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当事者研究による自己理解のススメ

こんにちは。
株式会社プロタゴワークスあかねです。

先日、『「色のふしぎ」と不思議な社会ー2020年代の色覚「原論」』著:川端裕人を読み終えました。

内容は、題名にあるように「色の不思議」と「色覚」とそれを取り巻く「不思議な社会」について著者が5年に渡って取材をしたノンフィクションです。

この本の刊行日は、2020年10月22日。
発売前から楽しみにしていて、実は発売されて即購入していたんですが、優先順位的にどうしても先に読まないといけない本が山積みで、ようやくここに来て読むことができました。

僕がこの本を楽しみにしていたのには2つの理由があります。

1つは、あの川端裕人の新しい本であるということ。

僕が川端裕人を知ったのは、かれこれ20年くらい前に『夏のロケット』という小説を読んでからでした。友人か誰かに「この本、面白いから読んでみな」と薦められて、「お薦めって言うんだから面白いんだろうな」と軽い気持ちで読んでみたんです。そしたら、これが、とても面白くて、しかも面白さと同時に、何というか、その時までに味わった事のないような新鮮な感覚を味わえたのを覚えています(話の細かな内容は忘れてしまっているんですが、この時に味わったあの感覚の衝撃のようなものは今も覚えています。これを書いていて、また読んでみようと思ってます)。それ以来、この作者の本を見つけては読んでいました。でも、ここ何年もすっかり追いかけておらず、久々に何かで「今度新しい本が出る」というのを見て、楽しみにしていました。

もう1つは、本の内容が「色覚」に関する物だから。

この本は、いわゆる「先天色覚異常」とされている当事者である作者が、「色覚」について探求していくノンフィクション本だと謳われていました。
それを知った時、とてもこの本に興味を持ったんです。
何故なら、僕も「先天色覚異常」の当事者だからです。
僕は、「赤と緑」に弱いんですが、この本によると、作者も同じ状態のようです。
「一体、当事者としての作者が、どんな内容の本を書くのか?」それが、同じく当事者としての僕の最大の興味でした。いわゆる「当事者研究」になるといいな的な思いもありました。

だから、この本を読むのをとても楽しみにしていました。

読み始めてみると、当事者であるはずの自分が如何に何も知らずに、と言うか、自分だけじゃなくて恐らく他のほぼ全ての人達も、誰しも何も知らずに、“あの色覚検査”によって「正常」と「異常」に選り分けられていたんだという事実が見えてきたりして、ビックリするやら、面白いやら。

例えば、多くの人が経験したであろう“あの色覚検査”によると、男性の中の5%(20人に1人)が「先天色覚異常」に該当するという事になっているんですが、それって、一体何を意味していたのか?とか。

例えば、“あの色覚検査”で「正常」と「異常」に振り分けられていた、「正常」とは何の事で、「異常」とは何の事だったのか?とか。

例えば、そもそも「色」って何なのか?とか。

そんなような事が、読んでいる最中も、読み終えた今も、グルグル回っている感じがあります。


とは言え、「先天色覚異常」とされてきたけど、自分自身では「ある特定の色の識別が難しいという事実」によって「何かができなくて困る・大変な思いをする」という事は、これまでの人生で経験した事がありませんでした。

だけど、「先天色覚異常」とされてきた事によって、他人の判断で「アルバイトができなかった」という不利益を被った事が一度だけあったのを覚えています。

そして、「先天色覚異常」とされてきた事によって、他人の関わりによって「嫌な思いをした」事は数限りなくありました。

そんなことを、色々思い出しながらこの本を読んでいました。

読みながら、「自分が多様性を大切にしたい」と、強く思い続けている理由が見えてきました。

僕にとって、「他者と違う景色が見えている」というのは、観念上だけの話じゃなかくて、そもそも物理的に違う景色が見えているというのが自明だったからなんだなとわかったんです。

考えてみれば、当たり前の話なんですよね。
何しろ、20人中で1人だけ「色覚異常」なんです。“あの色覚検査”の表で、他の19人とは別の景色が見えているわけなので、それはもう、言葉通り、「他者と違う景色が見えている」んです。微細な違いではなくて、他の人に見える物が見えなくて、他の人に見えない物が見えていたりしたわけです(「“あの色覚検査”によると」という注釈は付きますが)。

だからこそ、「他者には、本当の意味で自分の事を理解してもらう事はできない」というのを、物理的な確証を持って、幾度となく実感させられてきました。それを、これまでの人生を通じて、心の底から味わい続けてきているわけです。

そりゃあ、「自分と他者が、同じモノが見えているわけがない」という考え方が、自分のベースにあるのは当然だったんです。
だからこそ、「真の意味で、他者とわかりあえるはずはなく、“わかりあえない”をわかりあいたい」と思っているんだなあ、だからこそ、今の仕事をしているんだなあと合点がいきました。

それによって、自分の根源的な部分が明確になって、「これぞまさに当事者研究の成果だったなあ」と、今は思っています。

本にあった一文が、僕にとって物凄くしっくりきているので、最後に紹介しておきます。


みんな自分の持っている資質を総動員して生きているわけで、1つの遺伝的特性の性能のみで全体を語るのには慎重でなければならない


自分が感じている「多様性の魅力って、きっとこれだったんだろうな」と、あらためて認識できて、この本を読んで本当によかったなあと思っています。



あかね

株式会社プロタゴワークス

https://www.protagoworks.com/


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