モデルⅡ。
前に、動けないモデルは困る、と書きましたが、もう一つ、大事なのが、こちらのタイミングと息が合う、ってことがあります。
普通、撮影の時、こちらがハイ撮りますよ、と言わなくても、モデルが動いてポーズを決めて、はいここで撮ってね、というタイミングを出してくれます。具体的には普通にうつむいて立っている状態から、少し足を出してそちらに体重をかけ、ぐっと腰を入れながら顔をこちらに向けつつ笑顔でカメラを見る、この時には振り上げた腕の指先まで奇麗なポーズが完成してます、この瞬間に私がパチリとシャッターを切る、と、パンと光って、ストロボのチャージ音がピロピロピロと鳴り、チャージの間に次へ動いて、チャージ完了すると、ポーズができている、という具合です。こちらが遅かったり速すぎたりすると、ズレたり、ブレたり中途半端な顔や姿勢になります。もちろん、ポージングでこうして欲しいとか、商品のここを見せたいからこうしてとか、いろいろリクエストしますが、一番はモデルさんがここで撮ってねと言うタイミングをこちらが外さない事です。だから基本、目つぶりや変顔、ブレもありません。この息がばっちり会うと気持ちよくスムーズに撮影出来ます。やっているうちにだんだん呼吸が合うという事もありますが、動けない人とやると疲れるのは、これがあるからです。最初のチラシのスタジオでは、商品(服)一アイテムにきっかりフィルム三枚しか撮らず、それもすべて違うポーズでこなし、どれもちゃんと使えて、そのうえ嫌な顔一つせず丸一日、何十点も撮影とかやってました。チラシの女王って言われてた方で、ですけど。
撮られることのプロである彼、彼女らは毎日(かどうかは知りませんが)鏡の前で、どう見せたら奇麗な姿勢になるか、真っすぐか、自分の顔の、体のどこが魅力的か、それはどの方向か、ちゃんと見て、良く知ってます。動きに合わせた手や指先の表現、つま先の向き、角度、背中からお尻のライン、魅力的な唇の開け方、目線、力強い脚の開き加減、細くなる足の重ね、クシャクシャの笑顔の時でも目が大きくなる方法も知っています。そういう修練を積んだ人に、対価としてギャラを払うので、出来ないと怒るわけです。
ついでに、北欧系の色白のモデルさんは日本人と違って日光が眩しくて目が弱いです。ドピーカンの昼間の屋外では、眩しすぎて目を長く大きく開けていられない、無理するとそのうち涙がボロボロ出てきて撮影中止になります。日中は向きとか時間を考えて撮影しないと、大変です。まあ、みんなサングラスで守ってますけど。逆にアフリカ系の色黒な方々は、わりと露出を開けないと肌のディティールが出て来ません。18%グレーが顔の反射率とほぼ同じ、と言うのは、この場合あてはまらないのです。同時に、アフリカ系、欧米系とアジア系と一緒に撮影ともなると、細かく照明で揃えて行かないと大変です。同じように、アジアの黒髪と欧米の金髪銀髪も然り、です。
私が記念写真など一般の方を相手に仕事をしない(出来ない)のは、人見知りで口下手ってこともありますが、本当は、奇麗に写してさしあげようという我慢や能力がないからなのです。