常に葛藤している。そして、それは決して”恋愛面”だけに留まる傾向ではありません。

恐れ・回避型の人は

「人に頼りたいけれど頼れない」
「自分で何とかしたいけれど、本当に一人で大丈夫なのかわからない」

という、矛盾に苦しみます。

恐れ・回避型の人は「自立」へと踏み切るための安心感も、「依存」へと踏み込むための信頼感も、十分に育まれないまま成長してしまった結果、「どっちつかずの状態」だと言えるでしょう。

この点が「依存」や「甘え」が根底にある「回避依存症」との一番の違いになります。


回避依存症:恋愛関係のみ依存が強くなる人

回避依存症の人は、恋愛において

「甘えたい」
「頼りたい」

という強い願望を持っています。

他の人間関係では普通に見える、つまり自立しているように見えることが多いのですが、恋愛では恋人に対する依存心が大きく表に現れます。

そもそも論として、回避依存症の人には「甘え」と「依存」がベースにある。この点が、前の2つのタイプと大きく異なる部分だと言えるでしょう

またその成り立ちも、単に幼少期の心の傷だけが原因という訳ではなく、その上に積み重なった様々な経験が関係しており、

「傷つきたくないから回避する一方、本当は甘えたい」

という複雑な心情を形成しています。

「甘え」や「依存」がベースにある心理
回避依存症の人は、自立しているふりをしながらも、心の底では

「もっと愛されたい」
「甘えたい」

という欲求を強く持っています。しかし、それをそのまま伝えるのが怖かったり恥ずかしかったりするため、その感情をあまり素直に表現することはありません。

恋愛初期の愛情深い態度はまた別の話になるので、この記事では一旦置いておきます。

このため、普段の生活では冷静でクールな態度を装いますが、恋愛相手に対しては内面的な依存を強く持っています。

恋愛での矛盾した行動
回避依存症の人は恋愛では、相手に近づきすぎたと感じると急に距離を取る、逆に冷たくされると急に追いかける、といった不安定な行動を取ります。(いわゆる回避行動ですね。)

こうした行動は、依存心が強い一方で、傷つくのを恐れる気持ちが同時に働いているから。

そして、このような矛盾した態度が、恋人に誤解を与え関係を悪化させる要因になります。

他の人間関係との違い
回避依存症の特徴は「恋愛においてのみ依存心が強くなること」です。

友人や職場など、恋愛以外の関係では比較的安定していて、「しっかりしている」と見られることもあります。しかし、恋愛になるとそのバランスを崩し、内面的な不安や葛藤が表に出やすくなります。

ここまでの内容をまとめると⋯

以上が「甘え」「依存」「自立」からみた3つの言葉の違いです。

少し分かりにくかったかもしれないので、以下に簡単にまとめてみました。

【甘え・依存との向き合い方】

回避型
:他人を必要とする欲求自体があまり表に出ない。恋人を作ることはあるが、依存を避け、自立的に振る舞う傾向が強い。

恐れ・回避型:本当は甘えたい・近づきたい気持ちがあるが、それと同時に強い恐怖や不安があるため、行動としては他人と距離を取る。

回避依存症:甘えたい・依存したい気持ちが「恐れ・回避型」よりも表面化していて、その欲求を意識している場合もあれば無意識の場合もある。だけど、傷つくことへの恐れから実際に恋人に依存しきれず、回避行動で自分を守る。

【自立との向き合い方】

回避型
:自立や独立を良しとする価値観が強く、他者に頼らない自分に安心感を抱く。

恐れ・回避型:自立しなければいけないと思いつつ、実は自分自身も他者も信頼できず、自立も依存も中途半端になっている。

回避依存症:自立しているように見えるが、実は「自立」は表面的で、内面には”恋人”に対する強い依存願望がある。

いかがでしょう?少しづつですが、これらの言葉の違いが明確になってきたのではないかと思います。

「回避」という言葉に私が思うこと

ここまで読んでいただいた方の中には、「もしかしたら彼は『回避型』ではなく『回避依存症』だったかも?」などと思った方もいるかもしれませんね。

なるべく分かりやすく伝えるよう努めましたが、逆に言葉足らずな部分があったり、全体像がつかみにくかったりした点もあったかもしれません。その点についてはお詫びします。

さて、普段私は公式ブログで情報発信をしているのですが、今回はnoteにしました。その理由は「私の意見」を少しだけ皆さんに伝えたかったからです。

公式ブログでは「情報」を伝えることを専念したいという思いがあり、あえて「私の意見」は記事に反映させてきませんでした。

実は私自身、「回避」という言葉が昨今ひとり歩きしている状況を、あまり好ましく思っていません。

今、ネット上では「回避」という言葉が流行り、さまざまな人が「”回避の人”との付き合い方」の情報を発信しています。

ですが、その多くはカウンセリング経験や知識に基づいておらず、”回避”という言葉で「実態以上に単純化」されてしまっているように私は感じるのです。

「回避」と一口にいっても、その背景や経緯、内面の構造は人それぞれ大きく変わります。

実際に話を聞いてみなければ、その人がどのタイプに当てはまるのか、また、どんな性質が組み合わさっているかを正確に把握することは難しいと、私自身、日々のカウンセリングで痛感しています。

それでも、情報が何もないよりは、ある程度の指標があったほうが「今、恋人がどのような状態にあるのか」を考えるきっかけになることは間違いありません。

だからこそ、私のブログ「心理ノート」では、回避依存症について40以上の記事を投稿しています。(今後は回避型やその他のタイプについても解説を増やしていく予定です。)

一つひとつの記事は小さな断片かもしれませんが、読者の方にとって、少しでも「回避型」や「恐れ・回避型」、そして「回避依存症」の判断材料や理解のきっかけになればと願っています。

ここまで記事を読んで下さったあなたも、「回避」という言葉だけを鵜呑みにせず、柔軟かつ慎重な視点で、お相手を見つめてもらえればと思います。

ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。

【心理ノート】
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