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TriOx:TAPS(TET-Assisted Pyridine Borane Sequencing)技術と機械学習を組み合わせ、がんDNAのわずかな変化も検出

TAPSが画期的な理由DNAを壊さない新しい技術
従来の方法(ビスルファイトシーケンシング)はDNAを大幅に破壊してしまうため、分析できる情報量が減り、感度が低くなる問題がありました。
TAPSはDNAをほとんど壊さないため、遺伝子情報(ゲノム)とDNAの化学的な変化(メチル化)を同時に調べられるのが大きな強みです。
少量のがんDNAを検出可能
血液中に存在する微量のがんDNA(ctDNA)を高い精度で検出できます。具体的には、わずか0.7%の割合でもがんを識別可能で、早期段階のがんにも対応できます。
複数のがんに対応
この技術は、1つの検査で複数種類のがん(例えば乳がん、膵臓がん、大腸がんなど)を検出できるため、従来の方法に比べて大幅に効率的です。
患者への負担が少ない
血液を採取するだけの「液体生検」を利用するため、侵襲的な検査を避けることができ、患者が気軽に受けられます。
早期発見が可能
がんは早期に発見するほど治療が簡単で成功率も高いです。TAPSは微量のがんDNAを検出できるため、早期発見の可能性が大幅に高まります。




例えるなら…

従来の検査方法を「ぼんやりとした手がかりを頼りに問題を探す探偵」とすると、TAPSは「拡大鏡と地図を駆使して問題をピンポイントで特定する名探偵」のようなものです。小さな手がかり(微量のがんDNA)を無駄にせず、精密に調べられる点が、TAPSのすごさです。


https://www.cancer.ox.ac.uk/news/oxford-researchers-develop-blood-test-to-enable-early-detection-of-multiple-cancers

  • 新しい血液検査「TriOx」の発表

    • オックスフォード大学の研究者が開発。機械学習を活用し、複数のがんを初期段階で検出可能。

    • 血液中のDNAの多様な特徴を解析し、迅速かつ高感度で低侵襲な診断方法を提供。

  • 研究結果

    • Nature Communications誌に掲載。TriOxは6種類のがんを正確に検出。

    • 感度94.9%、特異度88.8%でがんの有無を判別。

    • 早期発見で治療効果が向上し、医療費削減の可能性。

  • 液体生検の利点とTriOxの革新性

    • 液体生検は侵襲性が低く、初期段階のがん検出に有望。

    • TriOxはTAPS(TET-Assisted Pyridine Borane Sequencing)技術と機械学習を組み合わせ、がんDNAのわずかな変化も検出可能。

  • TriOxの特徴

    • 全ゲノムの解析が可能で、従来の液体生検より信頼性が高い。

    • がん症状がある患者や無症状の健康な人を対象にテスト実施。患者への負担軽減を目指す。

  • 早期診断の重要性

    • 膵がんや卵巣がんなど、進行後に見つかるケースが多いがんへの早期対策を目指す。

    • 現行のスクリーニング方法は限られたがん種に対応しており、侵襲性が高い検査が普及を妨げている。

  • 将来の展望

    • TriOxの対象がん種の拡大や大規模患者群での検証が進行中。

    • 日常的な検査として普及し、コレステロールや血糖値測定のような身近なものにすることを目指している。

  • 研究者のコメント

    • プロフェッサー・アナ・シュ―:「最先端の科学と機械学習を融合した画期的なテスト。さらに研究を進めれば、多くの命を救う可能性がある。」

    • ドクター・ディミトリス・バブリス:「簡単な血液採取で複数のがんを検出できる未来を目指す。」

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  • 研究内容: オックスフォード大学の研究者が、複数のがんを早期段階で検出可能な血液検査「TriOx」を開発。

  • 技術特徴:

    • TriOxは血液中のDNAの特徴を多角的に分析し、がんの兆候を検出。

    • 従来の液体生検よりも精度が高く、検出能力を向上させるTAPS(TET-Assisted Pyridine Borane Sequencing)技術と機械学習を組み合わせた。

    • 94.9%の感度と88.8%の特異度を達成。

  • 対象がん: 大腸がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん、卵巣がん、乳がんを含む6種のがんを検出可能。

  • 利点:

    • 非侵襲的で迅速かつ敏感な検査手法。

    • がんを早期発見することで治療効果を高め、医療費削減にも寄与。

  • 臨床試験:

    • がんの有無が疑われる患者や健康な個人の血液サンプルを使用。

    • がん患者と非がん患者を高精度で識別可能。

  • 将来の展望:

    • より多くのがん種や患者群での検証を進行中。

    • 将来的には日常的なスクリーニング検査としての利用を目指す。

    • 血糖値やコレステロール検査のような日常的な検査への統合を目標。

  • 研究資金: Innovate UKおよびNIHR Oxford Biomedical Research Centreが資金提供。

  • 共同研究: Exact Sciencesと共同で実施。

  • 商業化: TriOxはSerenOxにライセンス供与されており、共同創設者であるアンナ・シュフ教授がCMOを務める。



Vavoulis, Dimitrios V., Anthony Cutts, Nishita Thota, Jordan Brown, Robert Sugar, Antonio Rueda, Arman Ardalan, ほか. 「Multimodal cell-free DNA whole-genome TAPS is sensitive and reveals specific cancer signals」. Nature Communications 16, no. 1 (2025年1月8日): 430. https://doi.org/10.1038/s41467-024-55428-y.

