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がん性疼痛とリハビリテーション

がん性疼痛とリハビリテーション
住谷瑞穂、大竹祐子、大住倫弘、小西満、阿部博昭、住谷昌彦
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION
第30巻・第12号(通巻361号)・2021年11月号 P1202-1207

Key Words:がん性疼痛、がん治療関連疼痛、運動療法、認知行動療法、仮想現実(VR)

【アブストラクト】

Ⅰ.がん疼痛からがん性疼痛
Ⅱ.がん性疼痛のADL・QOLのアセスメント
Ⅲ.がん患者の運動療法
Ⅳ.がん患者の認知行動療法
Ⅴ.仮想現実(VR)を用いた認知リハビリテーション
Ⅵ.がん性疼痛治療の意義

【内容要約】

がん患者(進行性・終末期)の70〜90%には疼痛が伴う。がん初発時より約20%が疼痛により鎮痛薬を使用しており、生命予後が年単位のがん患者でも45〜60%が、がん治療関連疼痛(化学療法誘発性ニューロパチーやホルモン療法誘発性関節痛、がん術後遷延性疼痛等)を抱える。

著明な症状進行のないがんサバイバーの30〜40%にも疼痛が残存する。その中で国際疾患分類第11版でがんそのものの疼痛に加えて、がん初発時〜がん治療に伴う疼痛も緩和ケアの対象であるという認識が高まった。

本稿ではがん性疼痛と改めて、がん自体の疼痛、それに伴う疼痛について述べられている。

がん性疼痛では良質な睡眠や食事摂取の確保、排泄の有無、整容等のADLが疼痛の重症度に加えて評価される。

これらは患者の鎮痛薬の選択や用量調整のゴール設定にも利用できる。バイタルサインの評価として疼痛が取り上げられるようになり、疼痛の数的評価尺度(Numerical Rating Scale)や視覚的尺度(Visual Analogue Scale)の数値だけではなく、ADLを基準に疼痛の重症度評価が有効的である。

また、患者の訴える疼痛の重症度とADLに乖離がないか、評価が妥当であるか、医療者の総合的評価による適切な用量の鎮痛薬の選択が必要である。しかしこれらに乖離がある場合には患者自身の不安や自己効力感の低下等の心理的要因が影響している点を評価する必要がある。

次にがん患者に対する運動療法の効果について大きく3つ述べる。

①はがん手術後の疼痛であり、ひとつに頭頸部がんに対する頸部リンパ節郭清術による副神経麻痺由来の僧帽筋麻痺が生じる。これに対しては標準的な肩関節可動域訓練を単一で実施するよりも、筋力増強訓練併用することで疼痛や上肢機能の改善示唆されている。

②骨転移患者に対し骨固定術による鎮痛や骨折、麻痺の予防を行うこともあり、脊髄転移のある患者に対する運動療法がADL改善、疼痛緩和が示唆されている。

③化学療法誘発性末梢神経障害による四肢末端痛や放射線照射部位の局所通には有酸素運動や筋力増強トレーニング等の全身運動が有効的であると示されている。

ここまでがん性疼痛に対する運動療法を列挙してきたが、認知行動療法も有効な手段の一つである。

認知行動療法を実践には初期目標は、疼痛強度の緩和とADL向上の2つを設定する。これは慢性化した疼痛の場合、2つの治療目標による効果が必ずしも得られるわけではなく、相乗作用しているため両側面の治療が必要である。

これに加えて疼痛自体が組織損傷のみによるものという認識がある患者に「問題解決型の痛みとの付き合い方」を教育していく必要がある。また患者教育基づく運動療法では、がん患者の治療開始時の全身状態に適したADL改善が初期目標として設定される。

筆者らはがん性疼痛に対する認知リハビリテーションに仮想現実(VR)を用いて開発を行っている。代表例に骨軟部腫瘍に対する四肢切断や神経腫瘍に対する神経・神経叢離断術後の幻肢痛があり、従来難治性であったが、VR治療により実際空間での健肢とVR空間での神経障害罹患肢の随意運動感覚の出現による幻肢痛の改善が得られた。

がん性疼痛が最適ながん治療の度外因子となり、がん性疼痛に対する緩和ケアが生命予後の改善に役立つことが示唆されている。

またがん治療期間の長期化に伴う加齢性の筋力低下が化学療法による副作用や生命予後悪化に関連する。

運動療法にはこれらの筋力低下を予防するけど重要な役割があり、適切な運動習慣(早歩き程度の運動を1週間に150分以上)が様々な癌の発症リスク軽減を図ることが期待できる。

【拝読させて頂き感じる点】

がん性疼痛と聞くと終末期のがん患者を想像していましたが、がん発症初期より疼痛が根深く絡み合い、患者のほとんどが症状進行に伴い難治性となっていく中で、患者自身や背景を的確に評価することが運動療法や認知行動療法をリハビリテーションとして有効に使えると感じた。

【最後に一言】

数多くのがん患者には疼痛が付き纏い、その重症度がADLやQOL低下に関連し、それらの治療効果や予防、患者自身のモチベーションに運動療法や認知行動療法が有効であることがわかります。

疼痛自体が主観的なものであり、私たちセラピストの患者理解の第一歩がこの疼痛に向き合うことであるのではないでしょうか。

執筆:本多竜也

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