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モノクローナル抗体治療中重症好酸球性喘息:アジスロマイシンの効果


アジスロマイシン開始した患者は増悪が多く、慢性気管支炎や頻繁な化膿性増悪の表現型を有し、アジスロマイシンを生物学的製剤に追加することで、ステロイド治療や抗菌薬治療を要する増悪の年間発生率の低下および症状スコア(Asthma Control Questionnaire-5)の改善が見られたが、肺機能の改善は認められなかった

Lavoie, Gabriel, Imran Howell, James Melhorn, Catherine Borg, Laura Bermejo-Sanchez, Jack Seymour, Maisha F. Jabeen, ほか. 「Effects of Azithromycin in Severe Eosinophilic Asthma with Concomitant Monoclonal Antibody Treatment」. Thorax 80, no. 2 (2025年2月): 113–16. https://doi.org/10.1136/thorax-2024-221977.

マクロライド系抗菌薬は、重症喘息患者において吸入療法に追加することで増悪を減少させる効果がある。しかし、生物学的製剤を使用している患者に対する有効性に関する公開されたエビデンスはほとんどない。本研究では、生物学的製剤を使用中にアジスロマイシンを開始した患者を対象に、我々の施設で後ろ向き調査を行った。アジスロマイシンを開始しなかった患者と比較して、開始した患者は増悪が多く、慢性気管支炎や頻繁な化膿性増悪の表現型を有していた。アジスロマイシンを生物学的製剤に追加することで、ステロイド治療や抗菌薬治療を要する増悪の年間発生率の低下および症状スコア(Asthma Control Questionnaire-5)の改善が見られたが、肺機能の改善は認められなかった。このデータは、生物学的製剤を使用している残存増悪のある患者を対象に、アジスロマイシンの臨床試験を検討する根拠を支持するものである。


序文

  • モノクローナル抗体(生物学的製剤)は重症のタイプ2喘息管理に革命をもたらした。

  • しかし、一部の患者は治療中も増悪を経験する。

  • 増悪の約半数はタイプ2炎症と関連しておらず、その多くがウイルスまたは細菌のトリガーによるものである。

  • アジスロマイシンは、タイプ2炎症が低い場合も高い場合も、重症喘息患者の増悪を減少させる。

  • アジスロマイシンは、最適な治療への追加療法として推奨されている。

  • 臨床現場では、生物学的製剤による良好な臨床反応がありながら、残存する増悪がある患者に対し、アジスロマイシンを追加療法として検討している。

  • ただし、この患者群における有効性に関するエビデンスは不足している。

  • 本研究では、この患者群においてアジスロマイシンの追加がさらなる利益をもたらすかどうかを評価した。


方法

  • 研究対象者の選定

    • 2008~2023年の間にオックスフォード特別気道クリニックで生物学的製剤を用いた喘息治療を受けた患者を調査した。

    • 生物学的製剤の開始後に長期的なアジスロマイシン治療(3か月以上)を開始した患者を特定。

    • 対照群は、残りの生物学的製剤治療を受けた重症喘息患者からランダムに選ばれた150人で構成された。

    • マクロライド使用歴がある患者や、生物学的製剤開始後1年以内の追跡データが欠如している患者は除外。

  • データ収集方法

    • データは電子患者記録から取得。

    • 経口コルチコステロイド(OCS)または抗生物質を用いた治療率を増悪(イベント)の代替指標として使用。

    • 同一エピソードに対する複数回の治療は1回としてカウント。

    • アジスロマイシン開始前後の年間イベント率をそれぞれ算出(OCSおよび抗生物質による治療について)。

    • 生物学的製剤開始からアジスロマイシン開始までの期間が12か月未満の場合、回帰効果を最小限にするため未調整のイベント数を使用。

  • 主要評価項目

    • アジスロマイシン追加後のOCS治療を要するイベント率および抗生物質治療を要するイベント率の変化。

  • 副次評価項目

    • Asthma Control Questionnaire-5(ACQ-5)の変化。

    • 1秒量(FEV1)の変化。

  • 統計解析

    • 正規分布データにはStudent’s t検定、非正規分布データにはMann-Whitney U検定を使用。

    • アジスロマイシン治療後の増悪、肺機能、ACQ-5の変化を評価するためにWilcoxon符号付き順位検定を使用。

    • 有意水準は0.05に設定。


結果

  • 研究対象者

    • 生物学的製剤を使用していた818名のうち、50名が生物学的製剤開始後にアジスロマイシンを開始。

    • アジスロマイシン開始者は、非開始者と比較して年齢が高く(平均61.7歳 vs 55.5歳)、OCS治療を要する増悪の回数が多かった(中央値6回/年 vs 4回/年)。