循環腫瘍DNA(ctDNA)の最小侵襲液体生検による解析は、複数のがんの早期発見および最小残存病変のモニタリングに有望である。現在のほとんどの方法はターゲットを絞った深度シーケンシングに焦点を当てているが、複数のデータモダリティを統合しているものは少ない。本研究では、TET-Assisted Pyridine Borane Sequencing(TAPS)による深度(80倍)の全ゲノムシーケンシングを用いたctDNA検出の手法を開発した。TAPSは、ビスルファイトシーケンシングよりも損傷が少なく、ゲノムデータとメチル化データの同時解析を可能にする。
本研究では、症候性患者を対象に複数のがん種にわたる診断精度研究を実施し、94.9%の感度と88.8%の特異度を達成した。解析を導くのではなく、検証のために使用した腫瘍生検組織を用いることで、早期発見のシナリオを模倣した。さらに、in silico検証では、ctDNA割合が0.7%と低い場合でも86%のAUC(曲線下面積)という高い識別力を示した。
加えて、治療後の前がん病変からの腫瘍負荷およびctDNA放出を、腫瘍生検を必要とせずに追跡することに成功した。このプロセスは、がんスクリーニングの拡大および患者の選別とモニタリングの改善に向けたさらなる臨床評価の準備が整っている。


序文要約

  • がんの早期発見の重要性:

    • 早期発見は患者の治療成績を向上させる可能性がある。

    • 現行のスクリーニングプログラムは特定のがん(子宮頸がん、乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん)のみに限定され、全体の30%未満に対応。

  • 液体生検の可能性:

    • 最小侵襲の液体生検を用いた多がん早期発見(MCED)は有望だが、低いがん発生率により無症状者での偽陽性が課題。

  • 症状のある高リスク患者の早期発見:

    • 一次医療におけるがん症状の診断ツールは限定的で、リスク層別化や患者の選別が困難。

    • イギリスNHSでは、がん疑いでの緊急紹介の7%ががんと診断され、これが同年のがん診断の55%を占める。

  • SYMPLIFY試験:

    • Galleri GRAIL MCED検査をNHSでがん疑い患者に対して実施。

    • 全体の感度66.3%、特異度98.4%を記録。

    • がんの進行度や年齢に応じて感度が向上(例: ステージIで24.2%、ステージIVで95.3%)。

    • がん信号が検出された場合、がんの発生部位の予測正答率は85.2%。

  • 液体生検技術の課題と進化:

    • 従来の液体生検では、特定のがんや変異(SNV)に焦点を当て、感度向上のためにエピジェネティック解析やタンパク質マーカーを組み合わせる手法が一般的。

    • 浅層WGS(シャローWGS)を利用して、コピー数異常(CNA)やctDNA断片特性を分析する方法も提案されている。

  • TET-Assisted Pyridine Borane Sequencing (TAPS):

    • 5-メチルシトシンと5-ヒドロキシメチルシトシンの検出に特化した高精度シーケンシング手法。

    • ビスルファイトシーケンシングに比べてDNA損傷が少なく、ゲノムとメチロームを同時に解析可能。

    • 従来技術のようなDNAの大部分を破壊せず、偽陽性を低減しつつがん信号の特定が可能。

  • 本研究の目的:

    • 一次医療でがん疑いで紹介された症状のある患者において、統合的な多モーダルTAPS WGSを用いてctDNAの真のがん信号をノイズから区別。


結果:

  1. コピー数異常(CNA)の解析:

    • がん特有の染色体異常を非侵襲的に検出。

    • がん患者61例中29例で正確に異常を検出(感度47.5%、特異度100%)。

    • がん進行に伴いCNAスコアが単調に増加。

  2. 体細胞突然変異の解析:

    • がん患者のプラズマサンプルで高い突然変異負荷を検出。

    • 感度52.5%、特異度100%を達成。

    • ROC解析では、体細胞突然変異のAUCが1%以上のctDNA割合で74%。

  3. メチル化信号の解析:

