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ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008)

美しくも哀しいヒューマンドラマ
数奇な運命をひたむきに生きる男の姿が深い感動を呼ぶ

幸せや不幸を経験するうちに、誰もが一度は考えるのではないでしょうか。「生きるとはどういうことなのか」。本作は、そんな根本的かつ難解な問題と真摯に向き合ったヒューマンドラマ。

80歳で生まれ、年を取るごとに若返るという数奇な運命を背負った男の生き様から、より良い人生を送るために大切なことが分かるはず。

【ストーリー】
1918年、第1次世界大戦終結に沸くニューオーリンズに80歳の赤ん坊が生まれるシーンから物語はスタート。出産と同時に母親が亡くなると、父親は老人の姿をした息子を恐れ、老人ホームの前に置き去りにしてしまいます。
しかし、幸いにもホームを取り仕切る黒人女性クイニーに引き取られた赤ん坊は、ベンジャミンと名づけられ、ホームで暮らすことになります。同じような老体と豊かな人生経験を持つ老人たちに囲まれた生活は、ベンジャミンにとって奏功します。特異な彼を偏見の目で見る者は誰もいません。
献身的な愛を注ぐクイニー、間近な死を予感しつつも穏やかに生きる老人たち、ベンジャミンを一人前の男として扱った粋な黒人紳士、そして初めての友達となった少女デイジーら、寛容な人々の心に触れたベンジャミンは、自らの運命を嘆くことなく、静かに受け入れて成長します。
しかし、驚くべきことに年を取るごとに若返り始めたベンジャミンは、自分の人生を生きるためホームから旅立つのです。

勇敢な船乗りたちとの冒険、夢をあきらめない女性スイマーとの魅惑的な恋、自分を捨てた実父とのほろ苦い再会など、さまざまな人々の生き方を通し、人生を学んでいくベンジャミンの姿が描かれます。

その数奇な人生の核となるのは、幼なじみのデイジーとの出会いと別れ。正反対に年を重ねる2人が紡ぐラブストーリーは、夢のように美しくも哀しい……。

死と向き合う少年時代を乗り越えたベンジャミンには、若返りという、さらに過酷な未来が待ち受けます。生きる喜びと辛さを抱えながら、それでもひたむきに生きようとするベンジャミンの姿に深く心を動かされます。

F・スコット・フィッツジェラルドによる短編小説を、『セブン』『ファイトクラブ』のデヴィッド・フィンチャー監督が映画化。80年にわたるベンジャミンの生涯をじっくり描き、二度と戻らない時間の残酷さと大切さを繰り返し伝えたフィンチャー監督は、これまでの作風を一変させ、一瞬一瞬を大切に生きていこうと思わせる感動作を生み出しました。

ベンジャミンを演じるブラッド・プットは、抑制をきかせ、観る者の胸に迫る名演を見せています。幼くして人生を達観したベンジャミンが静かに語る人生訓も心に染みます。

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