「フランソワ喫茶室」は変わらない。
フランソワ喫茶室を知っているだろうか。京都の河原町からほど近い場所にあり、白を基調とした外観や年季の入った扉はいつも変わらず存在感を放っている。
11月も終わりに差し掛かり、町中がクリスマスソングに包まれる中フランソワに向かう。午後17時。少し入り辛い気持ちを抑え、重厚感のある扉に手を触れ中に入る。其処には豪華客船のホールをイメージとして作られた店内が広がり、レトロなワンピースを着た女性店員が席へ案内してくれる。このフランソワでは女性店員は皆このワンピースを正装としている。フランソワの魅力の1つであると言えるだろう。トレーに多くのコーヒーを乗せてせわしなく店内を歩き周っていた。
店内はオレンジの仄暗い照明が辺りを照らし、アンティーク調の椅子やテーブルを彩る。いつも優雅なクラシックが流れ、私が訪れた時はエリックサティが流れていた。好きな曲が流れていると何とも言えない高揚感になる。
椅子に座るとお冷を出されコーヒーを注文する。一杯600円。貧乏学生には痛い値段だが、フランソワでしか味わえない雰囲気を楽しみに来てるので惜しくはない。来るたびに自分と財布にそう言い聞かせている。
フランソワのコーヒーはブラックとフレッシュクリームの2つを選べるのだが、是非フレッシュクリームを選んで欲しい。甘く白い泡に包まれた中を角砂糖が沈んでいく姿は、時間がゆったりと感じコーヒーの苦味が抑えられ飲みやすくなる。
ティーカップの置かれた机や店内をぼーっと眺めていると、周りには観光客や地元の人々がこれまた年季の入ったテーブルを挟んで談笑している。言葉が混ざり合い、異国の言葉のように聞こえて、一瞬此処が何処だか分からなくなる。そんな不思議な気持ちになるのもフランソワの魅力だろう。
コーヒーを飲み干し、伝票を持って会計をする為に入り口へ向かう。髪を後ろで束ねた女性店員が笑顔で接客してくれる。外に出ると辺りはすっかり暗くなって、フランソワの入り口に飾られたランプが爛々と夜を照らしていた。左手に付けた時計を確認したら1時間が経過していた。扉の中から見える店内をもう一度見た。あのコーヒーに沈んで行った角砂糖を思い出しながら、すぐに冷える手をコートのポケットに入れてバス停へ向かう。またクリスマスソング聴いて私はフランソワで流れたクラシックの方が好きだなと感じた。あの雰囲気や空間がもう懐かしくなっている。
もしも河原町に来る機会があったら是非フランソワ喫茶室に訪れて欲しい。何年経ってもフランソワ喫茶室はいつでも私たちを受け入れ、あの甘いコーヒーの匂いや味は変わることはない。
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