市中肺炎の肺炎球菌serotype 3の重要性:ワクチン推奨は今のままで良いのだろうか?
高齢者向け肺炎球菌ワクチンをまるで、侵襲型肺炎球菌感染症という重篤な病態を無視して肺炎のワクチンとしてのみ啓発し続けている学会に問題があると思っている。呼吸器学会に出てもその辺無視してスピーチしている方々の多いこと・・・うんざり。
また、市中肺炎への肺炎球菌の関与は否定しないが、セロタイプにより病態影響異なるためそれぞれの分析が必要で、ワクチンを一括りで判断してはいけない。米国に比べ、日本のワクチン行政の対応遅れは提言する感染症専門家の問題でもあるだろう。
Lansbury, Louise, Tricia M McKeever, Hannah Lawrence, Harry Pick, Vadsala Baskaran, Rochelle Edwards-Pritchard, Laura Matthews, ほか. 「Pneumococcal pneumonia trends in adults hospitalised with community-acquired pneumonia over 10 years (2013–2023) and the role of serotype 3」. Thorax, 2024年12月12日, thorax-2024-221976. https://doi.org/10.1136/thorax-2024-221976.
背景
より高価数の肺炎球菌ワクチンの登場が予想される中、新たな成人向け予防接種戦略が議論されている。本研究では、肺炎球菌性市中肺炎(CAP)の負担における個々の肺炎球菌血清型の寄与を評価することを目的とした。10年間にわたり、CAPで入院した成人における肺炎球菌性肺炎の疫学的動向を評価し、特に血清型3に関連するリスク因子と重症度を検討した。
方法
2013年9月から2023年5月まで、CAPで入院した成人を対象とした前向きコホート研究を実施した。血清型特異的な24価尿中抗原アッセイを用いて肺炎球菌血清型を特定した。肺炎球菌によるCAPおよび原因血清型の割合について、パンデミック前後での傾向を比較した。血清型3肺炎のリスク因子および重症度を他の血清型と比較するためにロジスティック回帰を用いた。
結果
CAP患者5186例中2193例(42.2%)が肺炎球菌性肺炎であった。肺炎球菌によるCAPの割合は、2013年から2023年にかけて全ての年齢層で増加した(36.4%から66.9%、p<0.001)。血清型3が原因である割合は、2013年の13.4%から2023年の48.8%へと有意に増加した。成人における血清型3肺炎は、高齢(p<0.001)、男性(調整オッズ比[aOR] 2.22、95%信頼区間[CI] 1.64–3.01)、慢性腎疾患(aOR 1.81、95% CI 1.09–3.02)と関連していた。血清型3肺炎は、重症度、集中治療の必要性、死亡率、再入院との関連は認められなかった。
解釈
血清型3は成人肺炎球菌性CAPの主要な血清型であり、乳児向け肺炎球菌予防接種プログラムが成熟しているにもかかわらず増加している。この結果は、血清型3に対する集団免疫が欠如していることと一致している。
Perplexityから
肺炎球菌血清型3に対するワクチン応答は、特に13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)を含む肺炎球菌結合型ワクチン(PCVs)に含まれる他の血清型と比較して顕著に弱いです。この効果の低下は複数の研究で確認されており、肺炎球菌感染症予防に重要な意味を持ちます。
抗体応答
PCV13は血清型3を含んでいますが、この血清型に対する抗体応答は他の血清型に比べて低いことが明らかになっています。
PCV13を接種した子どもは、血清型19Aに比べて血清型3に対する抗体レベルが低いことが示されています[1]。
血清型3では、PCV13接種後にオプソニン貪食試験の抗体価や抗体親和性の有意な上昇が観察されず、血清型19Aとは対照的です[1]。
人口レベルでの免疫原性プロファイルでは、血清型3に対するIgG抗体価のワクチン誘導による増加は見られず、他のワクチン血清型とは異なります[6]。
ワクチンの有効性
抗体応答が低いにもかかわらず、血清型3に対してある程度の保護が示された研究もあります。
症例対照研究のメタアナリシスでは、子どもにおける血清型3による侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に対するPCV13のワクチン有効性は63.5%と推定されました[2][5]。
PCV13を全国免疫プログラムで使用している国々では、ワクチン導入後の最初の3~4年間で血清型3疾患の減少がわずかに見られました[3]。
しかし、その有効性には限界があります。
血清型3に対する急性中耳炎や菌の定着の予防においてPCV13の有効性は確認されていません[1]。
血清型3の保菌に対する直接的な保護は見られていません[10]。
他のワクチンとの比較
