直近増悪歴なしでも、血中EOS数が100細胞/mm³超では、症状が持続または悪化している場合、三剤併用療法へのステップアップを検討する価値がある
ビレーズトリ:KRONOS研究
Muro, Shigeo, Tomotaka Kawayama, Hisatoshi Sugiura, Munehiro Seki, Elizabeth A. Duncan, Karin Bowen, Jonathan Marshall, Ayman MegallyとMehul Patel. 「Benefits of Budesonide/Glycopyrronium/Formoterol Fumarate Dihydrate on Lung Function and Exacerbations of COPD: A Post-Hoc Analysis of the KRONOS Study by Blood Eosinophil Level and Exacerbation History」. Respiratory Research 25, no. 1 (2024年8月5日): 297. https://doi.org/10.1186/s12931-024-02918-8.
以下、序文要約
以下は要約です。
COPDは世界的に罹患率と死亡率の主要な原因であり、経済的・社会的負担が増加している。
COPDの維持治療として、ICS/LAMA/LABAの三剤併用療法が承認されている。
GOLD 2023の報告書では、頻繁に増悪を経験する血中好酸球数300細胞/mm³以上の患者に対してICS/LAMA/LABAの三剤併用療法を推奨。
LAMA/LABA二剤療法でも増悪が続く血中好酸球数100細胞/mm³以上の患者には、ICS/LAMA/LABAへのステップアップが推奨されている。
日本のガイドラインでは、喘息を併発するCOPD患者には二剤療法が不十分な場合、ICSを含む治療が推奨されているが、喘息を併発しないCOPD患者には頻繁に増悪があり、血中好酸球数が300細胞/mm³以上の場合にのみ三剤併用療法が推奨されている。
ETHOS試験では、BGFが中等度から非常に重度のCOPD患者の中等度または重度の増悪率を有意に低下させ、肺機能も改善した。
KRONOS試験でも、BGFは肺機能を改善し、中等度または重度の増悪率を有意に低下させた。
BGFの効果は、血中好酸球数の範囲にわたり確認されており、特に300細胞/mm³以下の患者にも有効である。
KRONOS試験の事後解析では、血中好酸球数と増悪歴、COPDの重症度に基づき、BGFと二剤療法の肺機能と増悪率に対する影響をさらに調査した。
Discussion要約
以下は箇条書きの要約です。
KRONOS試験の事後解析では、中等度から非常に重度のCOPD患者において、BGFと二剤併用療法(LAMA/LABAおよびICS/LABA)の肺機能と増悪率が評価された。
これらの解析は、増悪歴がなく末梢好酸球が低い患者に対しても三剤併用療法が有効であることを示唆する初の研究である。
BGF三剤併用療法は、特に血中好酸球数100〜300細胞/mm³で、増悪歴がない中等度および重度のCOPD患者において、肺機能を改善し、中等度または重度の増悪率を低減した。
これらの効果は、幅広い好酸球数範囲(100〜300細胞/mm³)と増悪歴の有無に関わらず観察され、BGF三剤併用療法が二剤療法よりも有効である可能性を示唆している。
BGFの効果は、他の研究でも同様に確認されており、ETHOS試験やIMPACT試験でも同様の結果が報告されている。
KRONOS試験の事後解析では、過去12ヶ月の増悪歴が、観察された増悪リスクの全てを説明するわけではないことが示唆された。
日本のガイドラインでは、頻繁に増悪を経験し、好酸球数が300細胞/mm³以上のCOPD患者に対してICS/LAMA/LABA三剤併用療法を推奨しているが、KRONOS試験の解析は、好酸球数が100〜300細胞/mm³の患者にも三剤併用療法が有効であることを示唆している。
これらの結果は、ICSの使用がCOPD患者において重要であることを示唆しているが、ICSの中止による増悪リスクの増加も考慮する必要がある。
この解析にはいくつかの制限があり、特に過去12ヶ月の増悪歴がない患者のサンプルサイズが小さいため、結果の解釈には慎重さが求められる。
増悪は安定した表現型ではなく、増悪歴がある患者が翌年に増悪を経験しない場合もあるため、薬物治療の増悪抑制効果を評価する際には、この点も考慮すべきである。