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詩空間とくしま(Poetry Space Tokushima)vol.3


KOTONE (ただとういち)

ドアを
開けると
オーママと
チーママが
迎える

わが家に
帰ったような
なつかしい
和風スナック

親から子へ
そして孫へ
伝えることは
ひとつ
それは
“まごころの笑顔”

令和の
時代の
やすらぎ空間


だれか (猫)

わらっても
おこっても
ないても
そばにだれもいないと
こころは さむくちぢこまる

わらったとき
おこったとき
ないたとき
そばにだれかいると
こころは あったかくふくらむ

しんと 
だれかがそばにいてくれる
それだけでいい


ジジイとは言わせない (英田はるか)

ほんの小さな段差につまずいてしまっても
ジジイとは言わせない
AKB48のメンバーの顔が同じに見えても
ジジイとは言わせない
「あれじゃあれじゃあれあれ」を連発しても
ジジイとは言わせない
加齢臭をカレー臭と聞き間違えても
ジジイとは言わせない
寅さんのおいちゃんのように鼻眼鏡かけても
ジジイとは言わせない
「よっこいしょ」と立ち上がってしまっても
ジジイとは言わせない
病気と薬と年金の話題でため息ついても
ジジイとは言わせない
スマートフォンばかりいじっているガキには
ぜったいにジジイとは言わせない
人生百年 まだまだケツの青い若造です
夢一杯の前途洋々たる六十七歳でございます


しがない世界 (あわや詩朋)


夢から覚めたら 琵琶湖が無かった
当然だ しがない世界だったのだから
一番広い湖は 霞ヶ浦
その次はサロマ湖だよと ○○直哉は言った
レイクの方が 好きなんですよ だって 
シーがない世界ですから (城崎にて)

さ行は「さすせそ」と書き
た行を「たちってと」と書く事に
もはや なんの疑問も感じなかった
浦安にあるのは ディズニーランドのみ
葉巻を買おうにも 葉巻はなく
音楽はドレミファソラド ABDE.etc

歯がない 総入れ歯の婆さん
師がない 生徒だけの中学校
9-5に 正解のない数学
その時 詩人は世界の中心で
哀を叫ぶことしかできなかった!
しがない世界じゃ詩が書けないじゃないか!

すべてが 夢の世界での出来事だった
しかし 世界が琵琶湖を 取り戻した瞬間
しがない世界は 夢の世界に別れを告げた
しは全て セクシーであるべきだと叫んだ
しんじろーは 翌日死んだ しかし 詩人は
死は存在しないと語った 量子化学の世界で

夢から覚めたらやっぱり しんじろーは 
死んではいなかった 俺をしんじろー 俺は
俳句は苦手だけど ジョークなら自信がある
やっぱりしがない詩人だから しんじろーは
シーっと お静かに そろそろエッセイなど
書いてみては? いつの間にか眠りに落ちて
(※ 最初に戻る 繰り返し)

※谷川俊太郎氏の『しがない暮らし』という
表現よりインスピレーションを受けて作成。


時 (Kei anone)

時ははじめから
何も教えてくれない
きっと知っているのに

そして
一番良いという時を教えてくれる
今だよって

出会わせたり
やっと見つけたり
なぜかそこへ向かっているわたし

時というものを
誰よりも
一番よく知っているからなんだね

なぜ
あのとき出会ったの
と思ってた

お礼を言いたくなるときもある
理由が知りたいときも

でもまだ教えてくれないんだね
いつか出会える未来も
あまりにも早い
さよならの理由も


テストのうら (鈴木日出家)

何を書いてもいい
何になってもいい
先生の丸つけの及ばないところで
わたしは紙の上を跳ねて
窓の外へ飛び出す
だれかが決めた「正しいこと」を
行儀良くなぞるのもいいけど
もっと「楽しいこと」のその先に
わたしの未来はある
天井を突き抜けて
翼広げるから
真っ白い場所を
つくっておいてよ

届け、届けわたし
遥か、高いところ


屋上遊園地 (浪市すいか)

小さな小さな楽園で
広い広い空を撫で
木枯らしが通せんぼ

回る回るカルーセル
年季の入った機械音
笑い声と奏でるワルツ
かすかな泣き声すら包み
曇天に入れてく切り傷

小さな小さな楽園で
広い広い空を撫でれば
木枯らしが絡める一回り伸びた指
抱きしめられたい私をあやす


編集後記vol.3

11月9日は県出身の作家・瀬戸内寂聴さんの三回目の命日でした。寂聴さんは徳島を「文化度が低い、文学者が出ない」土地と呼びました。ですが寂聴さんは徳島県立文学書道館の初代館長として、徳島の文化振興に尽力されました。100年ほど前、寂聴さんが生まれ育った徳島は文学不毛の地に映ったかもしれませんが、今の子どもたちが大人になる10年後、20年後には、もう不毛の地とは呼ばせないように、文学の灯を掲げ続けるのが、私たち徳島現代詩協会の使命と任じて、ここに「詩空間とくしま(PoST)」を発行します。

(追記)
当協会会員でもある、うっかりさんの第一作品集『欅になれる気がしている』が好評販売中です。俳句や小説、エッセイに短歌、そして詩とジャンルレスに詰め込まれた、魅力的な詩歌文集です。ぜひみなさまもお手に取ってみてください。寂聴さん、ここにも徳島の文学の灯がほら。

 vol.3編集担当 鈴木日出家

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