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”見えてない”人々。

用事で都内に。

コロナ渦ということもあり
人混みを避けていたが、会社での用事があり
人出が多い場所に珍しくでかけていた

「店舗視察」という名の「競合店調査」
慣れてはいるけど、時間も根気がかかる作業で
正直少し気分は憂鬱

追い打ちをかけるように
信号待ちで人で溢れた駅前の交差点を見て思わずため息が漏れる
「早く終わらせて家に帰ろう」
信号が青に

外国人からするとこれだけの人数ぶつからずにパパッと通れる
日本人は凄いらしい
スマホのカメラを上に掲げながら渡っていく人もチラホラ

・・・と、目の前に人がいて慌てて止まった

よく見ると、更にその前にいる方がゆっくりと歩いているらしく
男性が横をすり抜けようにも人の波が進路を塞いでいる状況
頭を左右に振りながら横を通るチャンスを伺うがなかなかやってこない

2秒ぐらいだろうか
一瞬のすき間をぬって横を通り過ぎていく

「ッ。邪魔なんだよ」

舌打ちが僕にも聞こえた、同時に前の方から

「…すみません…」と一言

僕の後ろにいる人の視線を感じ
そして前からも高速でこちらに向かってくる人が
迷惑そうな顔をして避けていく様子も見えた

何かあったのだろうか?
気になりつつも自分も横をすり抜け、振り返ると
”白い杖”をつく姿が目に入った

「…!」
なんで気付けなかったんだろう
前からも後ろからも人が押し寄せる中
交差点の半分もわたってない状況
ほっておけず声をかける

「どちらまで行かれますか?一緒にお連れしますよ」

相手は小さく頷き、手をとりながらゆっくりと渡っていく
周りも状況を察してか自然に道が空いた

「ここまでで、大丈夫です。すみません、ご迷惑をおかけして」
『いえいえ、謝らないでください。大丈夫ですから。』

渡り切ったあと相手はそのまま人が多い商店街へ
後ろ姿を見送ると改めて気付く

「…白い杖が見えない…」

人混みだと”後ろ”からは白い杖が見えづらいのだ
周りが最初から気付いていれば反応が変わっていたのだろうか
色んな考えが一気に頭を巡った

相手からの「すみません」の言葉も違和感があった
他人からの親切を素直に受け取れられないほどのことがあったのか
心が軋む音がする

本来の目的を思い出しふたたび目的地を目指す
別の交差点で横断をするとぶつかりそうになり避けると
相手はイヤホンをつけながらスマホの画面に夢中
一切こちらを見てこない
そのまま素通りしていく

見えているのに”見えてない”人が多すぎる
そして見えている部分だけで判断する人の心の狭さに
苛立つ自分がいた

あなたには周りが「見えて」ますか?

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