
ペンキ塗り。
二つ目に勤めた大きなスタジオは、アールの付いた白い、いわゆるホリゾント「白ホリ」があって、使うとどうしても汚れるので、白ペンキで塗りなおすのが数か月に一度あった。ホリゾントって、壁と床の継ぎ目がアールの付いた板でつなげてあって、これで継ぎ目線のない背景になりグラデーションが奇麗に付けられるのです。使うペンキは蛍光剤の入ってない特殊な水性ペンキで、コロコロ転がすスポンジで出来たローラー状の器具で、塗っていく。私は貰い物の作業用ツナギを、背中にキャタピラー三菱って大きく書いてあるやつ、これを着て、頭にはタオルを巻いて、専用の白く汚れた草履で作業してた。それでも顔や手、眼鏡にも飛んであちこちポツポツと白い斑点だらけになった。草履で生乾きのところを踏むとその跡が点々とほかに付くので気を使った。そうそう、普段はこの塗ったところ、白ホリへは、靴を脱いで入る、もしくは専用のきれいな草履で。靴のままだと汚れるからだけど、中にはその靴下でもうっすら点々と足跡が付く人が居た。特に夏場は汗もかくのでしょうがないけど。この場合はあとで雑巾で拭いて回ることになる。
乾かすにも時間がかかる。、朝から、作業中も大きな業務用ファンを回してはいるが、そんなにすぐ乾かないので、最後は一晩おく。水性なので、少し薄めるけど、濃いと伸びが悪いしダマになったり、垂れたりするし、薄いと何度か重ね塗りしないと下から汚れが浮き出る。時には下地に穴が開いたり、塗装が部分的に剥がれたりして出来た段差もきれいにパテで埋めたり、ゴミなどで出来た盛り上がりはグラインダーで削ったりと、事前作業もあり、まあまあ大変だった。酢酸の匂いをかぐと暗室を思い出すように、あの独特のペンキの匂いを嗅ぐと、だだっ広くてとても寒いスタジオを思い出す。
うちは狭いのでホリゾントはないが、床はコンクリート、壁はべニア板で、これをこのペンキで塗っている。他にないので、これ一択。天井は余計な反射を防ぐのに黒に。壁も黒くしておくか、とも思ったけど、なんだか暗くなりそうなのでやめた。
ということで、来年早々の撮影の準備に昨日、ペンキ塗りをやったけど、塗り終わる頃にはきっちり腰に来ている。今日、動かした機材を元に戻して、年内最後の撮影のあとは、痛む腰をかばいながら、掃除の続き。レフ板も塗って、ハッポーは痛んだところを切って、バック紙も整理しないと。ジェネとヘッドも清掃してようやくお仕舞いかな。
ではみなさん、良いお年を。