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【自主性・主体性ある会社・組織・チームの作り方】第6回 自律型組織における階層と役割

この記事では、中小企業(特に成長を目指すベンチャー企業)として、マネジメント・組織作りをどのように行っていくべきなのか、実体験と実践内容をもとに考えていきたいと思います。

さて、前回(第5回 情報共有はなぜ大事か?「何を」「どこまで」情報共有すべきか?)の最後にも書いたとおり、今回は社内の【階層】と【役割】について解説します。

ティール組織の特徴として「階層がない」と説明されることが多いのですが、実際のところ、ティール組織を筆頭とした、いわゆる自律型組織として取り上げられる会社を見ても、役職による階層を設けている会社の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

弊社は「ティールっぽい組織」を目指していますが以前は、取締役とそれ以外(一般社員)という実質的な2階層で経営・運営していました。
後述するように現在は実質的な3階層または4階層となっています。
確かに、ティール組織など自律型組織では、そうではないヒエラルキー組織の会社より階層が少ないのは事実かと思います。

あくまでも、階層を少なくする・減らすことが目的ではなく、自律型組織を目指すと階層が少なる一方で、各社員の役割をどのように考えるのかが重要になります。
本稿では、この論点について考えてみましょう。

それぞれの役割とは?


■東証一部上場でも階層がない!?

私はティール組織を筆頭にした自律型組織を研究題材の1つとしていますので、特に有名な企業で、かつ自律型組織として成功している会社を常々ウォッチしています。

上場時からホラクラシー型組織(ティール組織の一類型)として有名なのが「アトラエ」(東証一部上場)です。社長のインタビューが非常に参考になります。

「社員に誇りとやりがいを。役員が人事権を手放した究極のホラクラシー型組織──株式会社アトラエ」

アトラエ社は東証一部上場(上場時はマザーズ)でありながら、「取締役とそれ以外」の2階層しかなく、また2階層になっている理由は、会社法上取締役を任命しないとダメだから、という極端ですが、非常に明確なポリシーで経営をしています。

また、弊社が常に参考にし、社員とともに研修を受講したこともあるティール組織として「サイボウズ」(東証一部上場)があります。
サイボウズ社については、経営陣が多数の書籍を出版してる、またメディアへの露出も多いので、ティール組織として広く認知されているでしょう。

サイボウズ社については、昨年末に私が山田副社長(当時)と対談した際に、「会社を経営していくにあたって、現実的に階層は必要」とおっしゃっていました。

さらに、自律型組織の最先端と言われる「星野リゾート」
私は星野社長の著書をすべて読んでおり、かつ何度かセミナーも受講しましたが、星野リゾートには明確な階層が存在します。

書籍などにある「ティール組織は階層がない」は、現実と完全に一致しているわけでもないようです。


■階層を作る動機が違う

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東証一部上場など大企業と仕事させていただくと、さまざまな肩書を目にすることになります。
私が以前から疑問に感じるのが「部長代理」「副部長」「次長」です。
いまだに、どの肩書の方が上で、具体的にどのような権限があるのかわかりません。

このように、さまざまな肩書がある・生じる理由は、部長などの明確なポスト・肩書は限られている一方で、年功序列型賃金を維持するために、何らかの肩書をつけて給料を上げる理由にするということかと理解しています。

部長のポストは埋まっているが、昇進昇格をさせなければ給与を上げられないことから、「部長代理」「副部長」「次長」などのポストが生まれたのでしょう。

「部長代理」「副部長」「次長」とは部長未満の権限であるが、課長以上の権限ということであって、明確な権限はないのでしょう。
もはや、目的と手段が入違っていて、組織を維持するために階層とポスト・肩書をムリヤリ作っているようにしか思えません。

自主性・主体性ある会社にするために大事なのは、先に階層や肩書を作るのではなく、仕事・業務をしていく中で、まず各社員の役割を明確化すること、その次に必要であれば、それに応じた階層を作るという順番です。

