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社会的促進(social facilitation)

○社会的促進

 他者が存在することによって個人の課題行動が促進されること。
 19世紀末にトリプレット(Triplett, N., 1898)が行った「社会心理学の中で最古の実験的研究」では、自転車のレースや釣竿のリールを巻くといった 作業をする際、1人でするよりも他者と一緒に課題遂行したほうが、 成績が良くなることを示した。
 しかし、その後の研究では、誰かに見られていると手元が狂ったりして他者の存在によって課題遂行が抑制される社会的抑制(social inhibition)があることが明らかにされた。

 社会的促進と社会的抑制のどちらが生起するかについて、ザイアンス(Zajonc, R.B.) は、動因仮説を提唱している。
 他者がそばにいるというだけで生理的な覚醒水準(arousal)が高まり、覚醒水準が高くなるとその個体がもつ 「反応レパートリー」の上位にある行動が起こりやすくなる。

 課題遂行において、難しい課題では誤りを犯すことが、容易な課題ではうまく遂行することが反応レパートリーの上位にあるといえるため、容易な課題の遂行は他者の存在によって促進されるが、難しい課題を実行する場合にはかえって課題遂行が抑制される

社会的促進と社会的抑制に至る過程

他者の存在

覚醒水準または動因の上昇

反応レパートリー上位の反応傾向を強化
↓            
①単純課題ならば、正反応 が生じ、社会的促進

②複雑課題ならば、誤反応が生じ、社会的抑制

 コットレル (Cottrell, N.B.)は、課題遂行者が「自分が評価の対象になっている」という一種の不安感である評価懸念をもつ必要があることを提唱した。
 サンダース(Sanders, G.S.)は、課題と他者の両方に注意を向けることによって生じる葛藤状態が喚起水準を高めることを提唱した。

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