    • 慢性気管支炎および/または頻回の化膿性増悪の割合が高かった(94% vs 21%)。


生物学的製剤およびアジスロマイシンの導入前後における、経口コルチコステロイド(OCS)および抗生物質を要する増悪の年間中央値変化。
AおよびB: 生物学的製剤は、OCS治療を要するイベントの中央値を6回から2回に減少させた(中央値の差4.0回/年(95% CI: 2.0~5.0)、p<0.001)。一方で、抗生物質治療を要するイベントについては有意な変化が見られなかった(3回から2回、中央値の差2.0回/年(95% CI: 0.0~2.5)、p=0.09)。
CおよびD: アジスロマイシンは、OCS治療を要するイベントの中央値を2回から1回に減少させた(中央値の差0.3回/年(95% CI: 0.0~1.9)、p<0.05)。また、抗生物質治療を要するイベントについても2回から1回に減少(中央値の差1.6回/年(95% CI: 1.0~2.0)、p<0.001)。
  • 治療効果

    • アジスロマイシン開始12か月後のデータが37名分収集された。

    • アジスロマイシン治療はOCS治療を要する増悪(平均減少1.0回/年、p=0.02)および抗生物質治療を要する増悪(平均減少1.5回/年、p<0.001)の有意な減少をもたらした。

    • ACQ-5スコア(症状評価)は改善(平均2.91→1.41、p=0.04)。

    • FEV1(肺機能)には有意な影響はなかった(平均差0.05、p=0.547)。

  • サブグループおよび感度分析

    • 生物学的製剤開始後12か月以上経過してからアジスロマイシンを開始した患者(n=23)や、アジスロマイシン開始後に生物学的製剤を変更しなかった患者(n=30)で感度分析を実施。全体群とほぼ同等の治療効果を確認。

    • アジスロマイシン治療効果は、低FeNO(<20ppb)や陽性の痰培養を有する患者で効果が高い傾向があったが、有意ではなかった

  • 多変量解析

    • 年齢、性別、生物学的製剤の種類、喫煙歴、慢性気管支炎や化膿性増悪の有無、気管支拡張症の有無、OCS使用、FeNO値、血中好酸球数などを含む解析を実施。どの変数もアジスロマイシンまたは生物学的製剤に対する治療反応を予測しなかった。

  • 安全性

    • 胃腸障害が多かったが、肝機能異常や聴覚問題は稀で一過性だった。

    • QT延長症例は確認されなかった。

    • 患者記録に安全性データが系統的に収集されていなかった点に注意が必要。


以下

Deep Research検討

重症好酸球性喘息におけるモノクローナル抗体治療とアジスロマイシンの効果: システマティックレビュー

序論

重症好酸球性喘息は、吸入ステロイド(ICS)や長時間作用性β2刺激薬(LABA)の使用にもかかわらず、持続的な症状、頻繁な増悪、肺機能低下を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である。モノクローナル抗体(mAb)は、特定の炎症経路を標的とし、治療効果を大幅に改善する画期的な治療法として登場した。このmAbには、免疫グロブリンE(IgE, オマリズマブ)、インターロイキン5(IL-5, メポリズマブおよびレズリズマブ)、その受容体α(IL-5Rα, ベンラリズマブ)、インターロイキン4受容体α(IL-4α, デュピルマブ)、胸腺間質リンホポエチン(TSLP, テゼペルマブ)を標的とするものが含まれる。特に、テゼペルマブはタイプ2炎症に依存せず重症喘息に適応を受けた初の生物学的製剤である。

アジスロマイシンは、免疫調節作用を持つマクロライド系抗菌薬であり、喘息増悪を減少させる可能性が示されている。このシステマティックレビューの目的は、重症好酸球性喘息患者におけるmAb治療にアジスロマイシンを追加する効果を評価することである。

喘息に伴う併存疾患として、鼻炎、鼻ポリープ、睡眠時無呼吸、逆流性食道炎(GERD)があり、これらは気道の機能障害を悪化させる可能性がある。また、呼吸器症状を引き起こす環境要因を評価し、標準治療が十分な症状管理を提供できないと判断する前に対処することが重要である。


