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透析:高齢者では在宅で過ごす日数減少する可能性

透析一辺倒は考慮すべきということだろう。腹膜透析などはどうなのだろう?移植が進んでいるはずのUSでの透析選択は当然ながら日本とは背景が異なるので、慎重に考慮が必要だろう

Dialysis May Not Be Worth the Trade-Off for Older Adults | Nephrology | JAMA | JAMA Network

「Annals of Internal Medicine」に掲載された研究によると、慢性腎不全を患う高齢者は、予想されるほど透析の恩恵を受けていない可能性がある。研究者たちは、患者の寿命が約1週間延びるかもしれないが、病院にいる時間が増えることを発見した。

研究者たちは、2010年から2018年までの米国退役軍人省の医療記録を調査し、65歳以上の患者20,400人以上を対象とした。全員が慢性腎不全を患い、推定糸球体濾過率(eGFR)が12 mL/分/1.73 m²未満であり、移植の評価を受けていなかった。これらの電子記録データを使用して、研究では患者を2つのグループに分け、透析をすぐに開始したグループと、症状を緩和するための医療管理を続けたグループで、ランダム化臨床試験をシミュレートした。透析を始めるまでに中央値で3年待った患者と比較して、すぐに透析を開始した患者は平均で9日長く生存したが、自宅ではなく病院や診療所で過ごす時間が14日増えた。透析を一度も開始しなかった患者は、すぐに透析を開始した患者よりも77日早く亡くなったが、自宅で過ごす時間が2週間長かった。臨床医は透析をすぐに勧めたくなるかもしれないが、研究結果は、透析を開始することによるこのトレードオフに影響を与える臨床的要因を考慮し、透析開始の期待される結果が個人の価値観や目標に合致しているかどうかを検討すべきだと示唆していると、研究者たちは記している。


Montez-Rath, Maria E., I-Chun Thomas, Vivek Charu, Michelle C. Odden, Carolyn D. Seib, Shipra Arya, Enrica Fung, Ann M. O’Hare, Susan P.Y. WongとManjula Kurella Tamura. 「Effect of Starting Dialysis Versus Continuing Medical Management on Survival and Home Time in Older Adults With Kidney Failure」. Annals of Internal Medicine 177, no. 9 (2024年9月17日): 1233–43. https://doi.org/10.7326/M23-3028.

背景:
腎不全を患い、移植の紹介を受けていない高齢者に対して、医療管理は透析の代替手段である。

目的:
推定糸球体濾過率(eGFR)が12 mL/分/1.73 m²未満で透析を開始した高齢者と、医療管理を継続した高齢者の生存率と自宅で過ごす時間を比較すること。

デザイン:
ターゲット試験エミュレーションを使用した観察コホート研究。

設定:
2010年から2018年にかけての米国退役軍人省。

参加者:
慢性腎不全を患い、eGFRが12 mL/分/1.73 m²未満で、移植の紹介を受けていない65歳以上の成人。

介入:
30日以内に透析を開始するグループと、医療管理を継続するグループを比較。

測定項目:
平均生存期間と自宅で過ごした日数。

結果:
20,440人の成人(平均年齢77.9歳[標準偏差8.8])のうち、透析を開始したグループの透析開始までの中央値は8.0日であり、医療管理を継続したグループでは3.0年であった。3年間の期間で、透析を開始したグループの生存期間は770日であり、医療管理を継続したグループの生存期間は761日であった(差、9.3日[95%信頼区間、−17.4~30.1日])。医療管理を継続したグループと比較して、透析を開始したグループは自宅で過ごす時間が13.6日少なかった(信頼区間、7.7~20.5日少ない)。透析を完全に行わずに医療管理を続けたグループと比較して、透析を開始したグループは生存期間が77.6日長く(信頼区間、62.8~91.1日長い)、自宅で過ごす時間が14.7日少なかった(信頼区間、11.2~16.5日少ない)。

制限事項:
適格性の段階で症状評価が行われていないため、未測定の交絡因子が存在する可能性がある。女性および退役軍人以外への一般化の限界がある。

結論:
eGFRが12 mL/分/1.73 m²未満になったときに透析を開始し、移植の紹介を受けていない高齢者は、寿命がわずかに延びたものの、自宅で過ごす時間が減少した。

主な資金提供元:
米国退役軍人省および国立衛生研究所。

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