上述のとおり、弊社はもともと「取締役とそれ以外(一般社員)」という2階層で経営を行ってきましたが、業容が拡大するにつれ、取締役が行っている業務がほぼ一般社員と変わらないオペレーションになっていたことから、取締役本来の役割である、管轄する事業内の最適化に注力させるため、取締役と一般社員の間にマネージャーを設置し、現在は3階層になっています。

これはあくまでも、階層を増やしたかったのではなく、本来の役割を果たせない階層(取締役)が出てきたことから、役職による役割を再定義することで、結果として階層が増えたという流れです。


■伝言ゲームにしない

多くのヒエラルキー組織では暗黙知として、

「一般社員は(直接の上司である)マネージャーに相談しなさい」
「マネージャーは先に(直接の上司である)取締役に確認すること」

など、階層を飛ばしたやり取りは実質的に禁止されている会社が多いはずです。

本来、階層とは役割の違いにすぎません。その一方で、階層にかかわらず、会社が良くなる・顧客満足度が上がる施策など、全員が直接意見を出し合える・指摘しあえる組織にしなければ、社員の自主性・主体性は生まれません。

弊社では、社内のコミュニケーションをチャットワークをベースとしていますが、階層の違いによるグループは少なく、私(社長)も情報共有を必要とするグループには参加していますし、階層にかかわらず直接意見・質問が飛び交います。

階層が増えると、どうしても上から順番に情報が降りてくる、もしくは下から意見が集約されて上がってくる構造になりがちですが、このような伝言ゲームは往々にして、その間で勝手な翻訳・意訳さらには忖度がなされ、正しい情報・意見が共有されることはありません。

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階層が増えたとしても、いかに伝言ゲームにしないツールの利用と、カルチャーを維持することが重要になります。


■役割の違いを定義する

「階層とは役割の違い」であることはすでに書いたとおりですが、弊社内ではザックリと下記の役割=見通し期間と考えています。
(正確には取締役の中で、さらに社長も区分しています)。

●社長:3年超(組織作り・新規事業の発案・ファイナンス・業務提携など)
●取締役:1年(今期の目標に対するコミット・全体最適の実現)
●マネージャー:現在~3ヵ月を見通した業務(一般社員の業務最適化)


一般社員には、今やるべきことを如何に付加価値高く業務実行するかに専念させていますが、こうなると目の前のタスクを終わらせることしか考えなくなりがちです。
そこで、弊社ではマネージャーという階層を作り、マネージャーが業務内容を「目的・目標から逆算」する役割を課しています。遠い未来を見ている取締役と、近視眼的になりがちな社員をどのようにリンクさせていくのかがマネージャーの役割ということです。

なお、弊社のマネージャーは、一般社員からの立候補制で、立候補者がプレゼンを実施、取締役まで含めた全員投票によって選出されています。

多くの企業では、昇進・昇格を上司の裁量により選出していますが、実績ある一般社員がマネージャーに向いているという保証は何もありません。
役割が違えば向き不向きは当然変わりますし、成果の出し方も違ってきます。

さらには、マネージャーの役割を全員が認識したうえで、全員がマネージャーになりたいと思っているわけでもないでしょう。


■最後に・・・

多くの企業がヒエラルキー組織として、階層・役職が多いばかりで、実質的な役割と一致してない、もしくは自身が求められる役割を認識できていないケースが多いのかと思います。

さらにいえば、役割自体が明確にされていない・本人が正しく認識できていないことから、自主性・主体性が生まれる環境にないともいえます。

自主性・主体性とは究極的に、「自分は歯車の1つではない」「自分がいなければ会社はうまくいかない」と各社員が思っているのかに尽きると考えています。

そこで次回は、会社内の全体最適・適材適所をどう実現していくのかについて取り上げます。
ぜひ、引続きお読みください。


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