PARTY 中村洋基の発想法 コアアイデアのつくりかた(ネタ帳も一部公開)
2020年1月、PARTYのクリエイティブディレクターの中村洋基が外部企業のセミナーに招待され、「コアアイデアの見つけ方」というテーマで講義をしました。本記事では、その内容の一部をご紹介いたします。
◎コアアイデアを考える前提
まず、必要な前提として、マーケティングとクリエイティブの両方の芯を捉えたものである必要があります。
●マーケティング
マーケティングは、理詰めの垂直思考とも言えます。
オリエン資料や調査データを元に、深く掘っていく思考です。
主に、
・誰に言うべきか
・何を言うべきか
を決めていきます。この部分がズレてしまうと、どんなに素敵であっても、そのアイデアは空振りしてしまいます。
●クリエイティブ
一方で、クリエイティブの発想は、水平思考です。
クリエイターが、これまでに蓄積してきた経験やアイデアストックから、定めたターゲットを動かすために、潜在的なインサイトを刺激するアイデアを生み出すことです。
マーケティングできちんと狙いが定まっていないと、面白いアイデアも刺さりませんし、逆にアイデアのストックが全然ないと、面白くないアイデアが出来上がってしまう。だから、両軸で考えることが重要なんです。
◎アイデアをストックするために
では、アイデアをストックするために具体的にどんな方法があるのかをご説明します。
例えば、海外有名広告賞のグランプリ、ゴールド、シルバー受賞作を全部見ること。
過去5年の受賞作まで遡ると、時代の潮流も含めて把握できるので、現代のPR施策や広告の最先端が分かるようになります。
Point!
ここで大事なのは、ただ見るだけではなく、
「どういうプロセス・手法でこうなったのか」(抽象化)
「自分だったらどうできるのか」(転用)
という、「抽象化」と「転用」を必ず行うこと。
実際に、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルでそれぞれゴールドやグランプリを受賞したKFCのデジタル施策、『KFC Pocket Franchise』(2019)とXbox の『The Fanchise Model』(2018)の事例を用いて、抽象化と転用について考えてみましょう。
●『KFC Pocket Franchise』
『KFC Pocket Franchise』は、各ユーザーがWeChatアカウント上にバーチャルストアをオープンし、フランチャイズ店のオーナーになってもらうというアイデアです。
●『Xbox Design Lab Originals: The Franchise Model』
『The Franchise Model』はユーザーが自分専用にカスタマイズしたコントローラーを売ることができるというアイデアです。
この2つの事例から抽象化できるポイントを整理すると、
次の3つが見えてきます。
・CtoCで2次的に売らせる
・自発的にシェアさせる
・売ると利益or承認欲求が満たされる
PARTYの、数多くのシェアを生んだ事例「バレンタインポスト」にも、同様のメソッドがありました。
『バレンタインポスト』は、インターネットの中でバーチャルのチョコを送りあえるデジタル施策で、TwitterなどのSNSと連携して、友達にメッセージとバーチャルチョコを送ることができます。(=CtoCで2次的に売らせる)
そして、もらったバーチャルチョコの量など一定の条件を満たすと、本物のチョコと交換することができます。(=売ると利益or承認欲求が満たされる/ 一定の条件を満たすため、自発的にシェアさせる)
このように、成功した事例から、抽象化したポイントを抜き出すことで、汎用性の高い視点を獲得することができます。ポイントは、「カスタマイズできる商品」というようなレイヤーではなく、ひとつ視点をあげて、アイデアを捉えることです。
◎アイデアのネタ帳
最後に質疑応答で「ストックしたアイデアを、どのように保存していますか?」という質問があり、
「メモするという行為によって、アイデアストックは記憶に刷り込まれる」
と説明のうえ、アイデアのネタ帳の一部を紹介しました。
「後から見直すとワケわからないですが、大事な部分は咀嚼されて脳内に残っている」そうです。
◎おわりに
「優れたアイデアを生み出すために、既存のスキルとは違う専門性を掛け合わせた"特化型人材"になると、個人のキャリアにもチームにも大きなプラスになります。理由は2つ。
ひとつは例えば、「プランナー」で100万人に1人の実力を持っていても、ナンバーワンにはなれないわけです。だけど、「エンジニア」とか「デザイナー」とか「メディアに強い」など、別の1000人に1人くらいのスキルがかけ算されたら、その人はオンリーワンのレア人材になるわけです。
もうひとつは、チームプレイ。「全員プランナー」という、同じようなスキル・責任範囲を持つ人で構成されたチームよりも、それぞれ違った専門性を持ったチームの方が、お見合いをせずに、プロジェクトを高め合いやすくなります。
アイデアの種を、さまざまな確度から高め合い、検証し、削ぎ落としていくと、「企画」になってゆくのだと思います」
今回、ご説明したお話をより詳しく噛み砕いて理解したいという方に、中村洋基おすすめの本があります。
「アイデアのつくり方」/ ジェームス・W・ヤング
短くてすぐに読み終えることができるので、ぜひ手にとってみてください。
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