四手井剛正『戦争史概論』 緒言
緒 言 戦争の絶滅、永久の平和は世界人類が等しく仰望する美しい理想である。しかしながら歴史が物語る過去の事実には、有史以来いまだ真の平和はない。世界の歴史は戦争に次ぐ戦争であり、その間にある一見平和に見える時代においてすら列国の抗争は依然として休止することなく、その実情はむしろ次におこる戦争の準備とみるのが至当であると思われ、そのようにしてまた戦争は世界深化の動力であり、根幹である実作用を呈している。近代に至って、戦争の発生がますます減少している印象を与えるけれども、これは戦