安っぽい映画のワンシーン

独身時代はこの季節に歩道に落ちまくっている
落ち葉が無性にキライだった

歩くたびにサクサクする音が不快
それに落ち葉が巻き上げられてズボンにつくし
雨の日はすべりやすくもなる

”いいことなんて一つもない”
って思っていた

妻と付き合うようになってからはじめての秋
一緒に歩道を歩いている時に
たくさんの落ち葉を目にした

”落ち葉避けよう”
って思いながら握ってた妻の手をやさしく引っ張ると
逆にグイッ！って引っ張り返される
しかも落ち葉の方向に

すると
「ねぇ、ねぇ、見てみて！」
って妻がいきなり落ち葉の上に
足をドシドシと踏みしめながら歩きはじめた

サクサク
どころか
ザクザク
みたいな大きな音
を立てながらとても楽しそう

次に落ち葉を手にガサッと集めると
いきなり空中に放り出してきた

思わず
「うわっ！！！」
って声をあげてよけて
「頭にかかるじゃん！」
突っ込むと
「それがいいんだよ！」
って謝るどころか逆に突っ込んできた

僕が絶対にしない行動の連続に
「子供っぽいなぁ…(笑)」
って気付けば頭に落ち葉をつけて笑っていた

「保育士ですから！」
なんてキリッと自慢するが
その言葉と落ち葉を踏みしめ、落ち葉を投げてくる理由に全くならないことに更に笑ってしまった

「しかえしをしてやる！」
そう言って手でガバッと落ち葉を
たくさん抱きかかえると妻を追いかける

「きゃーーーー」
笑顔で追いかけられる妻

こんな風に落ち葉で遊ぶなんて
いつぶりぐらいだろう

”秋のシーンで男女が落ち葉を投げ合い遊ぶ”
というシチュエーションってなんだか
安っぽい映画のワンシーンでありそうだなぁ

なんて妙に冷静になりながらも妻を追いかけて追いかけて
…ﾊﾞﾃた。

「ﾊｧﾊｧ…もう無理🤤」
「私の勝ち～」
「コレ、勝敗あるん？！」
「あるよ！」

そう言って振り返る妻の笑顔は
決して”安っぽい映画のワンシーン”ではなく
主演のように輝いて可愛く無邪気に見えた

そして今年
また同じように秋のあの歩道を歩く
でも、それは二人ではなく3人だ

「早く落ち葉で一緒に遊びたいね」
って僕が何気なく言うと
「落ち葉嫌いって言ってたじゃん(笑)」
って笑う妻

３人で色づいた落ち葉の道を歩く光景を頭の中で俯瞰的に想像してみると
安っぽい映画というより
家族愛を語った全米第一の映画のワンシーンな気がしてきた

「大げさすぎかな(笑)」
「何が？」
おっと…心の声が漏れたようだ

「いや、なんもないよ」
「なになに？言ってよーーー！」

これは僕たち家族のワンシーンの話。