本当にしたいこと
人の好みは様々だ。
好きなことをしていいよと言われたら、スマホをいじったり、お菓子を食べたり、寝転がったりと様々だろう。
本当に好きなことをしていいよと言われたら、ベッドでぬいぐるみを抱きしめたり、段抜かしで階段を駆け下りたり、本棚の漫画を1巻から順に並べたりと様々だろう。
人の好みは様々であると同時に揺れ動く。
ベッドでぬいぐるみを抱くこと以外を禁じられたら監禁だ。
段抜かしで階段を駆け下りることのみなら昭和の鬼コーチ。
ひたすら漫画の整理をさせられたら働く環境は厳しい。
さて学校。人の好みは様々だから、やりたくない教科も当然ある。
先生。これやりたくありません。この教科なくしてください。
そう訴えられたら、嫌でもやらなくてはならないでしょ。と大人は正論で返す。なにしろ大人の役割は、こどもを社会に適応させること。嫌なことでも取り組めるようにと真顔で諭す。そう口にするたびに子どもは社会から遠ざかる。
子どもだって、目の前の大人が、この教科をなくしてくれるなんて思ってはいない。
そうだね。やりたくないときだってあるよね。でもこの教科がなくなったら先生失業しちゃうな。はは。
と返してくれれば、もう一度えんぴつを握りなおすのだ。
大人は子どもに対して、社会化と安定化の2つの役割を担っている。でも心の安定を忘れて、社会に適応させることばかり考えがち。
地盤のしっかりしていないところにビルは建てられない。
本当にやりたくないことなんて、実はそう多くはない。やりたくないことばかり口をついて出るのは、聞いてもらえる量が足りてない。やりたいことばかり口にするのは、遊び足りないのだ。
目の前の子どもの本当にしたいことを知っていますか。