グロースハックで失敗できない人のためのプロトタイピング
園田:プロトタイピングはサービスの立ち上げ時に必要な技術だと思われがちですが、実はグロースハックにも効きます。
サービスの立ち上げ時は、
1.本当にニーズがあるかわからない。
2.本開発に予算がどれくらい必要かわからない。
3.技術的に可能かわからない。
などの課題があり、プロトタイピングを行います。グロースハックにおいても基本課題は同じです。しかし、状況的には大きな違いがあります。
既存サービスでの新機能実装でのプロトタイピング
園田:それは、ユーザーが定着して大人数になってくると、既存の顧客に対して失敗できないという点です。例えば、ユーザーからデータを取得するような機能を実装した場合には基本的には後戻りはできないくらいに思っておいた方がよいです。実装したものを捨ててもとに戻そうと思っても、お知らせなどでユーザーとコミュニケーションを行った上で元にもどしたり、元に戻せたとしても、既存ユーザーにとっては大きなストレスを与えてしまいます。。失敗できない状況下でいきなり新しい体験実装するのはとてもリスクがあります。まずは既存ユーザー以外で「試してみる」という視点が必要です。その点でグロースハックにもプロトタイピングという技術はとても有力なんです。
プロトタイピングと成功確率
三富:実はプロトタイピングは行えば行うほど、プロジェクトの成功確率やクオリティが上がるという研究結果が存在します。特に、早い段階から行い、反復的に繰り返すことが需要です。例えば、研究者のJangらが2012年に発表した論文では、53チームのエンジニアリングデザインプロジェクトに取り組むチームの、プロトタイピングの傾向を調べています。結果、より良い結果を残したチームがより早い段階でプロトタイプを作成することが確認されています(Jang et,al. 2012)。
では、そもそもなぜ早い段階でつくることが重視され、それにより良い結果がもたらされるのでしょうか。研究者Häggmanらが2013年に発表した論文では、67名の大学院を対象にエンジニアリングデザインプロジェクトを追跡し、最終的なパフォーマンスとプロトタイピング活動の関係性を調べた結果、前述したJangらの研究と同様、早い段階でのプロトタイプにかけた時間と最終的なパフォーママンスとの間で有意な相関が出ました(Häggman et,al. 2013)。この理由として、参加したメンバーへのインタビューで以下のコメントを得ています。
・チームの共通のビジョンを形成するのに役立つ
・プロトタイプを構築することでデザインコンセプトを作成するのに役立つ
・最初は有望に見えたが、よく見ると問題のあるアイデアを取り除くのに役立つ
・早い段階で探究的なプロトタイプを構築することは重要
以上はあくまで一例ですが、このような理由から、既存の顧客に対して失敗ができない状況下の開発においては、プロトタイピングをすることはプロジェクトの成功確率を上げるために有益な方法と言えるでしょう。
・Jang, J., Schunn, C. D., 2012, “Physical Design Tools Support and Hinder Innovative Engineering Design”, Journal of Mechanical Design, 134 (April)
・Häggman, Anders & Honda, Tomonori & Yang, Maria., 2013, "The Influence of Timing in Exploratory Prototyping and Other Activities in Design Projects", Proceedings of the ASME Design Engineering Technical Conference. 5. 10.1115/DETC2013-12700.
サービスを確実に育てる、ループを生み出せ。
園田:石橋を叩いて渡ろうぜってことですね。下記のような流れを組むことで大きく外れた企画が実装されることは防げるはずです。
1.既存サービスのユーザープールでユーザーアンケート〜課題抽出
2.企画〜プロトタイプを開発
3.既存サービスのユーザープールでテスターを募集
4.ユーザーテスト(仮説検証)
5.プロトタイプ修正
6.実装するかのジャッチ~概算見積もり
7.開発仕様作成~見積もり~開発キックオフ
8.実装~ABテスト
9.学びと次のアクション
ぜひ、これを念頭に既存サービスへの体験実装を進めてみてくださいね。
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■メンバー
UXデザイナー・園田 励
テレビ番組や雑誌を立ち上げた後、2010年GrouponJapanに参画。UX等デザイン領域全般で創業期から事業安定まで携わる。2014年から株式会社イグニスで恋愛・婚活サービス「with」をPM・UXデザイナーとして立ち上げ、黒字化 。2019年には株式会社WARCに参画。デジタルプロダクト専門クリエイティブギルド、株式会社PRISMを創業。幼児用冷凍食品を扱うhomeal株式会社のCDOに就任。立ち上げては軌道にのると次に移りたくなる生粋の0→1職人。中国武術の使い手でもある。
株式会社PRISM / デジタルに特化したサービスデザインスタジオ ~ デザイン×ビジネスの両面でDXに実現力を。
プロトタイピング研究者・三冨 敬太
2018年よりデザインファームTsukuru to Ugoku Design株式会社を創業。デザイン思考を活用したデジタルソリューションのデザイン、シティプロモーション推進業務などを展開。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科卒業、研究員(プロトタイピング)。アプリケーション「オトトトン」でグッドデザイン賞・キッズデザイン賞受賞、など。日本創造学会所属 株式会社ステッチ執行役員。サイゼリヤが好き。一番好きなメニューは柔らか青豆の温サラダと赤ワイン250mlデカンタとプロシュートと熟成ミラノサラミと白ワインの250mlデカンタ。
Tsukuru to Ugoku Design 株式会社
株式会社ステッチ