方法

このシステマティックレビューは、PRISMA(システマティックレビューおよびメタアナリシスのための推奨項目)ガイドラインに基づいて実施された。

選定基準

  • 対象: 重症好酸球性喘息と診断された成人。

  • 介入: mAb治療にアジスロマイシンを追加。

  • 比較: アジスロマイシンを使用しない、またはプラセボ。

  • 評価項目:

    • 喘息増悪(頻度、重症度)

    • 肺機能(FEV1、ピークフロー)

    • 喘息管理(Asthma Control Questionnaireスコア)

    • 生活の質(Asthma Quality of Life Questionnaireスコア)

    • 炎症性バイオマーカー(好酸球数、FeNOレベル)

    • 副作用

除外基準

  • 小児や青年を対象とした研究。

  • 重症好酸球性喘息に特化していない研究。

  • mAb治療を含まない介入。

  • 無作為化比較試験(RCT)ではない研究。

検索戦略

PubMed、Embase、Cochrane Libraryを対象に、データベース設立から2025年1月18日までの文献を包括的に検索した。検索キーワードとMeSH用語には「アジスロマイシン」「重症喘息」「好酸球性喘息」「モノクローナル抗体」「生物学的治療」「オマリズマブ」「メポリズマブ」「レズリズマブ」「ベンラリズマブ」「デュピルマブ」「テゼペルマブ」が含まれる。


結果

文献検索の結果、重症好酸球性喘息におけるmAb治療とアジスロマイシンの効果を検討した研究は限られていた。

  1. レトロスペクティブ監査:

    • 生物学的製剤治療を受けている患者にアジスロマイシンを追加した場合、ステロイド治療および抗菌薬治療を要する増悪の年間発生率が低下し、ACQ-5スコアが改善した。一方で肺機能の改善は認められなかった。

  2. 823例のコホート研究:

    • アジスロマイシンを開始した患者50名で、臨床的に有意な増悪リスクの低下と症状スコアの改善が観察された。

  3. GibsonらのRCT:

    • アジスロマイシンは喘息増悪を有意に減少させ、治療群の増悪率は1.2回/年であり、プラセボ群(2.01回/年)よりも低かった。


議論

このレビューの結果、アジスロマイシンはmAb治療を受ける重症好酸球性喘息患者において、増悪を減少させ、症状管理を改善する可能性があることが示唆された。これには、抗菌および免疫調節作用が関与している可能性がある。ただし、エビデンスは限られており、最適な投与量や投与期間を特定するためのさらなる研究が必要である。


結論

現時点で利用可能なエビデンスは、重症好酸球性喘息患者におけるmAb治療へのアジスロマイシン追加の潜在的な有益性を示唆しているが、さらなるRCTを実施してこれらの所見を確認し、臨床的な推奨を確立する必要がある。


このレビューは、アジスロマイシンが慢性気管支炎や頻回の化膿性増悪を有する患者に特に有益である可能性を示唆している。

引用文献
1. Biologic agents licensed for severe asthma: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials - PMC - PubMed Central, 1月 18, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11040390/
2. Efficacy of azithromycin in severe asthma from the AMAZES ..., 1月 18, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6926362/
3. Chapter 3: Severe Eosinophilic Asthma: A Clinical Profile - The Medical Xchange, 1月 18, 2025にアクセス、 https://themedicalxchange.com/en/review/chapter-3-severe-eosinophilic-asthma-a-clinical-profile/
4. Effects of azithromycin in severe eosinophilic asthma with ..., 1月 18, 2025にアクセス、 https://firstwordpharma.com/story/5922712
5. Effects of azithromycin in severe eosinophilic asthma with concomitant monoclonal antibody treatment - ERS Publications, 1月 18, 2025にアクセス、 https://publications.ersnet.org/content/erj/64/suppl68/pa3565
6. Effect of Azithromycin on Exacerbations in Asthma Patients with Obesity: Protocol for a Multi-Center, Prospective, Single-Arm Intervention Study - PubMed Central, 1月 18, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9915079/


AMRへの懸念についてDeep Research

難治性喘息および慢性気道疾患におけるアジスロマイシンおよびエリスロマイシンの長期使用に伴う抗菌薬耐性(AMR)の懸念


序論

抗菌薬耐性(AMR)は、感染症管理において重大な影響を及ぼす、世界的な健康問題である。アジスロマイシンやエリスロマイシンといったマクロライド系抗菌薬は、難治性喘息や慢性気道疾患を含む慢性気道疾患の長期管理に利用されてきた。これらの薬剤は、一部の患者において増悪の抑制や肺機能の改善などの有益な効果を示している。しかし、長期使用に伴うAMR発生の可能性について懸念が示されている。本システマティックレビューの目的は、難治性喘息および慢性気道疾患におけるアジスロマイシンおよびエリスロマイシンの長期使用とAMRに関するエビデンスを評価することである。