    • DNAメチル化異常を検出することで、がん特異的信号を解析。

    • 感度45.9%、特異度100%。

    • がん進行に伴い統合メチル化スコアが単調に増加。

  4. モダリティ統合解析:

    • 3つのモダリティを統合することで、感度85.2%、特異度100%を達成。

    • 統合スコアはがん進行度に応じて増加。


A 各血漿サンプルにおけるコピー数異常、体細胞SNVおよびINDEL、メチル化シグナルの統合から生成された血漿中ctDNAの定量化におけるマルチモーダルスコアを示す。
赤い円は、非がんCBSコントロールと比較して高いctDNA負荷を示す。がん血漿サンプル61例中52例が正確に検出され、感度は85.2%に相当する。これは3つのデータモダリティのいずれか単独の感度よりも高い。
B がんステージおよびがんタイプに対するマルチモーダルスコア(Bi)と、がんステージの進行に伴うマルチモーダルスコア中央値の単調な増加(Bii)。
C ctDNAの割合が増加する条件でのマルチモーダル解析のインシリコ(計算機シミュレーション)検証。それぞれのctDNA割合において、実際の非がんおよびがん血漿サンプルをテンプレートとして使用し、
1000の非がんコントロールおよび1000のがん血漿サンプルをシミュレーション(詳細は「方法」参照)。
ROC曲線(受信者動作特性曲線)の下の面積(AUC)は、ctDNA割合0.7%で86%となった。
CTRL: CBSコントロール(n=9名)、CRC: 大腸がん(n=36名)、OES: 食道がん(n=8名)、PNCR: 膵がん(n=6名)、RNL: 腎がん(n=5名)、OVR: 卵巣がん(n=4名)、BST: 乳がん(n=2名)。
(Bi, C)の各ボックスプロットでは、箱の境界と中心は各グループのデータの25パーセンタイル、50パーセンタイル(中央値)、75パーセンタイルに対応し、ウィスカーは箱の境界から上下1.5倍の四分位範囲(IQR)を示す。ソースデータは、ソースデータファイルとして提供される。

治療後の追跡

  • 術後および補助療法後の患者のctDNA負荷を追跡。

  • ctDNAの検出有無は再発や疾患進行と高い相関を示した。

  • 術後または治療後のctDNAが検出されない場合、無病生存期間が長い(HR 8.2; p=0.02)。

重要なポイント

  • TAPSを用いた多モダリティ解析は早期がん発見と治療効果の追跡に有望。

  • ノイズを効率的に除去しながら感度と特異度を両立。

  • 今後の臨床的検証と患者フォローアップが期待される。

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研究概要

  • TAPS処理したctDNAを80倍以上の深度でシーケンシングし、CNAs、SNVs、インデル、メチル化の情報を統合。

  • 患者61名(がん)と30名(非がん)、さらに10名の大腸がん患者のフォローアップサンプルを含む計214サンプルを解析。

  • 本データセットはcfDNA研究コミュニティに有用なリソースとなることを期待。


主な成果

  1. がん信号の高精度検出:

    • TAPSにより、広範囲なゲノム情報を活用し、液体生検からのがん信号検出精度を向上。

    • 高感度(85.2%)と高特異度(88.8%)を達成。

  2. 検出精度のシミュレーション結果:

    • がん発生率6.7%のモデルで、陰性的中率(NPV)は98.8%。

    • 一次医療におけるがん発生率3%の場合、NPVは99.5%。

    • 陰性結果はがんリスクを大幅に低減。

  3. マルチモーダル解析の利点:

    • CNAs、SNVs、メチル化プロファイルを統合することで、がんの異質性を考慮し診断精度を向上。

    • ウイルス関連がん(約25%)も検出可能。


課題と今後の展望

  1. データ拡張の必要性:

    • 他のがんタイプやステージを含む大規模データセットでの検証が必要。

    • メチル化プロファイル解析には、TAPS特有のメチル化アトラスが必要(準備中)。

  2. 臨床導入の課題:

    • 深いシーケンシング深度(80x)は、リソース制約がある臨床環境で障害となる可能性。

    • 費用対効果を向上させるために、必要最小限のカバレッジ深度を特定する研究が必要。

  3. 診断性能向上の可能性:

    • 断片サイズ分布、突然変異シグネチャ、テロメア長などのデータ統合で感度向上を検討。

    • 診断の次段階として、がんの発生部位(TOO)予測の精度向上が課題。

  4. 実臨床での課題:

    • 偽陽性結果による心理的・経済的負担(過去の研究で早期回復が示唆されている)。

    • ランダム化試験や実臨床データ収集(Phase 4)での課題特定が重要。


結論

  • マルチモーダルTAPS解析は、初期および進行がんの検出に高い精度を示す。

  • 次のステップは、無選別症例での前向き研究を実施し、診断性能と臨床的有用性を確立すること。

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