肖像権。
近ごろは、取材などで撮影する場合、承諾書を書いてもらうことが普通になった。昔、たしか、90年頃だったか、出来たばかりのちょっと変わった高層ビルでのこと。雑誌の取材で「空中庭園」を撮影して、外からも撮ろうとなって、下から見上げるようなところから狙っていたら、警備員が飛んできて、肖像権がどうたらこうたらで、撮影するなとかなんとか言ってきた。もちろんこちらは許可をもらっているので、その旨伝えたら、確認します、と。そんなことを言われたのは初めてだったので、ちょっと驚いたことがあった。もちろん、人ではなく、建物のパブリシティ権だったのだけど。他にも、大阪のドヤ街のお店取材で、昼から飲んでいる明らかにあっち関係の人に、写すなよと言われたり(もちろん撮りませんが)することもあったが、まあこれは当たり前の話。
基本的に仕事で撮影する時は、許可がないとしません。遊びに行った先で、個人の楽しみでカメラを構えるのと違い、仕事として撮影するんですから。人物も同じで、店舗などのお客さんでどうしても写りそうな場合は、許可をもらって来て、と編集やDの方にお願いしてます。一人でもダメと言われたら、帰るまで待つか諦めます。時々、ちょっとこそっと撮ってよ、と言われるのですが、必ず許可をもらってきて、と言うようにしてます。めんどくさいやつ、と思われようが、これだけは譲れません。とは言うものの、例えばショッピングセンター館内とか、街の風景の撮影で、誰もいないのは変だ、という事もあります。こういう時は三脚を据えてスローシャッターでブラすか、後処理で胡麻化すか、選択します。もちろん、どのくらいの大きさでどんなふうに使うか、ってことが大いに影響しますけど。今は、映画やTVで群衆のシーンでも全部仕込み、だそうですね。後々まで問題を抱えたまま、よりは良いのかも。
30年ほど前、ステージ写真を撮っていた頃、あるアメリカのロックバンド(誰かは忘れた)の撮影で、許諾書みたいなものにサインさせられたことがある。英文なので内容はほとんど、いや、ぜんぜんわからなかったが、レコード会社の人によると、どうも私的に使用しない、二次三次もダメ、つまりその雑誌以外に撮った写真を出すな、と。出したら訴えるよ、って書いてあるらしい。もちろん、サインした。日本人ではあの「教授」のステージ撮影でも同様の書類にサインを求められたので、さすが!と思ったもんです。まあ、あっちじゃ普通なんでしょうね。なにかアメリカのTVドラマで、主人公のカメラマンが、道行く人を捕まえて、もちろんヒロインの見目麗しき女性、だけど、撮影しまくって(その後結ばれるというような陳腐な内容だが)その時に、肖像権に関する承諾書みたいなのをカバンから出して、サインしてもらっている場面があった。たぶん90年頃のTVドラマだったと思う。その頃、こっちじゃ口約束だけだったり、著作権もはっきりしないままだし、いろいろ二次使用とかも勝手にされたりするのが普通だったから、きっちりしてるな、とは思ったけど。その後、こっちでも全てを文書で残すような感じになって、あれこれ、サインしたり、勝手なことしたら知りませんよ、と脅されたり、数千円の印紙代がかかったり、それはそれでめんどくさいなと思ったりしてます。