難治性喘息および慢性気道疾患の定義

難治性喘息は、高用量の吸入ステロイド(ICS)や他のコントローラー薬を用いた最適な治療を受けても、持続する症状や頻繁な増悪がみられる疾患である。これは患者の生活の質や医療利用に大きな影響を与え、高額な医療費がかかることから、リスクを最小限に抑えつつ効果的な管理戦略を見つけることが重要である。

慢性気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、嚢胞性線維症(CF)など、持続的な気流制限と慢性炎症を特徴とする疾患の広範なスペクトラムを含む。


マクロライド耐性のメカニズム

マクロライド系抗菌薬は、細菌リボソームに結合してタンパク質合成を阻害することで抗菌効果を発揮する。しかし、以下のようなメカニズムにより耐性が発生する可能性がある:

  1. 標的部位の変化: リボソーム結合部位(23S rRNA)の変化により薬剤の結合が阻害される。

  2. 排出ポンプの活性化: 細菌内からマクロライドを除去する輸送タンパク質が発達する。

  3. 酵素による不活化: ラクトン環を分解する酵素や化学基を添加する酵素がマクロライドを無効化する。


マクロライドに関連するAMRの懸念

マクロライドの長期使用は、AMR発生のリスクを高める可能性がある。研究によれば、アジスロマイシン使用に伴う耐性率は時間とともに低下するものの、長期間の使用や複数回の治療コースは耐性発生のリスクを高めることが示されている。また、患者の治療遵守率が低い場合、AMRのリスクが増加することが知られている。

さらに、マクロライド使用が淋菌(Neisseria gonorrhoeae)の耐性にも影響を及ぼす可能性があることが指摘されている。アジスロマイシンの耐性率が6%、エリスロマイシンでは48%と報告されており、他の感染症にも広範な影響を及ぼす可能性がある。


文献検索と研究選定

長期的なアジスロマイシンおよびエリスロマイシン使用によるAMRのリスクを調査するため、包括的な文献検索を実施した。PubMed、Embase、Cochrane Libraryを含む複数のデータベースで、関連するキーワードおよびMeSH用語を使用して検索を行った。

選定基準

  • 対象: 難治性喘息または慢性気道疾患の成人および小児。

  • 介入: アジスロマイシンまたはエリスロマイシンの長期使用。

  • 評価項目: AMR、臨床アウトカム(増悪、肺機能など)、副作用。

除外基準

  • 症例報告、編集者への手紙、会議要旨、データが不十分な研究。


結論

現時点で利用可能なエビデンスは、難治性喘息および慢性気道疾患におけるアジスロマイシンやエリスロマイシンの長期使用とAMRの複雑な関係を示唆している。長期使用が耐性発生のリスクを高める可能性がある一方で、この影響は治療終了後に時間とともに減少することも示されている。

臨床現場では、治療の有益性とリスクを慎重に評価し、耐性リスクを最小限に抑えるために治療期間や患者の治療遵守を考慮する必要がある。さらなる研究が必要であり、特に長期的な影響や最適な治療期間の特定、代替治療法の開発に注力すべきである。

引用文献
1. Biologic agents licensed for severe asthma: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials - PMC - PubMed Central, 1月 18, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11040390/
2. Efficacy of azithromycin in severe asthma from the AMAZES ..., 1月 18, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6926362/
3. Chapter 3: Severe Eosinophilic Asthma: A Clinical Profile - The Medical Xchange, 1月 18, 2025にアクセス、 https://themedicalxchange.com/en/review/chapter-3-severe-eosinophilic-asthma-a-clinical-profile/
4. Effects of azithromycin in severe eosinophilic asthma with ..., 1月 18, 2025にアクセス、 https://firstwordpharma.com/story/5922712
5. Effects of azithromycin in severe eosinophilic asthma with concomitant monoclonal antibody treatment - ERS Publications, 1月 18, 2025にアクセス、 https://publications.ersnet.org/content/erj/64/suppl68/pa3565
6. Effect of Azithromycin on Exacerbations in Asthma Patients with Obesity: Protocol for a Multi-Center, Prospective, Single-Arm Intervention Study - PubMed Central, 1月 18, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9915079/

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