想像と創造。
何度か請われて、断り切れずに写真撮影のコツみたいなタイトルで、学生さんだったり起業をしようとしている人たちだったり、趣味の人たちだったりの前で、お話をしたことがある。
基本的な操作方法とか、カメラの仕組みは、めんどくさいので端折って、撮影しようとするときにどう考えるかに絞った。
雑誌などで、旅取材の時、このお店の外観や内観を撮って、と言われたら、まず、実際に読者が旅行で来た時に、あ、ここやん、ってわかるのは何処か、どの範囲か、どの部分か、どの角度か、目でみて想像する。で、撮ってみる。いやいやまてよ、ひょっとしたらあっち側に回って見たら、ここより、もっといいかもしれない、と想像し、移動する。これをこれ以上はいいところを見つけられない、くらいまで繰り返す。同じように観光名所の眺めの良いところで、定番だけど撮影してと言われる。見る。考える。ここのどこが名所たる所以なのか、どこに惹かれるのか、雄大に見える理由は、などと考える。想像する。見つけられたら、それを生かせるアングルは何処か、どこから撮るか、あの階段の上か、もっと寄ってあの崖ギリギリか、想像する、行ってみる、カメラを覗いてみる。思うような景色だったか、違うならそればどこか、想像する。ただし、コレは自分の作品ではないから、太陽や天候という条件はほぼ考慮に入れられない。お日様が雲から出るまで、とかはあっても。取材モノは時間の制約がある。その中で最大限の事をする。アマチュアな皆さんにはその制約がないから、何度でも、日を変えて、立ち位置を変えて、高さを変えて、時間を変えて「想像しながら」トライしてみて欲しい、と。
昔から夫婦で旅行に行っても、カメラを持って行かないので、ほとんど写真が無い。カミさんにどうしてか、と問われたことがある。もしカメラを持って行って実際に撮ろうとすると、忽ちいらぬ考えがむくむくと沸き起こり、あそこのゴミ箱をどかしたい、あの人がはけてから、もう少し先のほうが開けていて良いかも、などと思いだし、もう止まらない。そして、はたと気が付く、これノーギャラじゃんか、って。そうなるのが嫌で持って行かなくなった。
でも、iPhoneを持つようになり、安いSEとかだと何も出来ないことに安心してアレコレ撮るようになった、ここ数年。撮ろうと思ったときに、ポケットから出して、あれこれ考えず、すかさず撮れるのはとても気持ち良いことです。歳とともに、良い写真撮ろうとか、カメラマンなんだから、といろいろ考えなくて済むようになりました。
てなことで、そんな私でも仕事モードでは、最大限想像力を働かせ、いろいろ考えます。中にはあまり考えなくてもパッと閃く人もいるんでしょうけど、私のような凡人は必死で考えます。それでも、考え足りないから一流にはなれないのです。