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効果研究(psychotherapy outcome research)

○効果研究

 心理療法の効果を検討する研究。
 心理療法を受けている実験群と受けていない統制群を比較して検討する。

 実験群と統制群が異なるクライエントである場合を被験者間計画(within subject design)という。
 統制群にクライエントを割り当てることに対しては、倫理的問題がある。
 何らかの困難を抱えて来談したクライエントに対して、「心理療法を施さない」という選択を意図的に設定するのは非倫理的である。
 一方で実験群にも、効果があるのか否か確定していない心理療法を施されることに対する非倫理性に、注意を払う必要がある。
 統制群は「心理療法を施さない」ことによって、来談回数・セラピストと会話する頻度・治療費・改善の期待など様々な要因が実験群と異なり、統制が十分になされず、 独立変数と従属変数の両方に相関する外部変数が存在する交絡(confound)が 生じる。
 交絡を避けるために、ただちに心理療法を開始する群(実験群)と、一定期間後に心理療法を施す群(待機統制群)を設定し、実験群と心理療法を施す前の待機統制群で比較することがあり、待機期間中は治療的介入ではなくレクリエーション活動をすることが多い。

 実験条件と統制条件が同一のクライエントである場合を被験者内計画 (between subject design),単一事例研究(single case experiment)という。
 心理療法を受ける前の基準であるベースラインを測定し、心理療法を受ける期間(実験条件)と受けない期間(統制条件)を設け、変動を検討する。
 実験条件(A)と統制条件(B)を反復的に実施して変化を検討するABABデザインが代表的である。
 統制条件時に改善が見られないことを期待するこの方略も、倫理的問題がある。
 心理療法に即効性がなく、時間経過とともに効果が現れる場合は、実験条件時に改善が見られず統制条件時に改善されるということも起こりうる。

○事例研究(case study)

 ごく少数のクライエントの変化を記述したものであり、またその変化の記述にはカウンセラーの主観的解釈が含まれている。
 そのため、事例研究によって心理療法・介入の効果の普遍性を求めることは難しい。
 同様の稀な症例に遭遇した臨床家の事例研究論文を参考にすることにより、事例研究の存在意義が生まれる。
 普遍化を目指すのではなく、あくまで個の理解に焦点をあてる。

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