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EUFOREA Consensus Statement on Raising the Bar in Asthma Care:個別化されたホリスティックなアプローチなど

具体策なければ絵に描いた餅



Jesenak, Milos, Dr. Anna Bobcakova, Ratko Djukanovic, Mina Gaga, Nicola A. Hanania, Liam G. Heaney, Ian Pavord, ほか. 「Promoting Prevention and Targeting Remission of Asthma A EUFOREA Consensus Statement on Raising the Bar in Asthma Care」. CHEST. 参照 2024年12月16日. https://doi.org/10.1016/j.chest.2024.11.035.

トピックの重要性

喘息は、生活の質に大きな影響を与える多面的な一般的呼吸器疾患である。さまざまな喘息の表現型/エンドタイプの基盤となるメカニズムに関する洞察が増加し、標的を絞った生物学的治療法が利用可能になったにもかかわらず、かなりの割合の患者が依然として制御不能であり、増悪のリスクにさらされ、全身性コルチコステロイドを必要とし、病態が進行する可能性がある。
現在の国際ガイドラインでは、制御不能な重症喘息患者に対し、個別化された管理アプローチを推奨している。

レビューの所見

EUFOREA喘息専門家パネルは、喘息治療の最適化、全身性コルチコステロイドの過剰使用防止、および病態進行の抑制に向けた戦略を議論するために招集された。本報告書では、現在の概念と推奨事項を要約し、疾患の初期段階で個別化された喘息管理を実施するための根拠を提示する。その究極の目標は、現在主流の「多くの患者に一律で適用される」概念、すなわち症状に基づく治療戦略から脱却し、表現型/エンドタイプを標的としたアプローチへ移行することである。このアプローチは、臨床的転帰を改善し、健康関連の生活の質を維持しながら、病態の進行を抑制することを目指している。


この論文は、喘息治療における現状の課題を指摘し、よりパーソナライズされた包括的なアプローチの必要性を訴えるEUFOREAコンセンサスステートメントです。症状に基づく治療から、フェノタイプ/エンドタイプを考慮した個別化治療への転換、早期段階からの疾患修飾療法、そして寛解という新たな治療目標の導入が提唱されています。 具体的には、バイオマーカーや治療可能な特性(TTs)を活用した治療戦略、アレルゲン免疫療法(AIT)の有効性、小児喘息への対応などが論じられています。 今後の臨床試験や疫学研究で、これらの提案されたアプローチの有効性を検証していく必要があると結論付けています。

アレルギー性喘息の治療における現状の課題と、その改善策に関する評価を以下に示します。

現状の課題:

  • 症状コントロールの限界: 喘息患者の多くは、既存の治療法では十分な症状コントロールが得られておらず、臨床的および生理学的アウトカムが不良な状態が続いている。特に重症喘息は、症状の悪化、全身性コルチコステロイドの使用、そして疾患の進行のリスクを伴う。

  • 従来の治療法の限界: 従来の症状に基づく喘息管理は、炎症に基づくアプローチと比較して、喀痰中の好酸球数が有意に高く、重症増悪率が高いことが示されている。症状と好酸球性気道炎症が一致しない患者群は、吸入コルチコステロイド(ICS)療法に抵抗性を示す場合がある。

  • 個別化医療の必要性: 喘息は複雑な疾患であり、患者ごとに異なる表現型や内因型を持つ。そのため、「一律対応」のアプローチではなく、より個別化された治療戦略が求められている。

  • 疾患修飾の欠如: 現在の治療法では、喘息の根本的な病態を改善する疾患修飾効果が十分ではない。気道リモデリングや炎症の持続は、症状が改善しても残存し、再発や肺機能低下を引き起こす可能性がある。

  • バイオマーカーの不足: T2低値喘息など、既存のバイオマーカーでは捉えられない喘息の病型が存在する。T2バイオマーカーがない場合、好中球性または乏顆粒球性炎症として特徴付けられる。

  • 治療目標の曖昧さ: 喘息治療における寛解の定義や臨床的有用性はまだ進化しており、持続的なコントロール、スーパーレスポンダー、疾患修飾、寛解などの概念が重複している。

改善策:

  • 個別化されたホリスティックなアプローチ:

    • 疾患の早期段階から、患者の表現型/内因型を考慮した、より個別化された治療アプローチが推奨される。

    • 治療可能な特性(TTs) と併存疾患(例:鼻炎、副鼻腔炎、肥満、不安/抑うつ)を考慮した包括的な管理が重要である。

  • 炎症に基づくアプローチ:

    • 症状だけでなく、バイオマーカー(血中好酸球数、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)) を指標とした治療が推奨される。

    • T2炎症を標的とした生物学的製剤は、高FeNOレベルと末梢血好酸球数で示される、T2炎症の強度が高いほど臨床効果が高い。

  • 喘息寛解の追求:

    • 症状コントロールだけでなく、喘息寛解 を治療目標に加えることが提唱されている。

    • 臨床的寛解は、12ヶ月以上の症状の持続的な消失、最適化された安定した肺機能、全身性コルチコステロイドの不使用、医師と患者の間の寛解に関する合意によって定義される。

    • 完全寛解は、炎症の解消(正常範囲内の関連バイオマーカー)と気道過敏性(陰性の気管支誘発試験)の客観的な確認を必要とする。

  • アレルゲン免疫療法(AIT)の活用:

    • アレルギー性鼻炎を合併する患者において、喘息のリスクを軽減する可能性が示唆されている。

    • AIT(特にSLIT) は、アトピーマーチを抑制し、長期的な喘息予防効果が期待できる。

    • AITは、アレルゲンに対する耐性を誘導するだけでなく、下気道感染症のリスクを減らし、自然免疫を回復させる効果がある。

  • 生物学的製剤の早期導入:

    • 従来の治療法でコントロール不良な重症喘息患者に対して、生物学的製剤の早期導入が推奨される。

    • 生物学的製剤は、気道リモデリングの抑制や、コルチコステロイドの使用量削減に貢献する可能性がある。

  • 多職種連携の促進:

    • 成人および小児の呼吸器専門医やアレルギー専門医に加えて、耳鼻咽喉科医や一般開業医を含む多職種専門家パネルによる議論が重要である。

  • 予防戦略の重視:

    • 一次予防(健康な個人の疾患発症予防)、二次予防(無症候期の早期発見)、三次予防(症状のある患者の重症度軽減)を含む予防対策を重視する。

評価:

これらの改善策は、喘息治療における重要な進歩を示唆しています。特に、個別化医療、炎症に基づくアプローチ、そして喘息寛解という新たな治療目標の導入は、喘息患者の予後を大きく改善する可能性を秘めています。アレルゲン免疫療法と生物学的製剤の適切な活用は、疾患修飾や症状コントロールにおいて重要な役割を果たすと考えられます。

しかし、これらの改善策を実臨床で効果的に導入するためには、以下のような課題を克服する必要があります。

  • バイオマーカーのさらなる研究: T2低値喘息など、既存のバイオマーカーでは捉えられない喘息の病態を解明し、新たな治療標的や予測バイオマーカーを開発する必要がある。

  • 長期的な追跡調査: 長期的な治療効果や、治療中止後の疾患コントロールの持続性を評価するためのデータが必要である。

  • 患者教育の徹底: 患者の期待と治療目標を一致させるための十分な情報提供と、患者エンゲージメントが重要である。

  • 経済的および人的資源の確保: 新しい治療法を広く普及させるためには、十分な財源と医療従事者の確保が必要である。

これらの課題を克服し、個別化医療を推進することで、アレルギー性喘息の治療は大きく進歩すると考えられます。

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