23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)も血清型3に対する有効性が限られています。デンマークでの研究では、65歳以上の成人におけるPPSV23接種は血清型3によるIPDを防ぐ効果が認められず、他の血清型に対しては有効性が確認されました[8]。
意義と今後の課題
血清型3に対するワクチン応答の低さは、今後も課題となっています。
血清型3は肺炎球菌感染症の重要な原因であり、IPDによる罹患率の10%以上、肺炎球菌性敗血症症例の約25%を占めています[7]。
血清型3によるIPDは他の血清型と比較して死亡率が30%高いことが示されています[7]。
一部の研究者は、PCV13が血清型3によるIPDに対して十分な保護を提供していないと結論付け、より効果的なワクチン戦略の必要性を訴えています[7]。
結論として、PCV13および他の肺炎球菌ワクチンは血清型3に対してある程度の保護を提供するものの、その応答は他の血清型に比べて著しく弱いです。この有効性の限界は、この問題のある血清型を標的としたより効果的なワクチン戦略の研究開発の必要性を浮き彫りにしています。
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CDCと日本では肺炎球菌ワクチンに対するアプローチが異なります。
年齢の推奨
CDC: 肺炎球菌ワクチンの推奨年齢を最近、65歳から50歳に引き下げました[5]。
日本: 65歳以上の成人および60~65歳で基礎疾患を持つ人に対して、肺炎球菌ワクチンを定期接種プログラムに含めています[2]。
ワクチンの種類
CDC: 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15、PCV20、またはPCV21)を、これまでPCVを接種していない50歳以上の成人に推奨しています[3]。
日本: 主に成人への接種には23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)を使用しています[2]。
接種率
CDC: 65歳以上の成人のほぼ70%が、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を接種しています[8]。
日本: 2014~2017年の間に、65歳以上の成人の接種率はPPSV23で約30~38%とされています[2]。
接種方法
CDC: 通常、筋肉内注射でワクチンを接種します。
日本: 歴史的な理由から、多くのワクチンで皮下接種が求められており、これがワクチンの有効性に影響を与える可能性があります[6]。
資金
CDC: 肺炎球菌ワクチンを政府資金による定期接種プログラムに含めています。
日本: ワクチンを政府資金による「定期接種」と自己負担の「任意接種」に分類しており、これがアクセスや接種率に影響を与えています[6]。
これらのアプローチの違いにより、日本では他の先進国と比較してワクチンで予防可能な疾患の発生率が高い傾向があります[6]。
Citations:
[1] https://www.merck.com/news/cdcs-acip-recommends-mercks-capvaxive-pneumococcal-21-valent-conjugate-vaccine-for-pneumococcal-vaccination-in-adults-50-years-of-age-and-older/
[2] https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/10/19-1531_article
[3] https://www.cdc.gov/pneumococcal/vaccines/adults.html
[4] https://www.med.kobe-u.ac.jp/journal/contents/52/97.pdf
[5] https://www.cidrap.umn.edu/adult-non-flu-vaccines/cdc-endorses-acip-recommendation-lower-age-pneumococcal-vaccination-50
[6] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4300546/
[7] https://www.cdc.gov/pneumococcal/hcp/vaccine-recommendations/risk-indications.html
[8] https://www.jages.net/kenkyuseika/paper_eng/?action=common_download_main&upload_id=19349
[9] https://www.cdc.gov/pneumococcal/hcp/vaccine-recommendations/index.html
[10] https://www.cdc.gov/pneumococcal/vaccines/index.html