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【抜粋】作戦形成過程に関する研究の進展

長南政義著『新資料による日露戦争陸戦史 覆される通説』より

 従来の日露戦史は、部隊の動きを追うものであったり、史料に基づかない恣意的な作戦批判が中心であったりすることが多かった。だが、本書では、参謀の日誌や書簡などの史料を使用して、会戦計画や部隊行動が幕僚によるどのような討議を経て形成されたのか、また、作戦上の問題点がどういった理由で生じたのかという点を重視して記述を進める。その意味で、本書は、部隊の動きを中心として書かれた従来の戦史とは異なり、作戦の形成過程と作戦に内在する問題点を研究したものといえるであろう。
 政治史研究において政策形成過程の分析が研究分野として確立しているように、戦史研究においても作戦形成過程の研究がもっと進展してもよいように思われる。本書は本格的な作戦形成過程研究の嚆矢たる地位を目指して書かれた本である。

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