悪性腫瘍発生リスクの怪:JAK阻害剤 vs TNF阻害剤

悪性腫瘍発生リスク、これ、どう解釈するんだろ?

JAKi vs プラセボ:有意差なし
JAKi vs MTX:有意差なし
JAKi vs TNFi:有意差あり

そういう話

【背景/目的】50歳以上の関節リウマチ患者において、心血管リスク因子を追加した場合、腫瘍壊死因子α阻害剤(TNFi)と比較してトファシチニブで悪性腫瘍の発生率が高いと報告したORALサーベイランス試験以降、ヤヌスキナーゼ阻害剤(JAKi)による腫瘍のリスクについて懸念が提起されている。我々の目的は、すべてのライセンスされたJAKiについて、TNFi、メトトレキサート(MTX)、プラセボと比較し、疾患適応における悪性腫瘍のリスクを推定することでした。
【方法】電子データベース(Medline、EMBASE、Cochrane)の系統的検索を行い、RA、乾癬性関節炎、乾癬、軸性脊椎関節炎、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎の成人におけるJAKi(tofacitinib、Baricitinib、uadacitinib、filgotinib、peficitinib)の第2相/3/4相RCTと長期延長(LTE)試験を検索した。比較対象は、プラセボ、MTX、TNFiであった。ランダム効果メタアナリシスを行い、JAKiと比較対象の悪性腫瘍発生率を比較した。主要アウトカム指標は、非黒色腫性皮膚がん(NMSC)を含むすべての悪性腫瘍の発生率であった。副次的アウトカムは、NMSCを除く悪性腫瘍、およびNMSCのみであった。
【結果】 62件のRCTと14件のLTE試験において、JAKiへの曝露は71,767人年、プラセボは2,680人年、TNFiは7,827人年、MTXは1,074人年であることが示された。
RCTのJAKi群とプラセボ群を比較すると、NMSCを含むすべての悪性腫瘍の発生率比(RR)に有意差はなかった(RR 0.81; 95% CI 0.52 to 1.26; p=0.36)。
同様に、JAKiとMTXを比較した場合、悪性腫瘍の発生率に有意差は認められなかった(RR 0.73; 95% CI 0.33 to 1.61; p=0.43)。
しかし、TNFiと比較すると、JAKiの投与は悪性腫瘍の発生率の増加と関連していた(RR 1.54; 95% CI 1.19 to 2.01; p0.001)。すべての解析において、NMSCを除外した場合、NMSCのみを解析した場合、LTEデータを含む場合、所見は一貫していた。
【結論】 臨床試験において、JAKiはプラセボやMTXと比較して悪性腫瘍のリスク上昇を伴わないが、TNFiと比較して悪性腫瘍のリスク上昇に関連する。
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解説記事から

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤は、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤と比較して、がんのリスクが高い可能性があることが、英国リウマチ学会(BSR)2023年総会で報告されたメタアナリシスにより明らかになりました。
JAK阻害剤が必ずしも有害であるというよりも、むしろTNF阻害剤が保護的である可能性を示唆するデータです」と、英国ロンドンのプリンセスロイヤル大学病院、キングスカレッジ病院NHSトラストのリウマチ専門登録医であるChristopher Stovin, MBChB
さらに、「私たちの研究では、これらの事象は稀であり、およそ100患者年に1回程度の曝露であることを強調すべきです」とのこと

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