PROMIS-I,II:気管支拡張・緑膿菌感染:吸入コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム
気管支拡張症患者の慢性緑膿菌感染は、増悪頻度と死亡率の上昇と関連している。
吸入抗生物質は慢性緑膿菌感染の管理に広く使用されている。
吸入抗生物質の長期使用に関する無作為化比較試験を調査し、増悪が21%、重度増悪が52%減少することが確認された。
PROMIS-IおよびPROMIS-II試験では、I-nebデバイスを介してコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを投与し、PROMIS-Iで増悪頻度や重度増悪の有意な減少、生活の質の改善が確認された。
PROMIS-IIはCOVID-19パンデミックの影響で早期終了し、統計的有意な結果は得られなかったが、パンデミック前のデータはPROMIS-Iと一致していた。
これらの結果は、国際的なガイドラインが気管支拡張症と慢性緑膿菌感染を持つ患者に吸入抗生物質治療を推奨する根拠をさらに支持するものである。
PROMIS-I と PROMIS-II は、慢性緑膿菌感染症を伴う気管支拡張症患者における吸入コリスチンの有効性と安全性を評価した第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。PROMIS-I では、吸入コリスチンはプラセボと比較して増悪の頻度が有意に減少し、生活の質も有意に向上しました。しかし、PROMIS-II はCOVID-19 パンデミックの影響で早期に中止され、吸入コリスチン群とプラセボ群の間で増悪の頻度に有意差は見られませんでした。PROMIS-I の結果が PROMIS-II で再現されなかった理由としては、COVID-19 パンデミックが考えられますが、不明な要因も関与している可能性があります。全体的な証拠から、気管支拡張症患者で緑膿菌感染症と頻繁な増悪の病歴がある場合、吸入抗生物質の使用は推奨されます。
Haworth, Charles S, Michal Shteinberg, Kevin Winthrop, Alan Barker, Francesco Blasi, Katerina Dimakou, Lucy C Morgan, ほか. 「Inhaled colistimethate sodium in patients with bronchiectasis and Pseudomonas aeruginosa infection: results of PROMIS-I and PROMIS-II, two randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trials assessing safety and efficacy over 12 months」. The Lancet Respiratory Medicine 12, no. 10 (2024年10月1日): 787–98. https://doi.org/10.1016/S2213-2600(24)00225-X.
序文
要約
気管支拡張症の患者は、粘液線毛クリアランスの障害や免疫機能の低下により、慢性的な気道感染を発症する。特に、緑膿菌が気道から最も一般的に分離され、これにより気道炎症が増加し、症状や肺機能が悪化、増悪や入院、死亡率のリスクが高まる。このため、国際的なガイドラインでは、慢性感染や頻繁な増悪を持つ患者に対して長期の抗生物質治療が推奨されている。増悪の予防が、気管支拡張症管理の重要な目標である。
結果
PROMIS-Iは12か国86の施設で実施され、377人の患者が無作為に割り付けられた。完了率はコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム群で69%、プラセボ群で65%であった。
PROMIS-IIは12か国89の施設で実施され、287人の患者が無作為に割り付けられた。COVID-19パンデミックの影響で早期に終了し、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム群で62%、プラセボ群で66%の完了率であった。
PROMIS-Iでは、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム群の増悪頻度が有意に減少し、生活の質や重度増悪、気道内の緑膿菌密度の改善が確認された。
PROMIS-IIでは、COVID-19パンデミックの前はPROMIS-Iと一致する結果が得られたが、パンデミック中は有意な効果は観察されなかった。
COVID-19パンデミックが試験結果に与えた影響は、パンデミック前後のデータ比較で評価され、プラセボ群での増悪率が大幅に減少したが、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム群では大きな変化がなかった。
両試験で、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム群とプラセボ群の有害事象(TEAE)の発生率は類似しており、多くは軽度から中等度であった。重篤な有害事象も報告されたが、治療との関連は認められなかった。
PROMIS-IとPROMIS-IIの一部では、緑膿菌のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム耐性が観察されたが、頻度は低かった。
Discussion要約
2つの第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの安全性と有効性が評価された。
PROMIS-Iでは、増悪の39%減少と重度増悪の59%減少が確認され、生活の質も有意に改善された。
PROMIS-IIではCOVID-19パンデミックの影響で早期に終了し、統計的有意な効果は観察されなかった。
パンデミックにより呼吸器感染症の循環や増悪頻度に大きな変化があり、結果の不一致の原因と考えられる。
PROMIS-Iでは増悪の減少が確認され、気道内の緑膿菌密度の低下も確認されたが、PROMIS-IIではその効果は再現されなかった。
吸入抗生物質は、増悪リスクを軽減するために重要な治療法であり、特にコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは安全性が高く、気管支けいれんのリスクが低いことが示された。
PROMIS-IとPROMIS-IIの結果は、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムが気管支拡張症患者に有効であり、国際的なガイドラインを支持するものである。
吸入コリスチンメテートナトリウムの具体的な投与法
ソースによると、PROMIS試験では、I-nebアダプティブエアロゾル送達システムを介してコリスチンメテートナトリウムを投与しました。 I-nebは、患者の呼吸パターンに適応して気道へのエアロゾル送達を最適化するように設計された振動メッシュネブライザーデバイスです。
ソースには、コリスチンメテートナトリウムの具体的な投与量が記載されています。
1回量:100万IU(送達量は0.3百万IU)
投与頻度:1日2回
投与期間:最長12ヶ月
吸入抗生物質の使用に関連する潜在的なリスクの1つは、気管支痙攣です。これは、気道の筋肉が収縮して呼吸が困難になる状態です。 ソースは、他の吸入抗生物質を投与された患者の10%以上で気管支痙攣が報告されており、特にアミノグリコシド系抗生物質で増加していると報告しています。しかし、ソースはまた、I-nebを介して投与されたコリスチンメテートナトリウムは忍容性が良好であり、他の吸入抗生物質よりも気管支痙攣のリスクが低い可能性があることを示唆しています。