妻は言った。 柚子が欲しい。 柚子が必要だ。 綺麗で高価な柚子ではなく、多少見栄えが悪くとも安価でバシバシ使える柚子が欲しい、と。 という訳で先日から近所の道の駅や農産物直売所に行き、柚子を探していたのだが全く置いていない。柚子の時期は終わってしまったのか?今シーズンの柚子は儚くも悲しく消えてしまったのか。ドクダミ茶を飲んだ後のバニラアイスの後味の様に。 だがどうしても諦めきれなかった我々は少し足を伸ばしてやや遠方の道の駅に行ってみることにした。“足を伸ばす”って言っても
午前5時過ぎのうどん屋は朝早い労働者達が無言で黙々とうどんをすする場所。これから戦地へと赴くソルジャー達が鋭気を養い、力を蓄える神聖なるサンクチュアリである。肉うどん、わかめうどん、きつねうどん、ゴボ天うどん…。それぞれが思い思いのメニューを注文し、淡々と胃袋に流し込むのだ。今日という日を戦い抜く為に。 そんな中まだ休日気分の俺がヘラヘラとした表情で陽気に注文したのはカレーうどん。この店のカレーうどんは初挑戦だ。ワクワクが止まらない。 そして単品で豚カツを注文した。カレーに
竜太郎「冬っていいよね。」 わびすけ「そう?冬が好きなの?」 竜太郎「好き。」 わびすけ「秋の方が良くない?過ごしやすいし。」 竜太郎「今そんな話してないだろ。」 わびすけ「え?俺、論点ズレてた?冬の比較対象として秋を提案しただけなんだけど。」 竜太郎「例えば彼女に『仕事と私、どっちが大事なの?』って聞かれたら困るだろ?」 わびすけ「その例えの方がよっぽど論点ズレてない?」 竜太郎「じゃあお前、冬とトマトどっちが好き?」 わびすけ「その質問は俺がトマト嫌いな
『ステラおばさんのクッキー』や『○○シェフのこだわりプリン』といった具合に、商品に個人名を付けることで特別感を演出したり、美味しさを強調したりして購買意欲を高めるという手法があるとは思うのだが、 昔見かけた『名物翁のおいなりさん』だけはちょっとどうかと思っている。
竜太郎「いや〜、おまたせ。」 わびすけ「おまたせ じゃないよ。遅いよ。遅刻だぞ。」 竜太郎「ごめんごめん。」 わびすけ「お前が誘ってきたんだろ。ご飯食べに行こうって。」 竜太郎「本当に申し訳ない。」 わびすけ「何してたんだよ。電話にも出ないし。寝坊?」 竜太郎「いやいや、寝坊じゃないんだけど、思ってた時間に起きられなくて。」 わびすけ「寝坊じゃないか。それ以外の何ものでもないじゃないか。」 竜太郎「いやいや、そうは言っても急げば間に合う時間には起きたんだよ。慌
世の中には色んな人間がいて、色んな考えがあり、色んな立場に立ち、色んな行動を取る。大なり小なり人間同士が関わり合いながら生きている以上、そういったものの違いからぶつかり、トラブルになることがある。出来ればそういう状況は避けたいし、トラブルになった場合穏便に済ませたいとは思っているが、そうもいかないことも多い。誰にだって、俺にだって譲れないものがあるのだから。 あれは俺が一人暮らしを始めて間もない頃だったと思う。 仕事を終えて乗り込んだ電車の中、無性にたこ焼きを食べたくなった
竜太郎「12月だなー。」 わびすけ「そうだな。」 竜太郎「こうやって二人で飲むの、どのくらい振りだっけ?」 わびすけ「先週飲んだから1週間ぶりじゃない?」 竜太郎「1週間振りかぁ〜。」 わびすけ「そんなにしみじみする程 久し振りじゃないよ。先週お前が刺身にわさびをつけすぎて涙と鼻水で顔面をベチャベチャにしながら死にそうになってる姿をまだ鮮明に覚えてる。」 竜太郎「忘れてくれてもいいんだぜ?」 わびすけ「そういえばさ、忘年会シーズンだけどお前の会社って忘年会するの
2022年の余白も残り僅かになってきた今日この頃。皆さん、いかがお過ごしだろうか。そして年末年始の過ごし方はお決まりだろうか。冬のボーナスはご機嫌だっただろうか。年賀状の準備はどうだろう。俺は生きてるだけで精一杯だ。 そんな過酷で平凡な日々の中、先日購入したMP3プレイヤーのお陰で日々音楽を楽しみながらジョギングしている。これがあの有名なノーミュージック・ノーライフというやつか。 買って良かった、と今回の買い物に概ね満足しているのだが一つだけ「これはどうなんだ?」と感じて
ケン「最近ずっと弁当作ってるんだ」 わびすけ「へぇすごいね。社員食堂飽きた?」 ケン「飽きた…というか……、なんか信用できない」 わびすけ「え?なに?信用?何があったの?」 ケン「………。」 わびすけ「………。」 ケン「……………。」 わびすけ「…………。」 ケン「…………………。」 わびすけ「…なに、この間は。次、俺が喋る順番だったっけ?」 ケン「うーん…なんかねー…」 わびすけ「そんなに言いにくい事なの?じゃあいいよ、無理して言わなくても。弊社の食堂
半月ほど前にスマホのBluetoothが突然機能しなくなった。全くの原因不明。 スマホを再起動しても、ペアリングの再接続を試みても、「なおりますように」と星に願ってみてもピクリとも動かない。 困った。 これではジョギング中に音楽を聴けない。 しばらくの間、ノーミュージックで近所を走っていたが、やはり味気無い。寂しさが止まらない。 仕方なく新たな音楽プレイヤーを購入することにした。 とはいっても俺は最近のその手の事情に詳しくない。何しろ音楽プレイヤーを買うのなんて、カセ