文化的価値(value)
ホフステッド(Hofstede, G.)は、特定の文化の成員が特定の社会行動をとる原因を探るため、50以上の地域で仕事観の調査を行い、最終的に5つの文化的価値次元を抽出した。
(1)権力格差 (power distance)
国の制度や組織において、権力の弱い成員が権力の不平等分布を受け入れている程度。
権力格差の大きな組織では、権力が少数の人々に集中し、ピラミッド型の階層構造が形成される。
一方、小さな組織は分権化されていて、よりフラットな構造をもつ。
(2)個人主義・集団主義(individualism / collectivism)
個人的な選択や達成を重視し、個人の目標を集団の目標よりも優先するか、集団の調和の維持を重視し、集団の目標を個人の目標より優先させるか。
(3)男性らしさ・女性らしさ(masculinity / femininity)
性役割観が強調されている程度。
男性らしさの強い文化では、社会生活における男女の性役割が明確に区別されているのに対して、女性らしさの強い文化では、男女の役割の違いがあまり存在しない。
(4)不確実性の回避 (uncertainty avoidance)
ある文化の成員が、不確実な状況や未知の状況に対して脅威を感じる程度。
不確実性回避の程度が高い文化では、従業員は長期雇用、退職金、 健康保険などを重視し、規則を定めて事象の予測可能性を高めようとする。
不確実性回避の程度が低い文化では合理性を重視する傾向があり、変化への抵抗感が少なく、リスクへの対応が柔軟に行われる。
(5)長期志向・短期志向(long-term / short-term orientation)
長期志向の文化では、忍耐と持続、地位に応じた序列関係の遵守、倹約、恥の感覚といった価値が重視される。
短期志向の文化では、安定性、面子の維持、伝統の尊重、あいさつや好意や贈り物のやりとりなどが重視されている。