メトホルミン食前服薬:GLP-1応答の増加し、血糖低下作用高い
医療サイトで見たので、備忘録として取り上げる
Xie, Cong, Peter Iroga, Michelle J. Bound, Jacqueline Grivell, Weikun Huang, Karen L. Jones, Michael Horowitz, Christopher K. RaynerとTongzhi Wu. 「Impact of the Timing of Metformin Administration on Glycaemic and Glucagon-like Peptide-1 Responses to Intraduodenal Glucose Infusion in Type 2 Diabetes: A Double-Blind, Randomised, Placebo-Controlled, Crossover Study」. Diabetologia 67, no. 7 (2024年7月): 1260–70. https://doi.org/10.1007/s00125-024-06131-6.
研究の背景
このテーマについてすでに知られていることは?
メトホルミンは、グルカゴン様ペプチド-1の放出を刺激するなど、胃腸機能を調整することによって、2型糖尿病患者における食後血糖値の変動を減少させる。
しかし、メトホルミン投与のタイミングを変えることが、2型糖尿病患者の食後血糖代謝にどのように影響するかは十分に定義されていない。
重要な疑問点は何か?
この「概念実証」研究では、標準化された十二指腸内グルコース負荷に関連して、メトホルミンによる血糖値の低下が投与タイミングによって影響を受けるかどうか、また、それがグルカゴン様ペプチド-1とインスリンの異なる応答に関係しているかどうかを検討した。
新たな発見は何か?
メトホルミン単独療法で比較的良好な血糖コントロールが得られている2型糖尿病患者において、メトホルミンを十二指腸内グルコース負荷の30分前または60分前に投与することは、グルコース注入の開始時に投与するよりも、血漿グルコース濃度の低下とグルカゴン様ペプチド-1の放出の増加の両面で効果的であった。
今後の臨床実践にどのような影響を与えるか?
我々の観察結果は、メトホルミンを食前に投与することで、食後血糖コントロールの改善効果が最適化される可能性を示唆している。
血漿グルコースレベル
空腹時の血漿グルコースレベルは、4日間の試験日間で差がなかった。
十二指腸内のグルコース注入に対し、血漿グルコースレベルは急速に上昇(時間効果:p<0.001)。
メトホルミン(Met)投与後、t = 30分からt = 120分にかけて血漿グルコースレベルが低下し、Met(−60分)が最も効果的であった。
血漿グルコースiAUC0–120minでもMet(−60分)とMet(−30分)はMet(0分)よりも大きな低下を示した。
血漿GLP-1レベル
空腹時の血漿GLP-1レベルは、4日間の試験日間で差がなかった。
十二指腸内のグルコース注入により、血漿GLP-1レベルは急速に上昇し、t = 60分でピークに達した。
Met(−60分)とMet(−30分)は、対照と比較して血漿GLP-1レベルが高く、Met(0分)よりも効果が高かった。
血漿インスリンレベル、インスリン/グルコース比、インスリン感受性
空腹時の血漿インスリンレベルは4日間で差がなかった。
グルコース注入により血漿インスリンレベルが急速に上昇し、メトホルミン投与日ではt = 90分でピークに達した。
Met(−60分)とMet(−30分)は対照と比べて血漿インスリンレベルが高かった。
インスリン/グルコース比も対照より高く、Met(−60分)とMet(−30分)が特に効果的であった。
インスリン感受性(Matsuda index)は4日間で差がなかった。
吐き気と食欲
吐き気のスコアは全期間で低く、4つの治療間で差はなかった。
食欲に関する感覚(空腹感、満腹感、食欲、予想される食事量)は、グルコース注入前後でわずかに変化し、4つの治療間で差はなかった。
Discussion要約
メトホルミンをグルコース負荷の30分または60分前に投与すると、投与直前よりも血糖低下とGLP-1分泌の促進に効果的である。
メトホルミンの早期投与は、消化器症状を引き起こさず、食後の血糖低下効果を最大化する可能性がある。
メトホルミンの投与タイミングは、食後の血糖低下効果に大きく影響を与えるため、食事と一緒に摂取する現在の推奨は効果を損なう可能性がある。
小腸へのメトホルミンの直接注入により、胃排出の影響を回避し、正確に血糖・インスリン・GLP-1応答を評価した。
メトホルミンは、空腹時血糖には影響を与えないが、グルコース負荷後に血糖を低下させる。
メトホルミンの早期投与は、GLP-1分泌の増加と関連しており、これは消化管でのグルコース吸収抑制が関与している可能性がある。
メトホルミンは食事と一緒に摂取するより、食事前に摂取することで血糖コントロールが改善される可能性がある。
研究の限界として、メトホルミンの即効性溶液を使用したため、徐放性製剤への影響は不明であり、また、性別による影響も考慮されていない。
長期間の研究が必要であり、食事30〜60分前のメトホルミン投与が食後および全体の血糖コントロールに与える影響を調査する必要がある。